フスイ

生きるか死ぬかを考えた末、吉原のソープ街に流れ着き、1年半ほど通い続けました。そこで学…

フスイ

生きるか死ぬかを考えた末、吉原のソープ街に流れ着き、1年半ほど通い続けました。そこで学んだことや経験したこと、感じたことについて綴ってます。 コンパニオンの紹介や、お店のサービスに言及する類の物ではないので…何卒、ご承知おきください。

マガジン

  • 風俗嬢に人生を救われた話

    そのまんまです。 人生をどう躓いて、どう足掻いて、どんな迷惑をかけてしまって、どう救ってもらったのか。 あれこれ綴っていきます。

  • 風俗嬢に人生を救われた話(後編)

    「救われた」までの「あれこれ抱え込んだ」のが(1)~(9)で3万字あまり……と、あまりに長いので、後編だけでもまとめました。 手っ取り早く結論を見るには、こちらをお勧めします。

最近の記事

愛の言霊(前編)

<言霊> 風俗嬢の言葉には、魔力が宿る。 1年半で、20人超のソープ嬢にお世話になった訳だが……彼女達の内何人かは、今もって自分を捉えて離さない、素晴らしい言葉力をもっていた。 今回は、その一部を紹介したいと思う。接客する側にとっても、される側にとっても、なかなか他人のやり取りを確認できる機会はないと思うので、純粋な娯楽になれば幸いだ。 なお、23番目にして最後の師であったAさんの残した名言の数々については、「風俗嬢に人生を救われた話(後編)」をご参照願いたい。 (1

    • 風俗嬢に人生を救われた話(終)

      <無二> それからもAさんの下へは、月1回程度のペースで通った。 スケジュールと予算の関係で、それ以上の登楼は難しかった。しかしおよそ月1で訪れる「心身の洗浄」が、公私に渡ってどれほど自分を助けてくれたことか。今年の春先以降の充実ぶりは、過去に例を見ないものだった。刹那的・擬似的な関係であっても、ある種のアゲマンと言えるのかもしれない。 面白いもので、ある特定の相手と関係を続けていると、自分の性的趣向がはっきりと見えてくる。 1つは、「本当に気を許した相手と、繰り返し機

      • 風俗嬢に人生を救われた話(14)

        <最低> 『正直ならいいってもんじゃねえんだ。わかるか?』 ……? 『嘘吐きはな。優しいから、嘘を吐くんだよ。 相手の笑顔の裏で、自分が何倍も傷付くことを受け入れられるのが、本当の嘘吐きなんだ。 相手のために嘘を吐くか、自分のために嘘を重ねるかの違いだ。自分のために嘘を吐き続ける奴は、ただの自分勝手だ』 ……、…… 『そうだなぁ。勿論、嘘を吐くのは、本当は良くないことだ。嘘を吐かないでみんな幸せに暮らせるなら、それが1番だよ。誰も傷つかないで済むんだしな。 けど、

        • 風俗嬢に人生を救われた話(13)

          <魔眼> 「そうだったんだぁ~……それで不安になって、お店まで来ちゃったの?」 ほえ~という表情で、Aさんは言った。驚いているようにも、呆れているようにも見えた。 部屋に入るなり、来訪の理由を話し、非礼を詫びた。自分の思考がぐちゃぐちゃになり、言い知れぬ不安を感じ、急な来店に繋がったことの説明をした。 本来なら、およそ2ヶ月ぶりの上京ともなれば、 「新しい門出を祝って!」 のように、あくまで前向きな姿勢を崩さず、彼女にありったけの感謝を伝えるのが理想であろう。しかし自分

        愛の言霊(前編)

        マガジン

        • 風俗嬢に人生を救われた話
          15本
        • 風俗嬢に人生を救われた話(後編)
          6本

        記事

          風俗嬢に人生を救われた話(12)

