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映画へGO!「枯葉」

(※多少のネタバレあります)
あらすじを文章にしてしまうと、こんな感じです。
辛く冴えない毎日を送っている中年男女が、ひょんなところで出会い、距離が近づき、でも一度は離れてしまうが、最後には結ばれていくというミニマルなラブストーリー。

つまりどうってことのない内容のはずなのですが、退屈な映画かというとそういうことでもなく、気づけば静かにスクリーンに引き込まれていくのでした。

その理由のひとつは、画面全体にデザインされ、思わずハッとさせられるカラフルな色彩感覚かもしれません。
風景としては北欧の陰鬱な感じが常に漂っているのですが、そこに昔のファッション広告のようなポップな色が、登場人物の衣装・部屋の内装・北欧の街並みなどに自然と差し込まれていて、ちょっと目を引くスタイリッシュな感覚を与えてくれるのでした。

そしてもうひとつは、台詞回しや画面の構図などに表れる、独特な演出のトーンです。
敢えてかどうかわからないのですが、主人公となる二人のカップルの会話はぶっきらぼうなまでに端的。そして、そもそも口数も少ない上にブツブツと区切られた言葉のキャッチボールが、狙いすましたかのような画面の切り取り方や人物の配置と相まって、ポイントとなるシーンでは、どこか舞台演劇的な印象が連なっていきます。結果、静かに進んで行く物語の中で、主人公たちの心情に、効果的な輪郭を与えてくれるのでした。

主人公が美男美女過ぎないのですが、でもシーンによって時に素敵に見せたりとか、ふと心に刺さるフレーズが主人公たちの口からこぼれたりとか、全体的なダサカッコよさがあって、どこか愛おしい素敵な映画体験となりました。

ラジオから流れる悲惨な戦争のニュース、人間性がどんどん遠ざけられていく日々の生活環境。そんな中で人生の真ん中に存在して欲しい”愛”を、飾らずに描いてくれている。そんな感じです。

エンディングのショットで描かれた、犬を連れてスタスタと足早に先を歩く女性と、それを松葉杖で必死に追いかける男性の姿を見ると、二人の距離感がもはや安心できるほど縮まったんだと確信できて、思わずクスリと笑いながら映画館を後にすることができました。

個人的評価:★★★☆☆
ラブシーンもダサカッコいい。中年男女の純愛に乾杯!



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