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映画へGO!「愛にイナズマ」

(※多少のネタバレあります)
不思議な構造の映画でした。
たくさんのチャプターに分かれていて、かつ前半と後半で舞台が大きく変わっていく中で、いくつかの太い主題が絡み合いながら進んでいく。

「嘘や建前で覆われた社会の歪み」「すべての人にとって、生きることは演ずること」「映画監督はなぜ映画を撮るのか?」「家族の崩壊と再生」「生きづらい社会でも立ち昇ってくる男女間の愛情」・・・などなど。

それがゆえに、全体を通じて現れてくる、突拍子の無いエピソードの数々と相まって、先の読めない展開がむしろ心地よく、絶妙のバランスによりまとまって成立している映画体験に、胸を熱くしながらも時を忘れて自然と身を委ねることができました。
つまり、傑作だと思います。

とはいえ、重苦しい映画では決してなく、むしろドライで独特のテンポのユーモアが溢れているがゆえに、劇場内が一斉に爆笑するというより、それぞれがそれぞれのタイミングで、いろんなシーンでクスクスと笑うような雰囲気でしたね。それもまた楽しかったのでした。

あと、光の強弱や色温度の違いなどが効果的に使われていて、そのシーンの情景をただ見ているだけでも楽しめますし、例えば、人が自死するシーンをあのように描く監督もあまりいないのではないかと思いました。

印象に残るシーンは多々あります。
バーで松岡茉優と窪田正孝が出会い、距離を縮める展開は、非常にオリジナリティがあって上手いなーと思いましたし、家族でマスクをしながらチンピラに絡みに行くところもドキドキ感が満載。
その他にも、窪田と佐藤浩市のハグ。兄弟姉妹でのテンポの良すぎるどきつい罵り合いのやり取り。「消えた女」が「消えない男」に変わるクライマックス・・などなどピックアップするにもキリがありません。

つまりは凡庸な描写が少なく、監督のセンスによって十二分に練られていて、すべてが独特な世界なのでした。

で、何と言っても支える俳優陣がすばらしかった。
松岡茉優が頭からお尻まで、とにかくスクリーン上で輝き続けていて、ウットリもの。いま日本を代表する女優だと確信します。
窪田正孝も、この手の影があって癖のある役の年間指定席を持っているようなもの。安定のすばらしさでした。
同じく池松壮亮さんもやはりスクリーンで映えますね。必ず見終わった後印象に残り声の良い俳優です。
あと、胸糞の演技が見事だったのがMEGUMIと高良健吾。十分爪痕残していたのでした。笑

ここまで書いてみても、なんとも説明しづらいのですが、観ればわかる、脚本を楽しみ、俳優の演技を楽しみ、映像体験も楽しめる、ココロつかまれる素敵な映画です。

個人的評価:★★★★☆
今年の満足度ベスト級の映画でした。いま家族愛を描くのであれば、これくらい独特であって欲しい!



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