          <休息> 「会わないまま見失えば、必ず後悔する」 その一念に突き動かされ、Aさんに出会った年末。 本人との交接には失敗したものの、抱えていた問題の認識、消化に成功したことで、ようやく平穏な生活を取り戻すことができた。 宣言通り実家に戻った後も、Aさんはちょこちょこと日記を更新し続けていた。 元々、彼女の日記の大ファンであったこともあり、交換してもらったLINEで感想を送ると、気まぐれに(という表現がピッタリ来る)返事を寄越してくれもする。アフターサービスが行き届いた人と

          風俗嬢に人生を救われた話(12)

          風俗嬢に人生を救われた話(11)

          <選択> 「ベッドにする? それとも、マットにする?」 事の用意を始めた矢先、Aさんはそう尋ねてきた。 これには困った。 ここでいう「マット」というのは、専用のローションとエアマット(ゴムボートのような物、と考えてもらって差し支えない)を用いた、和風俗特有のサービスである。始祖は川崎、堀之内のソープ嬢とされており、今から約50年も前(!)に開発された技術体系だという。詳細は割愛させていただくが、達人のそれは間違いなく「絶技」と呼べるもので、敬意を払ってやまない。 一方

          風俗嬢に人生を救われた話(11)

          風俗嬢に人生を救われた話(10)

          <腐食> 腐った水だ。 死んだ魚だ。 季節が巡り、1年が過ぎた。 それでも、自分はここにいる。同じ泥沼に嵌り続けている。 1年前、生き地獄を味わった。 結婚を前提に交際していた相手に振られ、仕事でも致命的な失策を犯した。罪の意識に苛まれた末、女性に慣れる為、交接の作法を学ぶべく、全てのしがらみを振り切って、ソープ通いを始めた。 コンパニオン達からは、怪訝な顔をされた。1万2万と金を支払っても、適当な対応に終始され、ほとんど全く協力してもらえないこともままあった。 それ

          風俗嬢に人生を救われた話(10)

          風俗嬢に人生を救われた話(9)

          <無音> 10月。一度も店に行かず過ごしたのは、実に10ヶ月ぶりだった。肉体的にも精神的にも、とても楽だったのは、なんとも皮肉な話だ。登楼がいかに自分の心身をすり減らしていたのか、窺い知れるというものである。 とは言え、世話になった女性達の写メ日記については、ちょこちょこと拝見していた。元気でやっているかどうかが気になったし、注目度が上がりやすいよう、ランキング等の投票には協力していたからだ。 そこで、はたと気が付いた。 半分近くの嬢が、姿を消していたのだ。20人中、当時

          風俗嬢に人生を救われた話(9)

          風俗嬢に人生を救われた話(8)

          <潮時> 9月末の休日。いつものように、重たい体を引き摺りながら、店へ向かっていた。 それにしても、この日の重さは格別だった。 理由は単純明快だ。 決別を宣言するためである。2度と、店に来ることはないと。 きっかけは、思わぬ形で訪れた。贖罪を理由に、今後も通い続けるのは責務ではないか、と考えていたところを、別の事情で、それができなくなった。 かねてより交流があった女性の1人と、正式に交際が決まったためだ。 “誘い”があったのは、9月の中頃、相手は8月以降、みるみる生

          風俗嬢に人生を救われた話(8)

          風俗嬢に人生を救われた話(7)

          <冷笑> 約束を取り付けてから数日、何度かLINEのやり取りを繰り返した後。 一通の連絡で、状況は一変した。 「この間は思わず外で会う、なんて言っちゃいましたけど、すみません。 やっぱり、お店に来られないなんて辛すぎます」 ――さもありなん、である。 当然、落ち込んだ。だが、彼女の気持ちはおおいにわかった。 ロングタイムで入るものの、行為はスローで摩擦・消耗が少なく、そのくせ月辺りで入る回数は多い。自分が”割のいい客”である自覚はあったからだ。 彼女にとって、あくまで

          風俗嬢に人生を救われた話(7)

          風俗嬢に人生を救われた話(6)

