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◆“募金思想”と“数の暴力”は紙一重/正義のために放たれた元気玉とガーシー議員

 ロシアのウクライナ侵攻から本日で180日目(初日含む)。偶然か意図的か、今年の9月11日(日)は同侵攻が開始した2022年2月24日からちょうど200日目となる。911テロが起きた日付である。

 ドラゴンボールZで孫悟空が魔人ブウを倒すために放った超元気玉は、見事に魔人ブウを消滅させるに至ったわけだが、悟空が地球のみならずナメック星からもあらゆる生命体や自然から元気を集めたあの光景は、まさに「悪を倒すため」という大義の下に展開されたシーンであり、これを現実世界に置き替えれば「募金思想」が一番近いものだろうと考えられる。

 先月の10日に開票日を迎えた参議院選挙にて初当選した東谷参議院議員は、暴露系ユーチューバーとしてある大物経営者の暴露をきっかけに大衆の人気を集めることとなったわけだが、これからの3年間で彼が掲げる47の公約が仮に果たされたとして、社会がどのように変化を迎えるのかについては何とも言えない、今のところそうした見解が適切だろうと思われる。

 名高い人物の過去の行いを暴露するというのは、最悪の場合、その人の命を奪う殺人と同等の結果をもたらす危険性を十分に孕んでいるということ自体は、現代の社会においては一定以上の認識を誰もが持っているはずである。暴露が暴露それ自体で済むことはなく、必ずと言っていいほどあらゆるSNS媒体で炎上騒ぎとなり、これをメディアが逐一取り上げてここぞとばかりに報道し、思いたいように思い、言いたいように言いたい人たちがこぞって騒ぎまくる。

 NHK党のマーケティングとしては客寄せパンダの役割を担ってもらえそうな人間ならきっと誰でも良かったに違いない。そもそも、本来NHK党が掲げている公約とガーシー議員が掲げている公約には共通点があるように見えて言うほど共通点があるわけでもない。強いて言うとすれば「破壊」という点くらいだろうか。

 国家最高権力を持つ国会議員の質は落ちるところまで落ちてしまったことは否定できない事実だろうと考えられる。このタイミングで破壊を目的とした国政政党および国会議員が誕生し、真っ先に大衆心理のコントロールに打って出たことは、この先の社会の安定性を損なうかもしれないといった懸念を抱かせるものである。

 政治の素人、司法の素人が国会議員になるようになってしまった日本の未来は、期待できるような要素を生み出すことはできても、結局のところ事態が悪化していくこの流れを抑止するだけの力を発揮することはおそらくないだろうと思う。

 自身が掲げる正義や大義のためであれば、これまで甘い蜜を吸ってきた人物たちの過去をめくって暴露しても悪ではないのだと信じ切っているところがまず危険であり、ターゲットのみのダメージで済むと思い込んでいるところもまた危険である。楽天創業者である三木谷氏に関する暴露がまさにそう。

 ガーシー議員が有権者からの支持を集めれば集めるほど、暴露の持つ社会的制裁の威力は青天井で巨大化していくことも考えられるわけで、こういう状況を社会全体がただ面白がって眺めている様というのは、いよいよバランスを崩し始めてしまう前兆ではなかろうか。

 通称ガーシー砲と言われている暴露行為、これを孫悟空の元気玉に置き換えるのであれば、いずれ犠牲者が出るだろうと言っても過言ではない。彼の直接的な支援者、協力者はもちろんのこと、彼のインスタやYouTube切り抜き動画視聴をしているネットユーザーは、ガーシー議員へ元気を贈り続け、巨大な元気玉を作り、期が満ちる度に社会へ、世界へ放っていくことになる。

 面白おかしく眺めていられるのもきっと今だけだろう。こういう暴露行為や炎上騒動が繰り返されることで、少なからず影響を受ける人たちが次々と増えていき、彼とはまったく関係のない別のところでドンパチと繰り広げられる暴露や炎上に歯止めが効かなくなっていくことも十分に想定できる。

