パイナップルが香る夜
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
「パイナップルの香りがする避妊ゼリー」の存在を知ったのは江國香織さんの「ウエハースの椅子」という作品でした。それはなんだか綺麗な文字面なのに、悲しい響きを感じたのです。
スキンというものがいかに大事かは知っています。それで、病気や不安を取り除くことができるのです。それを使わない男性の不誠実さも知っているつもりなのです。
でも、そんな事実とは裏腹に、彼が赤いそれを取り出す時は悲しさを感じます。独特の匂いで、ほんのり冷たいそれは、私と彼を分ける分厚い壁のように感じるのです。
不誠実な男性のように、たまにはそれを忘れてしまうくらい没頭すればいいのにと思います。でも、彼は忘れません。お風呂に一緒に入っても、冷たい床に私が跪いても、ロボットのようにプログラムされているのです。
その度に、「パイナップルの香りがする避妊ゼリー」を思い出します。今目の前にある赤いそれに、ゼリーは入っていないのに、私の鼻の奥を刺激して、錯覚を起こさせるのです。
彼が動く間、人工的なパイナップルの香りが鼻をつきます。そして、彼の皮膚は温かいのに、お腹の中を冷たい何かが動いているような気がしてしまうのです。
あの小説の主人公のように、泣き喚くことができたらと思います。でも、私の場合それは何も生まないことも知っているのです。
夜、彼の跡を追いながら、たまにパイナップルの香りを思い出します。まだ触れたこともない「パイナップルの香りの避妊ゼリー」は同じ香りなのでしょうか?黄色い果肉から溢れるジュースを飲みながら、そんな事ばかりを考えています。おやすみなさい。
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