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母たちの味。

小学生のころは団地に住んでいた。
建物の隙間を秘密の通り道としてショートカットするべく走り抜けたり、木の上に秘密の小箱を設置したり、落ち葉をかき集めて焚火をしようと画策したり(後日バレて怒られた)、同年齢の友達と団地の中を縦横無尽に毎日遊んでいた。

私の中で、団地で過ごした思い出はとても濃厚なまま残っている。
そして、その時食べたものも、私の食に対する考え方の核となっている。

母はとても料理上手。
おばあちゃんはあまり料理が得意ではなく、料理器具もそんなになかったらしい。母は料理に興味があり、バイトをして貯めたお金で料理器具を買い、家で色々な料理を作ってきたと聞いた。
私は母が作るタンシチューが大好きだった。
誕生日にリクエストするする程大好きだった。
夫と付き合いだした頃に、「好きな食べ物はなに?」との問いに「タンシシュー」と答えて、驚かれた記憶がある。

そんな料理上手な母のようになりたいと思った。

団地の友達のお母さんは、いつも素朴なお菓子を作ってくれた。
私が一番好きだったのは、正月も過ぎたころに作ってくれるかき餅。
余ったお持ちを細かく切って揚げて、塩だけで味付けしたもの。
これが私は大好きだった。
ずっと食べていられるくらい好きだった。

おばちゃんのように、サクッと何でもないように、素朴なお菓子を作って出せるような母親になりたいと思った。

そして、3人の子どもを持つ母になった。

タンシチューもかき餅も作ったことはないが、
毎年クリスマスには、ローストチキンとラザニアとケーキを作る。
丸鶏を前日から塩水に漬けたり、ラザニアのミートソースや皮を1週間前に作って冷凍したり、とにかく時間と手間をかける。
パンの耳が手に入ったら、パンの耳ラスクを作る。
ササッと何でもないように。

この味の記憶が、子どもたちに残るように。
母の愛情が伝わるように。
そうやって、母たちの味がつながるように。
私も料理をする。

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