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俳句、自選自解002(ワシコフ俳句)

露人ろじんワシコフ叫びて柘榴ざくろ打ち落す

西東三鬼さいとうさんき

まっとうに、正岡子規から水原秋桜子の流れで俳句を学んでいた私は、高校生のある日、ズギャンと雷に打たれた。引用の、西東三鬼の俳句である。

露人て!ワシコフて!誰やねん!

衝撃が強いと、すぐに真似をしたくなるし、うずうずと何かに書きつけたい欲にかられる。すぐさま「ワシコフ俳句」なる連作をノートに書いた。

書きながら、これがもう、ワシコフのイメージがどんどん膨らむのである。ワシコフの腕、ワシコフの赤ら顔、そしてワシコフの寂しさ…

若干の編集を加えつつ、時を経て、ここに発表したいと思います。



ワシコフ俳句  つねたまじめ

露人ワシコフ叫びて鹿を追い回す
露人ワシコフ叫びて尾花引きちぎる

ワシコフは西瓜の種を出せぬ性
ワシコフの両手に玉蜀黍とうもろこしを食ふ
ワシコフは鮎も煮物もフォークで刺す

露人ワシコフ高きに登ること楽し
ワシコフの胸毛を秋の風吹けり
ワシコフの家の虫みなカマドウマ

大酒を飲むワシコフの背中かな
ワシコフの酔ひつぶれたる月夜かな
ワシコフの友なき夜の火酒かな

ワシコフはいいちこが好き師走かな
忘年会ワシコフの足のくさきこと
照れ笑いしてワシコフの息白し
オトシダマクダサイとワシコフが笑う

ワシコフに声かけ子供相撲かな
ワシコフの独楽こまブンブンとうなりけり
故郷ふるさとは妻と子どもと白夜かな

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