「し掛3」

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ゆらぎと境界/響け!ユーフォニアム3 六話

 六話のサブタイトルが、 「ゆらぎのディゾナンス」  ディゾナンスは不協和音という意味だが、部としては、府大会の選考も終え、本番に向けてまとまっていく時期。  登場人物の瞳の色が気になった。同じパートでいえば、部長の久美子は、瞳が明るく、そのなかの円い影が青い。逆に、三年からの転校生の黒江は、瞳が青く、影が明るい。つまり光と影の色が逆だ。二人の対比は色々なところで描写されているが、久美子にとって、黒江は漠然と不安な存在として描かれる。それも久美子だけにみえる霊のように。久

    • 5/4 昼

       今日は夏日だった。ベランダを網戸にして、ペペロンチーノを作ることにした。  まず冷蔵庫を開けて、正方形のタッパーと、ヨーグルトを1箱取り出す。タッパーから1日分のレタスをあげて、シンクで軽く振って水を切って、平皿に盛り付ける。ヨーグルトはブルガリアのプレーンで、スプーンで2口すくって小鉢に移す。いつもの朝食。  朝食を終え、すぐ昼食に取りかかる。ニンニクの房から一片外し、ペティナイフで硬い底を落として、皮を剥く。薄く、微塵切りにして、フライパンに入れる。大さじ一杯の油のなか

      • 神回とは/響け!ユーフォニアム3 4話

         一期二期は北宇治高校の一年生だった主人公が、三年の部長として奔走する三期。  EDのクレジットまで見て、すぐに神回だと思った。同時に、神回とはなんだろうと思った。  四話は、故人の問題を抱えた後輩の話。彼は二年生で、エスカレーターの男子校から転校してきた異色のキャラクターだが、過去に登場して以来、彼の背景を仄めかすことはすれど、踏み込むことはなかったが、今回は旗印として、彼を中心に話は進んでいく。とはいっても派手な衝突は抑えられて、あくまで家の問題として、外部の人間が

        • 俺も大人になりたかった/響け!ユーフォニアム3 3話

           あらすじは、一期、二期では吹奏楽部の一年だった久美子が、部長になり、全国大会で金賞を目指す話。  一期でもそうだったが、金を目指すにあたり、最初の関門として、「サンライズフェスティバル」がある。強豪校が一堂に会する場で、五月祭のようなものだが、楽器を演奏しながら、行進も立派にやってのけねばならない点で、文字通り、部として最初に足並みを揃える場でもあるが、そこに色々な問題が生じてくるのが、物語としての醍醐味だ。  久美子も当然部をまとめ上げていく立場となったのだが、そこで

        ゆらぎと境界/響け!ユーフォニアム3 六話

          夏日

           二年目にもなると、夏日はただの厄介だった。四月なのに、表を歩くだけで、ワイシャツが汗ばむ。営業先を二軒回ると、昼を過ぎている。  蕎麦屋で天せいろを頼んだ。晩はキーマカレーを作った。スパイスが効き過ぎたのか、胃がしばらくもたれていた。レシピにあったカスリメティが、何だかよくわからなかった。

          桜って難しいですよね

          工場の屋根を見上げて 薄い桜は三分咲き 枝が揺れて屋根のトタンを削る昼過ぎ とくに考えることがない

          桜って難しいですよね

          短歌のことは何も知らない2

          生オレンジジュースの自販機の ゴミ箱にあぶれて氷結の350ml

          短歌のことは何も知らない2

          短歌のことは何も知らない

          ワニノコの鳴き声を真似る 田町へ向かう雨の曙

          短歌のことは何も知らない

          詩でも短歌でもなく夢

          aikoに指の爪 君付けで褒められる夢

          詩でも短歌でもなく夢

          あがり

           車の窓にローソンが映っている。ロゴのように短いが、青い鮮やかだった。  その駐車場から、信号を渡る途中、大通り沿いに開けて少し寂しい。その斜にローソンがある。青白い光だ。一人で入るには抵抗がある。踏ん切りがつかない時間だ。今日は何の日かと言われば、夜の雨が上がった日だ。都会の車道なので、明かりは多いが、静かな光だ。アスファルトが黒い鏡に見える。  点滅の前に渡りきって、濡れた縁石を踏んだ。車道だが一本細い通りに入って、喫茶店も、床屋も、植え込みも、街灯も、どれも別れのように

