さぼ子さん その18
連載ファンタジー小説
十八 終わりよければ全てよし
笑天祭が終わった翌日、ぼくんちに来るなり卓也は
「あーくっそぉー、オレ失敗したよー」
とぼやいた。
「なにが失敗したんだ?」
「テレビ局だって、テレビ局。オレさぁ、次から次へといろんなことがおこったから、テレビ局に連絡するのをすっかり忘れていたんだよな。
昨日のあのすごい光なんて、ドンピシャテレビ向けだったのになぁ」
「覆水盆に返らず」
「なんだよ、それ?」
「過ぎてしまったことをなげいても仕方がないってことさ」
「それはそうだけど・・・、でもさぁ、あんなのがテレビに流れたら、ここはいちやく有名になって、商店街にもお客が山ほど来たかもしれないんだぞ」
「う・・ん、それはまぁちょっと残念だけど、でもさ、ほら昨日の笑天祭の時、商店街の人達ってみんなすっごく元気だったじゃん。あんな人たちがまだいっぱい残っているから、ここはそんなにかんたんにはへたばらないって」
「そうかぁ・・?」
「そうだって。ぼくが、ぜったい商店街は復活するって予言してやるよ」
ぼくのこの予言は見事に的中した。
商店街復活のきっかけは、意外なことにテレビ局だった。
もちろん卓也はテレビ局に連絡していない。だったらしかけ人はだれか?というと、それはサボテン商店街一の行動人よっちゃんだったんだ。
よっちゃんは、パソコンで検索して、すべてのテレビ局の電話番号を書き写し、一件一件笑天祭というめずらしい祭りを十二年ぶりに復活するから取材に来て欲しいと電話でたのみこむことにしたんだって。
「書いた順に電話していったんだけど、みんな返事が冷たくってねぇ、電話番号の横にどんどん×がふえていくから、わたしはもうダメかと思ったよ。でもねぇ捨てる神あれば拾う神ありってね、一番下に書いた電話番号のところが、ようやく取材をOKしてくれたんだ」
この最後の最後に取材OKをだしてくれたのは、開局したばかりの地元のケーブルテレビ局だった。
こじんまりとしたテレビ局だから、もちろんロケバスなんてないし、カメラだって大型のものじゃなかったから、ぼくらは取材してるなんて全然気がつかなかったんだ。
笑いの面をつけ、ろうそくの火がともされた灯篭の道をねり歩く集団から始まり、銀色の光の筋、いっしゅんの暗闇、銀色に光る道、そして上昇していくあわい銀色の雲の映像はケーブルテレビのスポットニュースから、ユーチューブ、ローカルテレビ局へと広がり、最後にはメインのテレビ局でも放映されるまでになった。
もちろんじっちゃんたちは、このチャンスをにがさなかった。
和製ロズウェルという名前につけかえた商店街は、笑天神社を観光スポットのメインにして、笑い顔のお面、笑いまんじゅうっていうオリジナル商品を売り出したんだ。
そして、咲んちの黄金湯も富士山の絵を、夜空をバックにいく筋もの銀色の光の筋と銀色の雲が浮かぶ絵に変えて、名前も黄金湯から宇宙湯に変えてしまった。
そのうえ少しでも明るくしようと、おろしぱっなしになっていたシャッターに星や月、UHOの絵を描いた。すると商店街を歩く人がふえていき、シャッターがおりている店が減っていったんだ。今は新しい店がどんどんふえている。
和製ロズウェル作戦は、大成功だ。
商店街の看板に、商品に、笑い顔があふれて、じっちゃんや玄じいちゃん、それに商店街の人たちがいつも笑っているのを見て、ぼくは思ったんだ、
あの社の中には、今でもまだ甘いにおいが残っているんじゃないかってね。
やっぱり笑いは世界を救う、だな。
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