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サイレンが鳴いて、

耳をつんざいた。

 Galileo Galileiの「SIREN」が好きだ。というのが言いたいだけの文章です。もう何年も聴き続けて未だに飽きることもなく、なんとなく風の冷たい日に聴くといつだって新鮮な切なさを覚える。

 歌詞を咀嚼しきれているかというとそんなこともなく、明確に歌詞のストーリーが分かっているとも言い難いまま、けれどそういうところも好きだ。鋭い言葉と優しい願いと、様々がまぜこぜになって、ただ私の心を乱していく。歌詞の君と僕も、未来や人生に幸せを見出しているわけではなさそうに聞こえるし、だからといって今は互いが居ないとどうしようもないような、そんな二人。この停滞した中から抜け出して窓越しなんかじゃなくて外で月を見よう、その先が一緒じゃなくても構わないんだ、と。割れた鋭い硝子のかけらの君と僕は擦れ合ってキィ、と耳が痛くなるような音を鳴らす。それは互いの存在や痛みを知るためだけの行為で、こんな音しかならせない二人は、ずっと一緒にはいられない。少なくとも物語としては素敵だけど哀れだ。そういう風に連れ出されたのがもし私だったら、どうなってしまうんだろう。月明りの下、全てを暴かれて泣くんだろうか、それとも同じように照らされた相手の顔を見て、なにか口にするだろうか。

 書いていても分からないな。ただすごくこの歌がすきで特別に思っていることは自分でもわかっている。私を知ってほしかった相手がいたことも、誰にも理解されたくないことも全部全部ここに詰まっている。誰かのやり方をなぞっていたって幸せにたどり着けなくて、だからって自分のやり方が分かっているわけではない。愚かで愛しい人間の歌だ。自分に重ねたり、全然遠い人たちの歌のような気がしたり、そうやってまた暫くこの曲を聴いているのだと思う。もうそれだけでいい、よね。

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思い出の曲

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