「Gâteau au chocolat」


初回となる今回は、「ガトー・ショコラ」

タイプの異なる3種類をつくります。

誰しも一度くらいは食べたことがあるであろうケーキですね。でも、お店によって、つくり手によって表現は様々。あまり好きではないと思っている人も、まだ、「ガトー・ショコラ」の可能性を知らないだけかもしれません。甘いから夏は食べる気がしないと思う人は、本当においしいチョコレート菓子を知らないのだと思います。むしろ、カカオのキレがあって、マンゴーやパッションフルーツと合わせたら夏だからこそおいしいケーキになります。個性の異なる3種類のルセットを通して、あなたのつくりたいものが、どんな香り、どんなフォルム、どんな食感、どんな味、どんな口どけ、どんな余韻、理想的のイメージがある場合、そうなるようにするにはどうすればよいのか?がわかるようになります。それがわかっていれば、素材の選択、材料の配合、作業の内容、焼き方等、本などを見なくても、つくる作業の流れ、仕上がりのイメージが浮かび、まだ、つくっていないのにワクワクしてきます。お菓子づくりはそこから始まっていると思うのです。つくる前の楽しさも大事です。そして、「どうすればよいのかわかっている」という安心が手に入ります。これが大事。不安なままの作業は迷いを生みます。その分、時間がかかってしまったり、逆に心配して余計なことをしてしまうかもしれません。自信を持って臨み、確信のある作業、焼成をしてこそ、理想のお菓子がつくれるようになります。



ここでは、基準となる3つのルセット(つくり方)を紹介します。すべて、実際に私が「sens et sens」で使っているものです。これをもとに、自分好みのルセットを自分で考えてつくることができる、いつでも、気分で変えられる、そういうつくり手、表現者になる思考力をお伝えします。どうして、一般的なレシピ本などに書かれているもの、お菓子教室などで教わることが、「このレシピなら失敗しない!」「これがおいしいレシピ!」と、ひとつの答えを押し付けてくるのか。そのレシピ通りにつくるためのノウハウだけを伝えて、配合や作業の理由が伝えていないものがほとんど。「もう少しこういう方が好き」と思っても、どこをどうすればよいのかわからない。失敗はしないかもしれないけれど、心の自由度がありませんね。心の自由とは、「今日はこうしたい」と思ったときに、どうすればよいかわかっているという心のゆとりです。ルセット(つくり方)をつくるためのルセットを手に入れてしまえばいいのです。味の好みは皆、違うのですから、どのルセットがおいしいかなんて決まってない。私が積み上げてきた経験の中から個性の分かりやすい3タイプのガトー・ショコラを公開します。生クリームだけを添えておいしいものなのか、フルーツやナッツ、スパイスを使うのか、ケーキに合わせるものに合わせて配合を自由に操作し、年間で5、6種類のガトー・ショコラをつくります。焼成は、家庭用オーブンで十分です。作業は、お菓子づくりという意味では少々の経験は影響しますが、よく読んで理解していただければできるようになります。慣れていても、理想のイメージとそのために必要なことがわからないのに何度作っても進歩しません。どういう絵を描きたいのかというイメージがないのに描き始める画家はいないと思います。意図していないものに、その人だからこその力は宿りません。メレンゲの立て具合の見極めとチョコレートとの合わせは、慣れることでどんどん良くなっていくものです。最初から、簡単で、楽で、短時間で、すごくおいしい、なんて目指すほうがおかしいと思います。逆に言えば、大変だと美味しいのではなく、おいしくつくろうとすると手間がかかるときが多いだけです。作業が難しそうかどうかを「やったことがないから」や見た目や説明の複雑さで決めてはいけません。どんなにシンプルなことも深く掘り下げて質を上げようとすれば難しいですし、それをきちんとやることが大事です。

どうして膨らまないの?
どうして焼き上がりに沈んでしまうの?
どうして硬くなってしまうの?
どうしてポソポソ乾いてしまうの?
どうして味を濃くすると重くなってしまうの?
どうして口どけが悪いの?

