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わたしは夏が好きで、ちょっぴり嫌いだ



平成最後の夏、それはわたしにとっての25回目の夏。

そして100回を超える季節と過ごして来た。

これからあと何回新しい夏と出会うことが出来るのだろうか。



わたしは夏が好きで、ちょっぴり嫌いだ。



目の奥がキュッと痛むほど照りつける太陽に、眩い青に満ちた空、きらきら輝くラムネの瓶、こんにちはと挨拶してくる向日葵、かろやかにステップを踏みたくなる町中に溢れる音、スカートの裾がひらひらと躍る、たくさんの笑い声が響く、わたしたちを照らし続ける夏、胸を打つ瞬間があたり一面にこぼれている。



というよりも、何気ない景色すらも夏というフィルターがかかることで特別なものだと思わされる。


そしてその眩さに比例するように、ちょっぴり胸の奥が突かれるような切なさを感じる。夕暮れの静けさ、カエルとヒグラシだけが話す少し肌寒い夜更け、うっすらとオレンジに霞んでいく空、いつもよりも短い夜のひととき。君と何回この夏を向かえられるのかな、なんて感傷的にもなる。そしてあっという間に朝が来る。



切なくて、たまらなく楽しくて。そんな、心の奥のゆらゆらゆらめく気持ちの淡いコントラストにどうしようもないときめきを感じるのだ、誰にとっても、きっと特別な季節。


そんな特別な季節をさらに加速させる「平成最後の夏」なんてそんな言葉。



一体誰が言い出したんだろうか。ずるい、言葉に引きずられるように私たちの心は特別を求めて心が逸る。また夏は巡ってくるというのに、甘酸っぱくて懐かしさすら感じるこのフレーズに魔法がかかったかのようにゆらゆらと引き込まれていく。



慣れることのない、きっと永遠に続いていくこの痺れるような感覚。きっとまた次の夏も、その先の夏も、ずっとずっと続いて行く、胸の弾む、そして泣きたくなるくらいの切なさを感じる季節。心の奥のコントラスト。夏の空に非日常を思い馳せる。


わたしは夏が好きで、ちょっぴり嫌いだ。







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