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雨でも会いに行くのが苦じゃない人。

どしゃ降りの雨、強い風。梅雨入りした長崎県波佐見町は、うっとおしくなるような天気だった。車に乗り込み、ひとり焼きものの職人さんのところへ向かった。

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こんにちは、こんばんは。くりたまきです。今日の波佐見でのひとコマをお届けします。どうぞ。


「あれ? 今日やったっけ?」

訪ねたわたしに作業していた職人さんが言う。

「え?」

両者かたまり、3秒後にスッとスマホを取り出して確認しはじめる。

「あ、くりたさんごめん、今日って言ってたね」

お互いに恐縮して笑いあう。無事に話し合いができて、仕事のスケジュールを詰めることができた。そのあと、こんなことを聞かれた。

「くりたさん、前にうちの工房に連れてきとった男の人、彼氏?」

即座に否定した。ワタシ彼氏イナイ。

「その、結婚願望はあるの?」

目が合わない。桶に入れた釉薬を所在なさげにかき混ぜながら聞いてくる。

「ありますよ〜!」

ちらっとこちらを見てくれた。

「くりたさんみたいな人に波佐見に長くおってほしいから、結婚とかしてこっちで生活が成り立ったら、それがうれしかねと思って」

その職人さん自身は修行先でお嫁さんを見つけて、結婚したタイミングで一緒に波佐見に帰ってきてるので、余計に結婚が居住地を決めるターニングポイントとして頭に浮かんだんだろう。

ちょっと気まずそうな顔をして職人さんは謝ってきた。

「でもそんな、恋愛のこととか、口出すのもあれだし、ほんと余計なこと言って、」

「いやいや全然大丈夫ですよ!絶賛募集中ですし!結婚願望もありますし!もちろん誰でもいいわけじゃないですけどね!」

「そうよね」と職人さんがうなづく。

その横顔が照れていて、わたしもちょっと照れる。

田舎の人がみんなグイグイお見合いを勧めてきたり、誰かを紹介してくるわけじゃない。「時代に合わないんじゃないか、出しゃばりすぎなんじゃないか」とか気にしながら、控えめに言ってきてくれる人がほとんどだ。

「あんたもはよ結婚せんばね〜!」くらいのセリフはもはや天気の話と一緒なので聞き流しているけど。

ジェンダーの問題なんかを考えると田舎で「結婚」の2文字を絶対のものだと考えて話してくる人ばかりに囲まれて暮らすのはつらいかもしれない。わたしの場合はたまたま異性が恋愛対象で結婚願望があるから今のところ問題ないけれど。

今日会った職人さんみたいに、距離感とか関係性とかを測った上で、そっと提案してくれるのは、ありがたいなあと思う。

雨でも全然会いに行くのが苦じゃない人って、いいなあと帰り道に思った。

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