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「サラバ!」

 こちらもaudibleで。上中下3巻。こちらも面白く、ひたすら聴いた。松坂桃李さんの朗読もとても良い。

 これもまた面白かった。直木賞受賞作。主人公の圷歩の目線から家族(姉、母、父)や友達、そして、自身と家族の和解と、自分自身の回復を描いた内容。主人公の幼少期がイランやエジプト、日本と変わり、その描写だけでも面白い。
 強烈な姉、父との別れ、母の幸せへの執着など、激動。
 兄弟姉妹の場合、上の子の様子を見て、下の子は生きる感じが、私もそうだったので良くわかった。事なかれ主義になりがちというか。強烈な上の子の下だと、波風を立てることがすごく不得意になる気がする。
 私もヒヤヒヤしながら母と兄を眺めていて、こうなってはいけない、と思ったこと、顔色を伺う術を身につけたことを覚えている。主人公の姉に対する複雑な気持ちはよく分かった。

 自分の過去と向き合い、エジプトへ行き、姉と話をしにいくところは、一気に駆け上がる感じて盛り上がるし、スピード感ありつつ、とても感動的。

 物語自体も面白いし、中弛みもそんなになく、私も夢中になって聴いた。でも、なぜか全く心が動かされるというか、気持ちを揺り動かされることがなかった。なぜだろう。

 簡単に言えば、主人公歩の自分探しの物語なのだけれど、世の中的にもはや、自分探しは聞かなくなった。姉が世界中を旅したり、歩がエジプトへ行ったりするのは、少し前の自分探しの旅とも言えるようなものに見える。それ自体が少し懐かしい感じがする。
 今は、自分を探すより、今は、承認希求の方が強いのかな。自分も時代の流れに乗ってしまって、感覚が変わってしまったからだろうか。
 2014年発行で1977年生まれの歩なので、その時代の空気や思想を反映しているということだと思う。
 タイトルの「サラバ!」もちゃんとネタバラシされるし全てが最後爽快で、平たくいえばハッピーエンドで、読後感も良いのです。
 やっぱり出た当時、話題になった当時に読んだ方が良かったのかな、と思ったりした。とは言え、とても良い作品だと思う。

 audibleで聴くと読んでいるわけではないので、登場人物の名前の漢字がよくわからない、ということに今更気づきました。

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