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愛の言霊(前編)

<言霊>

風俗嬢の言葉には、魔力が宿る。

1年半で、20人超のソープ嬢にお世話になった訳だが……彼女達の内何人かは、今もって自分を捉えて離さない、素晴らしい言葉力をもっていた。

今回は、その一部を紹介したいと思う。接客する側にとっても、される側にとっても、なかなか他人のやり取りを確認できる機会はないと思うので、純粋な娯楽になれば幸いだ。
なお、23番目にして最後の師であったAさんの残した名言の数々については、「風俗嬢に人生を救われた話(後編)」をご参照願いたい。

(1)「これから先、沢山の人と遊びなさい。そうして初めて、あなたの目指すものや望むものが見えてくるから」
「1番大事な技術はね、『やさしくしたい』っていう気持ちをいつも持つことよ」

2人目の師が自分に残した教えである。ここまでの更新を読んでくださった方ならおわかりいただけるかと思うが、もはや予言の域と言えるほど、その後の顛末がピタリと一致する。
吉原年齢で当時(28)だったため、十中八九でアラフォーなお姉さまであったが、そのどこまでも尽きぬ優しさも、おもてなし感も、プロ根性も、全てがリスペクトに値する嬢であった。

後述のセリフは、指の触れ方も、舌の触れ方も、その「さわり」の部分についてご教授いただいた際にいただいた言葉である。その後の自分の歩みを考えても、全くもって的確過ぎる教えだったと思う。

どこかで再会と礼を……と願うも、最後まで巡り合わせが合わず、それは叶わなかった。しかし彼女が「お年玉ね♪」と称して寄越してくれた500円玉(正月休み中に訪問した)は、未だに自分にとっては御守りとして手元に残っている。

間違いなく、自分の人生に影響を与えた嬢の1人だ。幸運を祈ってやまない。

(2)「すぐわかったよ、味だけで。あっ、この人は優しい人だって。
いい子、いい子しちゃおうかな~……ふふふ」

10番目の師である。今思い返してみると、これまで会ってきたお嬢さん方の中で、この方の特性が最もAさんに近い。言語能力を日記で発揮される機会がなかったことは、大きな違いではあるが……

とにかく、癒やしのオーラと力量がものすごいのだ。明確に歳上の自分に対して「甘やかす」「子供扱いする」「包み込む」ことを、全て嫌味なしでやり切れるだけの、独特のペースをお持ちだった。文面だけを見ると、まるで馬鹿にされているように感じられる方もいらっしゃるかと思うのだが、全くそんなことはないのである。子供扱いされること、甘やかされることが気持ちよい……とでも言おうか。技量も相当な高水準で、これで本当に格安店なのか? と驚いたものである。(1時間お相手をお願いしても、料金は2万に満たない)それもそのはずで、実は他店に在籍時、トップランカーな実績をお持ちの方であった。ちなみにこちらの店でも、何度かランク入りを果たしているという、筋金入りの実力者である。

上記のセリフはなんと、所謂「即即(シャワーもなしに即時接吻や交接に臨むこと)」の最中、自分の局部を口にふくまれたのを受けた際に発せられた言葉であった。一応お断りしておくが、格安店である。まさに驚天動地の衝撃であった。

自分は嬢の衛生上の理由から、歯磨きとうがい薬による口内洗浄と、部屋に案内される前の局部洗浄を義務付けていたのだが、それを見抜いて
「優しい」
と形容する感覚に、非凡なものを感じさせる。あるいは嗅覚がとても鋭敏で、においでサービスの方向性を使い分けている可能性もあり得るが、真相は謎のままである。

いかに
「清潔を心がけておくと、時に思わぬ幸運に恵まれる」
かを物語るエピソードと言える。(小心者の自分の場合は以後、相手にかける負担が心理的に重すぎるため、自分からシャワーを先にと申し出るようになったのだが……)

(3)「えっ? 無理だよー。
男の人はそういう風にできてないから。我慢できる訳ないからね♪」

(結婚が決まったら、風俗で遊ぶ訳にはいかなくなるから……と言った自分に対する返事)

12人目の師の言葉。連載の(4)で示した通り、彼女は店のトップランカーである。
ルックスに関して言えば、例えば町中を歩いていたとしても、飛び抜けて目を惹くものではないだろう。しかしその豊満なバスト、くびれたウェストは、男の視線を理屈抜きに奪いに来るだけの、素晴らしいものがあった。
その超絶技巧は今もって忘れ難く、時折、ふとした拍子で強烈に記憶に蘇ることがある。それだけに、説得力充分の一言なのだ。彼女の積み上げてきたもの、自負、絶対の自信が伺え、非常に味わい深い。

当時はスタンダード店だったのだが、現在ではなんと格安店にリニューアルした。にも関わらず、高級店まで含めて、未だに彼女以上のテクニシャンには遭遇したことがない。どうにか大きな怪我や病気だけは避けつつ、1人でも多くの客を取って、末永く活躍していただきたい……と願う次第だ。

(4)「私はね、自分が楽しくないと絶対駄目なの。気分が乗らない日に接客しても、絶対サービスが落ちるから。そしたら、お客さんを満足させられない。
当欠で迷惑かけちゃうこともあるけど、このルールは絶対なんだ

14番目にお会いした嬢の言葉である。自分のペース配分、接客スタイルに絶対の自信やこだわりをお持ちなのか、こちらの目的「セックスの手ほどきを受ける」という点では、非常に相性は悪かった。
一方で、格安店としては破格のルックスやスタイル、情熱的なサービスは、確かに印象深く残っている。こういう方もいらっしゃるのだな……と、自分に気が付かせてくれたことは意義深い。

(5)「予め断っておきたいんだ。私さ、恋人接客とか出来ないんだ。
本当に苦手で……ごめんね。でも、一生懸命やるからさ」

15番目にお会いした方の言である。実際、彼女の接客に、甘い蕩かすような要素は皆無であった。髪型も動きやすさを重視したショートカットで、性格はどこまでもサバサバ、カラッとしている。運動をされているとのことで、キュッとしまった肉体が、いかにも健康そうであった。
彼女には良い意味でも悪い意味でも、他の女性と交接する際には必ずある
「ベタベタ」
「ドロドロ」
「ピチャピチャ」
といった要素がなかった。濁音や半濁音が無い――という印象なのだが、おわかりいただけるだろうか。

だが、決してそれが不快ではないのだ。
楽しく、気持ちよく、優しさに溢れていた。
何より、先の言葉に込められた恥じらい、申し訳なさ、誠実さに、非常に感銘を受けたことを覚えている。素晴らしきコンパニオンの1人であった。

<後編へ続く>


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