お菓子をつくり慣れている方、つくり慣れていない方の気持ちになり、傾向と対策を説明させていただきますが、読んでもわからないことがあれば質問を受付致します。専門用語を使う場合は言葉の説明もしていきます。つくり手の立場で伝わるように伝えていきタイト思います。

それでは、新たな視点でインプットして思考を更新する、学ぶことの楽しさをお愉しみください。



素材を知る。

相手を知る。

人と人の関係と同じです。

相手がどうして欲しいのかを感じ取れなければ、どうしてよいのかわかりませんね。素材が気持ちの良い状態、喜ぶようにしてあげてこそ「おいしい」が生まれます。季節の変化、素材の変化、あらゆる場面でその瞬間の気持ちを感じ取れるように、まずは素材の特性(性格)を理解しましょう。


ここから、「ガトー・ショコラ」をつくることを前提に、素材とパーツ(メレンゲなど)の役割、メリット、デメリットを説明します。情報が多くなりますが、全て、理由をお伝えしますので、順番に少しずつでも理解してください。「理解したい」と思うからこれを見てくださっているはずです。仕事や宿題のように「理解しなければならない」ということではなく、理解したいという気持ちで自発的に読んでください。あなたのペースで大丈夫です。



<チョコレート>

チョコレートは、基本、カカオマス(固形)、カカオバター(油脂)、砂糖で構成されています。「カカオ分〇〇%」と書かれているのは、カカオマスの量を示しています。上記のものは、スイートチョコレート。ミルクチョコレートは、そこに乳製品(粉乳)が加えられたものになります。スイートと言ってもカカオ分70%であれば砂糖は極めて少なくビターで、50%以下ともなれば、マイルドなチョコレートになります。ちなみに、砂糖を加えないものを「カカオマス」と言います。極めてブラックに近い色のカカオパウダーの元の塊だと思ってください。ホワイトチョコレートは、カカオマスが入っていないミルクチョコレートというものになります。だから、白いのです。
ルセット1は、ヴァローナ社のスイートチョコレート「カラク」カカオ分56%のものを使用しました。カラクは、カカオらしい香ばしさとヴァローナ社らしい酸(キレがあるという意味)があるチョコレートです。味そのものは、お好みで仕上がりのイメージに合わせて、良い意味で個性の控えめなものが合うのか、フルーティーなものが合うのかなどを決めます。まずは、銘柄よりもカカオ分に着目して欲しいです。カカオマスが多いほど硬くなります。同じ配合で、カカオ分70%のチョコレートに置き換えた場合、ケーキも冷めた時に硬くなります。ミルクチョコレートであれば柔らかく仕上がります。つまり、食感に直結するということです。そのため、味、銘柄は変えてもかまいませんが、カカオ分を変えるということは食感に影響し、それでもイメージに合うのかどうか、もしくは、他の条件を変えることで補うのかを検討しなければなりません。例えば、カカオ分が高くなる場合、硬くなりますが、それでは困るというとき、メレンゲの量を増やす、あるいは、よく泡立てることで軽さを出すなどの工夫が考えられます。また、カカオ分が高くなるということは、チョコレートに含まれる砂糖が減ります。そのため、甘さが足りなくなる可能性があります。それであれば、卵黄に入れる砂糖を増やす必要があります。仮に、卵白に入れる砂糖を増やしてしまうと、メレンゲの泡立ちに影響しますので、それでは、また違う意味で食感やボリュームが変わってしまいます。このように、チョコレートのカカオ分を変えることで、様々な影響が出てきますから、そう簡単に大幅にカカオ分は変えてはいけません。そう考えますと、書籍などに、「スイートチョコレート〇〇g」と記載されていることがどれほど雑な言葉なのかわかりますね。カカオ分10%も違ってもスイーツなのですからとんでもなく違う仕上がりになります。理想のイメージに対してチョコレートの味や香りの選択をし、その結果に対して理想とのズレを調整していくことで理想の味と食感に近づいていけるということになります。フルーティーな味わいにしたい場合は、ヴァローナ社「マカエ」(黄色いフルーツを思わせる味)や「マンジャリ」(赤いフルーツを思わせる味)などで個性が出せます。


正直、公開することはリスクが高いですが、
全国、どこでもおいしいケーキが食べられたり、
自分でつくれたりした方がよい世の中だと思っています。
20年、食の世界にいますが、
ここから大きく考えが変わることはないと思えるだけの追求をしてきました。
集大成の製菓理論をお伝え致します。

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「Gâteau au chocolat」

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コメント2件

よくぞこのレシピを世に出して下さいました!!
ここまでロジカルに、作る側に立って書かれているレシピは未だかつて知りません。
一生の宝物になりました!
今日も今から焼いて、友人達に振舞います。
ありがとうございます!
読んでくださりありがとうございます。
作り手が、自分らしいものをつくれるように、つくることを解説したものは、この世界に存在しないと思っています。
深く理解できたら、好みで変化させて、自分のレシピをつくってみてください。
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