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男の子になりたかった夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

自分と違う性になりたかったと思うことはありますか?私は今も思います。でも一番思っていたのは、高校生の頃でした。

周りの友達のように、ファッションや化粧やパラパラに興味を持てず、自分のいる世界の中では恋愛ができる兆しも見えなかった鬱々とした高校時代。女の子がひとりで東京に行くのは危ないからと親に言われた私は、じゃあ男の子だったらよかったのにと心の底から自分の性を恨んでいました。

野球が好き、サッカーが好き、車が好き、バイクが好き、少年漫画や青年漫画が好き、ちんかめが好き、運動部に入っていて体脂肪率一桁の私の何が女の子なのかと思っていたのです。

ある日、部活の邪魔になる胸より下まである髪を切ってしまおうと考えた時、私は思い切ったことを考えました。美容師さんにお任せで切られた髪が思ったより短かったので、このまま坊主頭になってしまおうと。

キレイさっぱり坊主頭になった感想は頭が軽い!でした。学校では、スカートを履いているのに、男の子にも間違われ、私は内心喜んでいました。でも、周りの反応は「可哀想」でした。あんなに長くてキレイに揃えた髪をこんなに短く切るなんて美容師さんがどうかしているという人もいました。

キレイな坊主頭は、私に全然似合っていませんでした。頭の形もそれほどキレイではなく、顔も母親に似た丸い形で、子どもの頃から変わらない丸いパーツがなんとも不似合いだったのです。それこそ、周りの彼女たちのように化粧がうまくできれば、雰囲気を合わせることができたかもしれません。でも、私はなんの知識も技も持ち合わせていませんでした。

毎日、同じ年頃の女の子の平均的な身体サイズを持ち、彼女たちと同じブレザーに、チェックのスカート、紺のハイソと黒のリーガルのローファーで身を包んだ坊主頭でスッピンの私は、世界から浮いているように思われました。

頭を野球部の彼らと同じようにしても、彼らになることは出来ませんでした。自分と同じ身長くらいの男の子もいるのに、私とはまるで違い、彼に坊主頭はしっくりきました。可愛らしさを覚える程でした。

家に帰って、夜ひとりの時間に、スウェットで鏡の中を何度覗いても、私は私でした。男の子ではないのです。ただの坊主頭で、ちょっと腹筋の割れている10代女子がそこにいました。

10代の私は、少しだけ世界に絶望しました。男の子にはなれない自分に。この田舎を女の子だからと抜け出させてくれない親という存在に。

それでも私は、無茶をして親の側を離れる勇気もないちっぽけな存在でした。

高校を卒業して、東京で学生会館に入った私は、その半年後、バイト先で恋に落ちるのです。田舎では全く見えなかった恋の兆しをTシャツとデニムと、田舎くさい大人しい女の子という立場で掴み取ったのです。

今は女性であることを楽しんでいる自分がいます。それでも、やはり男の子になりたい瞬間が訪れます。私が男性なら、女の子を幸せにするのにと驕る瞬間があるのです。きっと、男性になれば男性なりの苦しみがあることも少しは知っているのに。

10代の私に教えてあげたいけど、きっと彼女はなんの聞く耳も持たないでしょう。若かったなと思う瞬間です。それでも、語ってあげたくなります。男の子になれなくても幸せな時は来るのだよと。おやすみなさい。

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