          春の風

           昼に起きてベランダに半身になると、風が顔を包んだ。今日は春の暖かい日だ。壁に指を掛けたまま体を傾けて、ふと鉢の雪柳に鼻を近づけると、花の甘い微香がよくわかる。鉢の河津桜は散り際だ。  プラットホームで待っていると、電車の送る風も春の柔らかさだ。改札で待ち合わせて、片側風がとまる。路地は暖かさが滞留して、ポテトの匂いが混じったあたりで遅い昼食にした。  ビル風も顔に優しかった。こんなに優しい日に、どんな言葉ならはっきり伝わるのか、口腔の血豆に舌で触れながらぼんやり考えていたが

          独り歩き

           畦道を歩きながら、国木田独歩を読む。足元はすらすらと進むのに、土の柔らかいせいで、なかなかうまく運ばない。常に足元を気にかけねばならばい。犬も連れているので尚更だ。自転車で少しのところも、家は畑の真ん中なので、徒歩でいかねばならない。一つページを繰る前に諦めてしまうのはいつものことだ。そのせいか、一番初めの美しい文章が、常に頭に残っている。  用水路のあたりでいつも誰かとすれ違う。今日は近所のお婆だ。近所といっても、お婆が一旦腰を休めるくらいの距離はある。制服をほめてくれた

          コトレット

           改札を出て、少し待った。コンコースの人の流れを見ていると、若い家族や学生が多い気がする。山を切り開いてできたニュータウンだからだろうか。  駅前のイオンで昼食と夕食を買って、バイクの後ろに跨った。風が顔に掛かる。緑は多いが、花の匂いはまだない。並木をまっすぐに、交差点にでると、アイドリングと排気の振動に混じって、ステーキの匂いがする。辻をまっすぐに行って、開渠沿いに、精肉店の前で一度降りた。コトレットを入れた袋を手に、再び後部座席でヘルメットを被ると、バイクは住宅地の坂を上

          炒飯を

          かき込む傍に 蝉の声  今朝は涼しくて起きるのが遅くなりましたが、部屋のリモコンを手に取って見ると、30℃でした。もう八月も終わるというのに、真夏の温度です。昨日タッパーに入れた筑前煮を小分けにしてレンジで温めます。チンとなって小皿の温度を服の裾にくるで食卓に置きます。花瓶は透明な筒状でかっこいいのですが、まだ挿せていません。夏の間は花が育たないのです。ベランダのハイビスカスがようやく一輪咲きました。鉄骨にぶら下げた朝顔もようやく何輪かつけるようになりました。小鉢のひまわり

          AIR 実況プレイ7

          7/26  ベッドに投げ出された観鈴の足が、今日一日畳に降ろされることはなかった。痺れがあって、それは夢と関係しているらしい。夢のなかで、観鈴は空の只中にいて、足元の雲が速く過ぎ去って、徐々に時空を遡っているらしい。観鈴は言いようのない不安を覚えるのか、眠りたくないと言って、パジャマの膝の上でトランプをきっている。  居間にいくと、晴子は二日酔いだった。台所に苦しそうに身を折って、コップに水を注いだ。観鈴の容体を話しても、俺に押し付けるように、任せると言って、苦しそうに水

          AIR 実況プレイ7

          AIR 実況プレイ6

          7/24  堤防は通学路のうちに入るのか、補習の朝はいつも二人でそこに座った。二人の袖は潮風でしきりに喧嘩していた。チャイムが鳴ると、観鈴は堤防を降りて、校門へと歩いていく。俺は堤防に座ったままそれを見送るだけだった。  一緒に帰る約束をしていたのに、家に戻ると、観鈴は台所で昼飯の支度をしていた。  観鈴は学校で倒れたらしい。いつもの癇癪だと、グラス片手に晴子は言った。ペースはいつもより速い。一升瓶が徐々に軽く持ち上がるようになっていく。癇癪は誰かと仲良くなったとき発作的

          AIR 実況プレイ6