          <慕情> 彼女は一言で言うと、「つくる」のが下手な人だった。「繕う」、と言ってもよいかもしれない。 再訪は、素直に喜ばれた。聞けば、どこの店でも多かれ少なかれ、本指名が取れるとコンパニオンの取り分は増えるらしい。面識があり、尚且つ清潔で、体を乱暴に扱わない客は、安心感も大きいのだと言う。 逆に、短時間で何度も”致して”来る客は、非常に負担が大きいそうだ。いなそうにも機嫌を損ねたり、暴言を吐いてきたりする場合もあると知って、思わず眉を顰めた。 しかし、とどのつまり、これは

          風俗嬢に人生を救われた話(6)

          風俗嬢に人生を救われた話(5)

          <課題> 4月に入った。 だいぶ場慣れし、安心して店やコンパニオンを選べるようになってきた一方で、”修練”に関しては行き詰まりを感じ始めていたのがこの頃だった。 理由はいくつかある。 1つ目は、前戯に時間をかければかけるほど、自分自身のボルテージが下がってしまうこと。これにより、指や舌の修練はともかく、ピストン動作の改善が叶わないのだ。不発のまま店を去ったケースは、少なくない状況がこれに当たる。一方で、例えば10分、15分といった短時間では、技能向上を図ることは難しい。

          風俗嬢に人生を救われた話(5)

          風俗嬢に人生を救われた話(4)

          <系譜> 自分がソープ通いを始めて、3ヶ月ほどが過ぎた。 この頃になると、ようやく初対面の女性と相対しても、どんな流れで接客がスタートするのか、どこで自分の事情を切り出せばよいのか、相手の反応にどう切り返していくか……諸々の機微が、少しずつ掴めてくるものだ。 以下は初期に自分がお世話になった方々と、行為の是非を記録したものだ。 ◎は大成功、○は成功、△は青息吐息、☓は不発だった時の記録である。つまり、△や☓は率直に言って、 「この嬢は外れだった」 と述べている訳である。

          風俗嬢に人生を救われた話(4)

          風俗嬢に人生を救われた話(3)

          <洗礼> こうして始めた、吉原のソープ通い。 しかしその道程は、決して順風満帆ではなかった。 当たり前である。本来なら 「気持ち良くなるため」「己の快楽に忠実になるため」 に向かう場所に、 「見当違いな贖罪のため」「修練のため」 に向かうのだ。共通していることは、どちらも結局は自己満足であることと、金を払って体を重ねることだけである。 下戸で喘息持ち、しかもそれなりに厳格な家庭で育てられた自分は、「飲む」「打つ」「買う」要素が、これまでの人生で見事に欠けていた。ド素人がい

          風俗嬢に人生を救われた話(3)

          風俗嬢に人生を救われた話(2)

          <遊郭> 端的に言えば、吉原に救いを求めた一番の原因は、 「教えを請うのであれば、やはりその道のプロだろう」 という発想だった。信頼であり、安心である。今こうして振り返ってみると、何とも滑稽で呆れてしまうのだが、当時の自分にとっては、極めて当たり前な思考だった。 とは言え、これまで一度も風俗の利用経験が無い人間が、飛び込みで店に向かうのは、いかにも敷居が高過ぎる。 半日ほどかけて調べてみると、あれこれ吉原の仕組みがわかってきた。 ① 利用料金が破格に高い 漠然と「

          風俗嬢に人生を救われた話(2)

          風俗嬢に人生を救われた話(1)

          ※このnoteは、筆者の体験してきたことを振り返り、今の自分から見た考察も加えながら、諸々書き綴ったものです。内容はあくまでも筆者個人のものであるため、中には偏った見方や、正しくない認識が混入している場合があります。それでも、「少しでも吉原のことを、性風俗の世界について理解してもらう上で、参考になれば」と考え、執筆を始めました。同時に、コンパニオンに対する評価であったり、客が望むことであったりについては、極めてストレートに書きます。この連載を読んで、気分を害される方がいらっし

          風俗嬢に人生を救われた話(1)