 つまり、ガーシー議員がこれからやろうとしていることは、言ってしまえばどちらかというと悪い意味で「想定可能な未来」を浮き彫りにするに留まるだろうということである。こんなことがいつまでも許されるはずはないだろうに、客寄せパンダ効果に踊らされた人たちが投じた一票でどんでもない国会議員を誕生させてしまうこととなったわけで、さらに言えば、このことがどういうことなのかといった本質的な意味への理解も乏しいまま彼を応援している人たちの存在が確固たるものになろうとしている。

 晴れて国会議員になったガーシー氏は「先生」と呼ばれるようになったことに優越感のようなものを感じているように見える。彼がこれから暴露の対象にしようとしている人物たちを悪として攻撃することに必死になっているのは知りたくなくても伝わってくるのが現状ではあるものの、長くは続かず、結局のところ何かしらの強大な圧力に屈することになるのだろうと思いながら静観している。

 元気玉を核兵器に置き換えたらどうか。国家の掲げる正義のために核ミサイルを発射することを擁護できる国や人がどれだけ存在するのだろうか。あくまでも極論だけれども、ガーシー議員がやろうとしていることはつまりはそういうことに限りなく近い意味合いがほとんど明確に示されている。

 国民のために、市民のために掲げた公約を遂行することがまずもって最優先事項だと言えるはずなのに、ガーシー氏は「恨みを晴らすべく他者に意識を囚われたまま国会議員になった」ことで、国民や市民のためにできる多くのことを見て見ぬフリをして他人の過去をめくることで正義のヒーローを演じて気持ち良くなりたいだけのように見える。

 有権者代表である国会議員が自分の恨みを晴らすために国費予算を使いこもうとしているだけでなく、月額3980円でオンラインサロンまで開設しようとしている。ただ、これについては世論からの批判を受け現在延期しているとのこと。

 あまり頭が良いとは言えない。どうせオンラインサロンをやるのであれば企業限定にして個人を排除すればいい。企業組織のみ参加可能なオンラインサロンとしてやるのであれば、会費月額30万円くらいでも参加企業は優に数百社を超えてくる可能性だってある。一般の民間企業はもちろんのこと、放送局や新聞社や雑誌編集社などのメディア関連企業を取り込むことだってできたかもしれない。

 まずはこれを軌道に乗せてから個人参加用のサロンを月額500円程度で立ち上げるほうが、後ろ盾のある状態かつ安いということで、世論からの批判も余裕で回避できたに違いない。

 ガーシー氏もNHK党の立花党首もどうやら“元気玉の作り方”を間違えてしまったらしい。でも、個人的には何度か失敗を重ねて「国政を担うだけの器量のない人物」レッテルを貼られる流れに向かっていけば、元気玉の乱射を防ぐことにもなるかもしれない。

 もし逮捕されるようなことにでもなれば、NewsPicksで対談した成田さんに対して発した「王族になりたい」というあの言葉が、昼の報道番組でリピート再生されることになるかもしれない。

 無能な人間が中途半端に権力を手にしても決して良いことがない。おそらく、ガーシー議員はそのことを肌で実感することになるだろう。力とは、適切に扱おうと注意を払っていても、人であるがゆえにその力加減を誤ったり、力を発揮すべき場所や相手を間違えるもの。

 ウクライナ支援のための募金それ自体が悪いとは言わないけれども、現地に満遍なく支援が行き渡るか定かではないことに疑念があっても注ぎ続けるのは正しい行為とは言い難い。軍事支援を継続することで長引く戦争をさらに助長するものでもあることを、もっと主張する人たちがいてもいいくらいだ。

 大衆は常に間違っている・・・。

 岸田首相、今後も支持率は低下していくでしょうけれども、一先ずコロナ感染されているということなので、ご自愛ください。世論は無慈悲。

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