あがり

 車の窓にローソンが映っている。ロゴのように短いが、青い鮮やかだった。
 その駐車場から、信号を渡る途中、大通り沿いに開けて少し寂しい。その斜にローソンがある。青白い光だ。一人で入るには抵抗がある。踏ん切りがつかない時間だ。今日は何の日かと言われば、夜の雨が上がった日だ。都会の車道なので、明かりは多いが、静かな光だ。アスファルトが黒い鏡に見える。
 点滅の前に渡りきって、濡れた縁石を踏んだ。車道だが一本細い通りに入って、喫茶店も、床屋も、植え込みも、街灯も、どれも別れのようにみえる。水溜りは凶器のようにみえる。暗い走馬灯とはこんな感じだろうかと、冷たいこめかみでぼんやり考えながら、帰途は温かいことに気づいた。
 

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