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闘う中学生(不登校日記2)

一番上の子、中学生のいっちゃんが不登校ぎみであり、その試行錯誤の記録。

前回の記事はこちら↓

学校は行ったり行かなかったりを繰り返しつつ、まだ手探りであるけれど、そういう中でいっちゃんが決断した。「塾をやめる」と。おお、そうきたか。

約一年前、中学生になったいっちゃんが塾に行きたいと言うので、あちこちの塾を見学した。いっちゃんが選んだのはゴリゴリの進学塾で、本当にここに行くのかい?と思ったけれど、フィーリングが合ったようだったので、まあそれは大事だよね、ということで、通うこと一年弱。

疲れたのだと思う。多分。

日頃から、いつでも塾はやめて良いと言っていたので、私から引き止めることはなかった。でも、勉強を諦めたわけではなく、自分で家でやるつもりだとも言うので、それは少し気になる。

このご時世、塾に行かないということは、飼い猫がノラになるような厳しさがあるんだよ、と念押しして、「立派なノラになれ!応援するよ!」とだけ告げた。

晴れてノラとなったいっちゃんであったが、それだけで気持ちが晴れたわけではなかった。なんとなくだるい、なんとなく学校に行きたくない。

そりゃそうだ。高校受験はするつもりなのだから、根本的に解決はしていないよね。

親にできる事は多くはないけれど、そういえば、体の大きいいっちゃんは、運動嫌いなのに「腕っぷしが強そう」と思われることがよくあって、自分でも「もしかして本当に強いのか、試してみたい」と言っていたことがあった。

せっかく塾をやめて時間も出来たことだし、どこか格闘技の道場でも見学してみたらどう?と誘うと、「格闘技?やってみたい!」と、かなり食いつきが良かった。

近所だからという理由で覗きに行った道場は、思った以上に本格的なブラジリアン柔術の道場だった。

こども三人を連れて、これは場違いな所に来たなと、道場の外でそわそわしていると、少し遅れて、強面で無口な先生が大型バイクで登場した。ヘルメットを外すと開口一番「…どの子がやりたいの」と、こども三人ぐるりと見回しながら聞く。「一番上です」。私がいっちゃんを指差すと、ちらっと立派な体つきを見て「なるほど」。と少し笑った。めちゃめちゃ怖いが、悪い人ではなさそうだった。

生徒もなかなかの顔ぶれだ。いつでも人間を軽く一捻りできそうな、精悍な男性がずらり並ぶ。それでもいっちゃんは、学校の体育で買ったばかりの着慣れない柔道着で、果敢に組み方を教わっていった。

初日の見学にも関わらず、2時間程基本の組み方を繰り返し、見ているこちらがヒヤヒヤした。いっちゃんは、根っからの文系で気も弱く、体育は苦手で鉄棒の逆上がりもできないし、小学校のときは、洋服のフードを友達に引っ張られたと言って泣いて帰ってきた。それが今、人の倒し方を教わっている。もちろん相手はびくともしないが、何度も何度も倒しにかかる。

「あんな怖いおじさんばっかりのところで、初めてなのに、よく2時間もやったじゃない。おかあさんなら泣いて途中でギブアップしているよ」。

「すごく頑張った。面白かった」。

いっちゃんは負けず嫌いだと思っていたが、ここまで血の気が多いとは思わなかった。ただ、ここの道場はちょっと本格的過ぎたので、もうちょっと子供向けの道場も見てみたい、ということで、現在は道場めぐりが始まりつつある。

進学塾を辞めて、ブラジリアン柔術の体験に行っている中学生、面白すぎるだろう、と思うものの、親はどんな迷走でも応援するしかないんだよな、と思って、ただただ眺めて過ごしている。

もちろん、塾には頭を下げて退塾の手続きをしてきたし、道場探しや見学付き添いのサポートとか、親がやることも、なくはないけれど。

いっちゃんは思い切り迷って、悩んで、なんでもやってみると良い。それが若者の特権…、否、大人になっても迷走している私から言わせれば、それは人類全ての特権だ。

一緒に、気の済むまでやろうじゃないか。





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