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飲食店未来学56:省力化・省人化機器の導入時に気をつけること

人材不足や人件費の高騰を受けて、飲食業界では省人化機器、省力化機器の導入が積極的に行われるようになってきました。しかしこういう機器をただ単に導入しても、リース経費が増えただけで、コストが軽減されず、人手不足が軽減されない例も多いのです。導入時に気をつけることを説明します。

その前に、省人化、省力化の違いをAIでチェックしましょう。

Copilot

省力化と省人化は、どちらも業務効率化や生産性向上を目的とした取り組みですが、その対象と目的に違いがあります。

省力化は、同じ作業をより迅速で効率的に行うことに焦点を当て、業務プロセスやツールの効果的な利用により、作業の合理化を実現します12。具体的には、機械や装置を使って作業を楽にすることを指し、作業が楽になると、作業者への負担が小さくなるため、働きやすい職場に繋がります1

一方、省人化は業務プロセスや業務の自動化を通じて人的リソースを減らすことを目指します2。具体的には、作業を省力化・簡素化するだけでなく、「作業者を1人ラインから省く」所まで改善を進めるという意味を持つ用語です1。例えば、10人のライン⇒9人のラインへ改善するといったことは、省人化となります1

これらの取り組みは、生産性向上やコスト削減、労働力不足の解消など、企業の経営課題解決に寄与します13452。ただし、省力化だけでは、収益には結びつかないこともあると認識しなければいけません1。そのため、省力化で満足せず、省人化まで行なうことを意識して改善を進めていくことが大切です1。また、省人化は、やみくもに人員を削減するのではなく、製品やサービスの品質を損なわない分析のもとで人員を減らす取り組みであり、省人化では、IT技術などの活用により人員を調整します3

省力化は「作業の効率化」。ハードな作業が楽になるしくみです。一方省人化は「確実に1人以上の人員(人件費)を減らす」しくみになります。

人手不足対策でタッチパネルを導入した飲食店の一例


スシローさんのタッチパネル イラストテイクアウトコムさんの画像より

省力化&省人化機器は、業種、業態、客単価、客層年齢を考慮して導入しよう

業種により導入しにくい場合や、業種で導入しにくくても食べ放題などの業態では導入しやすい場合もあります。また客単価が比較的低い若い客層の飲食店では導入しやすい傾向です。

3,000円以下の客単価店、若者客層、食べ放題、セルフサービスを組み込んだ業態は導入しやすいと思います。

いまのところ高級店には向かない

タッチパネルや券売機、セルフレジなどの省力化機器や省人化機器は、たとえば高級和食店や洋食の高級専門店にはあまり向いていません。ただし焼肉の高級店には導入されています。

人手による接遇重視、高客単価、高年齢客層が多いなど、デジタル要素に馴染まない客層が多い店舗への導入は利用客数の減少を招く例が多い

しかしもう数年すれば、タッチパネルによるオーダーではなく、口頭でタッチパネルに向けてしゃべるだけで注文できると思うのです。そうなれば高齢客が利用を避けることはなくなりますね。

中高齢客メインのお店には向かない

私の知っている中の上クラスの手打ちうどん店でタッチパネルを導入しましたが、導入費用をかけても、人件費は減らず、客数が減っただけでした。問題は、導入前の事前準備をまったくしていなかったことです。

導入前の事前準備期間にすることは

1,従業員と導入する機器の話をする

このお店で導入後に起こった最初の変化は、高齢パートスタッフが複数退職したことです。導入前にホールスタッフと話し合い、どのように変わるか、どのように効率化できるかを、十分に話し合っていないことが原因でした。

スマホも持っていない高齢スタッフにとっては、お客さまからタッチパネルの操作方法を聞かれても、自分自身がよくわかっていません。日々の仕事で追い込まれてしまい、熟練スタッフが辞めてしまいます。


2,メニューのしくみをシンプルに変える

導入前は従来通りに、ホールスタッフとお客さまで、会話をしながらの注文です。大盛りにする、かしわごはんに変える、トッピングの海老を追加するなど何の不自由もありません。

しかしタッチパネルを導入するお店のメニューは、最大限、メニューのしくみをシンプルにしないと、複雑で難解なタッチパネル操作になり利用客を減らすことになります。

たとえばこうです。うどんに入るきざみネギを、あり、なしから選ぶ。通常はありの方が90%以上ですから、あり、なしではなく、ネギなしキーを一つ設定していれば、大半のお客さまは食べたい商品キーと数量キーだけで注文できます。メニューをシンプルにすると、タッチパネルの表示も連動してシンプルにできます。

スシローさんはこの単純化、シンプル化したことで、タッチパネルの導入に成功しました。来店客の予約や出迎え処理も、オーダー処理もできるため、ホール人件費を半減以下にすることができました。(現に半数以下になっている)


3,タッチパネル操作を極力減らす工夫をする

小さなモニター画面にメニューを表示しますから、文字や画像を大きく表示するために、

料理画像中心にして文字数を極力減らす
食べたい料理×数量」この2つを基本にする
 *大盛りは20%~30%以下、ネギ抜きは5%以下。お客さまの頻度の高低で表示をどうするか、最小限度の表示の仕方を決めるようにしましょう。

ていねいすぎる表示は、複雑で面倒くさい、行きたいお店を避けたいお店に変えるだけです。

小さな文字は避ける
高齢者には小さい文字は見えない、読みづらい。読めないから読んでなく伝わっていない。こんなことは、メニューブック段階で多く起こっています。(中高齢客層が過半数のお店はメニュー文字の大きさに注意

*うどん店のトッピングメニューを「追加メニュー群」まとめました。仮に客単価はほんの少し落ちたとしても、客数の減少は食い止められます。

4,ホール作業の分析をする

たとえばタッチパネルを導入すると、お客さまの注文は機器が担当してくれます。そうすると、お客さまの出迎えや、料理提供、タッチパネルが苦手な人にハンディーターミナルでオーダー代行する時間も取れます。

導入だけでしたら、ホールスタッフがせかされてする仕事に少しゆとりができるだけです。(導入に加えて仕組みを変えないと)

券売機はお客さまの来店時の人数集計をしますが、ポスレジの売上は食後の退店時の人数集計です。来店から退店までの滞留時間のピークがどこにあるかを時間毎に分析して、タッチパネルが貢献できる処理人数を見極めると、どこを重点にスタッフ数を何人持ってくるかわかります。そうすると、少しでも省人化の方向に進みます。

5,ホールスタッフの教育訓練をする

導入したら、必ず導入後の研修を行いましょう。まずホール従業員が操作に慣れることです。ここで、もう私はついて行けないと思う人は退職します。これはどこのお店でも起こっています。合わせて求人募集も早めにするべきです。

6,ホールの勤務シフトを調整して省人化する

タッチパネルの広告では、パートさん2名が節減できるので、リース費用が浮くと書いていますが、個々のお店の状況や来店頻度、ホールの作業内容により、シフト組みの時間が違います。

省力化機器、省人化機器の導入時は、これを導入すると、どう変えられるかを十分に検討すべきです


(了)





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