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荒野のおおかみ

こんな世の中のめざす目標など私は一つだって共にしはせず、こんな世の中の喜びは一つだって私にしっくりしないのに、どうして私はこの世の中のただ中で、荒野のおおかみやみずぼらしい隠者であってはならないというのか。
(中略)
私にとって歓喜であり、体験であり、陶酔であり、心の高揚でもあるものを、世の中の人はせいぜい文学の中で知り、求め、愛するのであって、生活の中ではそんなものは狂気のさただと思っている。実際、もし世の中が正しいとするならば、カフェーの音楽や、大衆娯楽や、あんなに安直なものに満足しているアメリカ的な人間が正しいとするならば、私は間違っており、気が狂っている。そうだとすれば、私はしばしば自称しているように荒野のおおかみだ。自分に無縁な、理解できない世界に迷いこんで、故郷も空気も食物ももはや見出さぬ動物だ。