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ママでもなく、お母さんでもなく…

息子たちは私のことを”〇〇さん”と名前にさん付けで呼ぶ。

子どもを身ごもり、お腹の子が男の子だとわかると私はとてつもない不安と恐怖に見舞われた。

妹と二人姉妹で育ち、中学から女子校に進んだ私にとって男児などというものは未知の生物でしかなかった。

加えて自分が母親という第二形態に突入する恐怖。

妊娠中の私はいろんな妄想をした。
彼が歩き出したら、小学校に通い出したら、思春期を迎えたら・・・

いろんな状況を想定して対策を練った。
そのうちの一つが私のことを名前で呼ばせる方法(〇〇さん)である。

まず、”ママ”は私のキャラ的に受け付けられない。
そして男児はいつ、どのタイミングで”ママ”から”お母さん”もしくは”オカン”に移行するのか。
そのタイミングを見誤ると大変なことになるのではないか。
そんなことを考えると私の中で”ママ”は即却下であった。

そして”お母さん”。
普段何気なく使っている”お母さん”という言葉、息子に呼ばせるからにはきちんと由来を知っておきたいと思い、インターネットで調べてみた。

そこには「もともとは”あなた”という意味」と書いてあった。
自分の息子にアナタ呼ばわりされるのはなんだか納得がいかない。
そう思い、”〇〇さん”、と名前にさん付けで呼ばせることにした。

これを書くにあたって再度調べてみたところ、そのような表記は消えてなくなり、代わりに「お母さんという言葉は元々太陽という意味」といった説明がたくさんヒットした。
どうやら私はどこぞの誰かがテキトーに世に放った言葉を鵜呑みにし、10年以上もそう思い続けていたようだ。
次々に生まれた息子たちも長男に倣ってみんな私のことを〇〇さん、と呼ぶ。

勘違いから始まったけれど、これはこれで良しとしよう。
母になったところで私は私だ。
うん、これでいい。

 長男は言葉が遅かった。
ジージ、ブーブーなどの言葉はあったものの、ちゃんとした意味を持つ言葉は彼が1歳10ヶ月の時に産まれてきた次男の足を触りながら「ア…シ」と言ったのが初めてではないだろうか。

 反対に次男は言葉が早かった。
彼が2歳半、三男が産まれる頃には普通の文章を流暢に話しており、長男に付いて行っていた英語クラスの英語の単語もポロポロと出てくるようになった。 

が、言葉が早かった故に彼は単語を上手く発音することができず、リンゴをディンゴと言ったりしていた。
そして長男に倣い私のことを〇〇さんと名前で呼ぼうとしていたのだが、"り"で終わる私の名前も”さん”も上手く発音できず"〇でぃーしゃん"と呼んでいた。 

今はもう罰ゲームでしか手をつないでくれなくなった彼だが、私にとってはいつまでも可愛かった頃の彼の口調が忘れられず”でぃーしゃん”なのである。

 

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