Episode.Ⅲ 南部前線、異常あり

西暦1☓☓3年 秋。
タカイド国 タクトーパ州にて。

ミッツバーン率いる第666部隊はタカイド軍 K研究所への潜入作戦を試みようとしていた。

「よしっ、皆いいか。先日のシコマンダーの戦いにより、階級特進したばかりのミッツバーン中尉殿から今日の作戦の説明がある。一回しか言わないだろうからよく聞いとけよ」
シッバーは大きな声で部隊の皆に呼び掛けた。

「では、皆さんよろしいか?中尉のミッツバーンだ。よろしく頼む。計画がこんな夜分のものとなってしまい申し訳ない。奇襲作戦と銘打っている以上、この時間帯を選ばざるを得なかったことをすまなく思う。今月に入って気温も下がってきたようだ。全員体調には十分気を付けるように」
と言って、私はは水筒から暖かいココアをコップへ取り出し、一口飲んだ。

「ぷふぁ… よし、では、作戦会議に入るとしよう。まず、作戦はこうだ。我々はA班、B班、C班に分かれ、別々に行動し、最後に秘密倉庫前で合流することとする。A班は鉄格子などの警備の破壊を頼む。警備の人間は殲滅させろ、一人として逃がすな。B班は証拠隠滅のための施設構造の破壊、またその爆破を担当してもらう。建物ごと陥落させろ。そして、C班は目標データの回収を担ってもらう。無事に博士の研究室にまでたどり着くことができれば我々の勝利だ。ちなみに私はC班に専属している。何かあったら無線で知らせるように。以上だ。」

そう言って我々はそれぞれの班へと分かれ、私はシッバー含めた15名と共に格子線を切り、研究所の敷地内へと潜入していった。研究所には見張りのサーチライトがそこらかしこに張り巡らされ、不気味に光り輝いていた。
我々はひとまず電柱の影に隠れ、研究所内部へと入るタイミングを伺っていた。

「なかなか敵に見つからずに入るのは難しそうですぜ」
シッバーが笑いながら答える。
「うむ、そうだな…」
少し考え、辺りを見渡すと、足元にはちょうど手で持てる大きさの鈍重な岩があった。
「ふふ。よし、これでいこう」

私はサーチライトを照らす見張り台の中にいる男へ向けて、大きく振りかぶって岩を投げつけ、見事頭に的中させた。
すると、見張りの男は衝撃のあまり見張り台から転落し、音を立てて地面にたたきつけられ、研究所内の視線は全てその一点にへと集中した。

「いまだっ!!!」

と、私の合図とともに我々は研究所の裏口にまで向かい、ピストルでドアを破壊し、内部へと侵入した。

研究所内部は静かで薄暗く、電気は付いていなかった。
シッバーがヘッドライトを点灯させると、一面の地面には機関銃でハチの巣にされた白衣を着た研究者の死体がそこらかしこに転がっていた。
「なんなんだよ、一体ここは…」
あまりに悲惨な惨状を目にして、我々は唖然としてしまった。

しばらくすると、死体の山の中が一瞬、ピクリと動いた。
気のせいかなと、思ったのだが、
次の瞬間、

「ヒィィィィィいいいいい!!!」


と、叫びながら血みどろの男がナイフを持って突然我々の前に飛び出してきた。
男は瞬く間に私の部下三人を真っ二つに切り裂いた。


シッバーは驚きのあまり機関銃で男の頭を木っ端みじんに吹き飛ばした。

「うあぁあああああああああああああああああ」


男の姿かたちが見えなくなっても、シッバーは叫び続け撃つ続けることをやめなかった。男の腕は踊るように切り離され宙を舞い、足はビチャビチャと音を立てながらリズミカルに振動していた。やがて、男の膝が完全にすり減ることで、男の肉体は真っ赤に染まった血の海へと倒れていき、勢いよく飛沫をあげながら崩れ去った。
肉片と骨の欠片だけとなった姿を見て、シッバーは撃つのをやめた。

「もういいだろ、これでお前の気は済んだか?」

そう私が訪ねても、シッバーから返事は無かった。


ギィイイイイ

音を立てて研究所の一番奥にあるヘアのドアが開いた。

隙間からは光が見える。

我々はドアの前へと急いだ。

そして、ドア前へ着くと、そのドアにはこう書かれていた。


KO-TARO  PROJECT

"S" BOMB



つづく→

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