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「競技人口の増加」と言う前に、マイナースポーツがやるべきこと。

こんにちは。佐藤奨(さとうつとむ)です。

今回は、マイナースポーツでよく言われる「競技人口の増加」というフレーズに対して感じている気持ちを書いてみる。

施設依存度が高いスポーツは、競技人口でのメジャーは諦めろ

「競技人口」の増加は、とても難しい。

なぜならば、数万人規模の「競技人口」がいるメジャー競技と、そうではない競技のおかれている環境を比較し、引き算してみて欲しい。

選手数、施設数、指導者数、その競技関連のスポーツグッズ、全てが揃ってこそ「競技人口」増加への環境が整うものだ。マイナースポーツは、それらがほとんど揃わない。

そして、施設依存度が高いスポーツは、その競技の「認知度」ではメジャー級になれても、競技人口でメジャーになることは難しい。(メジャーというのは、数万人とかの競技人口の話)

マイナースポーツは、一様に「競技人口の増加」を叫びがちで、それ自体は悪いことではないし(私もその一人だが)エネルギーをかけるべきは、まず「競技認知」を増やし続けられる仕組みと体制だ。そして、競技人口でのメジャーになることはほぼ不可能である。(そもそも競技人口の定義もバラバラであるが、そこの定義は掘り下げると、さらに長文になってしまうので、ここでは割愛する)

「競技認知」を増やし続けられる仕組みと体制づくりで一番大事なのは、コミットして動く人たちの活動資金だ。ここがない中で活動を継続できるわけがない。コミットがないメンバーばかりでの活動は積み上がりにくく継続しない。腹くくって専任でやるコアメンバーくらいは食べられるようにすることだ。

競技の普及とは、その競技における関係人口を増やすこと。つまり、介在するヒト・モノ・カネ全てが増えることである。それぞれのメンバーが、やれるときにやる組織は理想かもしれないが、そんなのは理想郷でしかない。

やりたい人がやれる時だけに動く組織で関係人口が増えた競技は存在しないだろう。主体者が全く存在しない普及活動はサークルの域を超えることは難しい。少数でもコミットした人材、つまり、リーダーシップを発揮する人材が必要なのだ。

実は他の「プロスポーツ」はそこまで参考にならない

活動を続ける仕組みと体制づくりを作ろうと、マイナースポーツの団体が他のプロスポーツを参考にしたりするけれどそれは大きく違う。

規模や認知が全く異なる場合が多く、そもそもプロリーグがない競技だと、一定の時期(シリーズやシーズンなどの一定期間)を的にした活動を行うことが不可能なため、転用しにくい。参考にするならば、プロスポーツよりも、似た境遇にある他の商売を参考にすべきだ。

施設依存型のスポーツで、競技人口が少なくても、継続的にメジャー級の選手を輩出し続けている競技の特徴は、その競技の関係人口が多いこと。

その関係人口の中に選手以外に「ビジネス軸」と「育成軸」のスペシャリストそれぞれが入っていることが条件である。フィギュアスケートなどがその好例である。ではフィギュアスケートと同じことが出来るか?「ビジネス軸」と「育成軸」の構築には何十年の月日が必要だ。

他のプロスポーツを、全く参考にするなということではない。事業の規模や認知が全く異なることが分かっていて、持つべき資源が違っている前提も理解した上で、抽象化して、参考になる部分に落とし込めるならば問題がない話ではある。

ただ、似た境遇にある他の商売の方が、自分たちの境遇からは近しいヒントがたくさん見つけられるはずだ。特にスタートアップ企業のやっていることの方が転用しやすいはずだ。

施設依存度が高いマイナースポーツの普及活動はどうするか

プロリーグが存在しないマイナースポーツで、さらに施設依存度が高いマイナースポーツの普及活動はどうしたら良いか。

マイナースポーツといっても、置かれている段階で異なる。チケット制にして入場料を取れるような大会があるような興行があるスポーツと、興行がほぼ存在しないスポーツに分かれる。

興行がほぼ存在しないスポーツ、かつ施設依存度が高いマイナースポーツの普及はとてつもなくハードルが高いのである。

何百社とスポンサー獲得したことが話題化することもあるが、それはプロリーグがあり、一定期間と試合数が明確な場合に有効。

エヴェッサの最大の強みはスポンサー数で、Bリーグ内で断然のトップを走っているのだ。「パートナ-」という呼称を用いているのだが、その数は400社を優に越えている。Number WEB:Bリーグで異端の“儲かるクラブ”。大阪エヴェッサ34歳社長の商人魂。より

このスポンサー数400社とは、とてつもない数字である。すごすぎる。

どうやって400社も?と気になる部分もあるが、マイナースポーツだと違った視点となる。

マイナースポーツ(団体)では、この打ち手は取りにくいのだ。何故ならば、誰が400社以上への営業、400社への受注対応、請求業務をやるの?である。営業を経験したことがある人ならば、この数の調整業務にどれほどの工数がかかるか想像ができるだろう。

何人で400社を担当しているのだろうか。もし5名とかなら1人で担当は80社である。マイナー競技団体で、5人もフルコミットでスポンサーセールスを担当する社員を雇えるのだろうか?..難しいはずだ。

そもそもプロリーグがない競技だと、露出の”的”にできるスポンサー側のメリットが少なく、数多く営業を回ろうと、受注確度が低くなり、無駄足が増えてしまうのである。魅力ある商品が置いてないお店では、いくらセールスを頑張ろうと、物が売れないのと同じだ。

マイナースポーツで小口スポンサーを集め過ぎると、そこに手間暇労力がかかり何も出来なくなる。昨年、サイバーエージェント社の藤田氏が主体となって発足した麻雀のMリーグのように、少数から大きく獲得する方が実りが大きいはずだ。

マイナースポーツが「競技人口の増加」という前にやるべきこと

マイナースポーツは「競技人口の増加」という前にやるべきことがあると思っている。「競技人口の増加」、つまり競技の関係人口が増加することであらゆる普及がある。競技施設・選手増加、それによって、関係各所は賑わうし、登録者の増加によって協会の収入の増加にはなる。

しかし、考えてみよう。現実は甘くないはずだ。マイナー競技のほとんどが、何十年と苦しいままではないだろうか。それがたったの数年で景色が変わるのか?特に「育成」はとても時間がかかる。何十年単位の話。

普及団体を活動する身として言えることは、目の前の収益。「競技人口の増加」はもちろん目指すものであるが、活動の火を絶やさないこと。目の前のビジネスを生み出すこと。ビジネスチャンスが訪れた時に、どうアクセルを踏み込むのか。

そうしたことを頭におきながら、コミットして継続的に動くための活動資金を獲得し、麻雀のMリーグのように少数から大きく獲得するための仕掛けを虎視眈々と準備するべきではないだろうか。

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