「少女病」になれなかった夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

「少女病」は初版発売当初TVで取り上げられたのを見ていました。なんてキャッチーなタイトルなんだろうと思ったものです。

この物語は、母親と、父親の違う3人の娘が主人公。自分ならどれに当てはまるだろうとぼんやり考えていましたが、私は多分母の織子でした。

元は売れっ子少女小説家、今ではノベライズされた作品を細々と書いて生計を立てる彼女は、家事の一切をできず、笑ってはいけないところで笑ってしまう人。そして、「お母さん」と呼ばれることを極端に嫌い、恋に忠実に生きているように見えて、実は真実の恋には出会えないまま日々を過ごしているのです。彼女の世界は、彼女の建てた薔薇に囲まれた白い洋館の中に誂えた舞台の中で、ただすぎて行くのです。

誰とでもキスはできるけど、それは誰でもきっと一緒で、この口付けだけで世界が変わることはないのです。それがどんどん官能へと導かれているかもしれないけど、それはただの生理現象でしかなく、夢のような喜びを知ることはないのでしょう。

織子の長女「都」は30を過ぎても、恋と言った恋を知らず、一家のお母さんのような存在。王子様をひとり妄想の中で待つ彼女は、体調不良の原因を「少女病」と診断されます。しかし、一人の男性と出逢い、彼女の世界は変わってしまうのです。彼女の恋は、手を触れていないのに熱さを感じるほどの熱を帯びています。

織子は、垢抜けない都を「誰に似たのかしら」と思いつつ、彼女のような恋に憧れを持ったことでしょう。自分の手の中にあった小さな役が、役を離れて自分で物語を作るようになる都は、この小説の中で最強の存在になるのです。

私も都のようになりたくないと思って生きて来たけれど、時が過ぎてしまえば、彼女のような「少女病」を抱えて生きて来た女性が、一番幸せを見つけているのかもしれません。

きっと多くの人は、都のような運命の人を探し生きているのかもしれません。出会えるかどうかは運次第かもしれませんが。

私の周りを見ても、芳しい恋は、まだ見つかりそうもありません。それでも、織子のように、恋に忠実に生きていきながら、世の中をゆるりと観察して過ごすことでしょう。まるで、それが何かの舞台のように考えて、その中をそっと覗いているだけなのかもしれません。おやすみなさい。

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