かわいいとか絶対言うんじゃあないぞ。
今週、大きな変化があった。小学校の夏休みスタートである。わたしが毎日のように会っている、小学生兄妹ふたりの夏がはじまったということである。
こんにちは、こんばんは。栗田真希です。
小学生のふたりは、一生懸命宿題をやっている。かわいい。ちゃんと毎日のノルマを決めて励んだり休んだりリコーダーを吹いたりしている。かわいい。兄はわたしが珈琲を飲もうとすると「おれも飲む〜」なんてお父さんにひっついておねだりする。かわいい。妹は川遊びをするために買った新しいラベンダー色のサンダルを履いて見せて、はにかむ。かわいい。
とにかく、かわいいのだ!!
しかし、そんな一挙手一投足を愛でるようなかわいがられ方をして、兄妹の立場だったらうれしいだろうか。否。
だからわたしは相当、相当に頑張っている。なんでもないような顔がとてもうまいと我ながら思う。
「わたしが仕事してる同じ場所で宿題しててもいいよ〜」と言ったら、お兄ちゃんが教科書と問題集を持って、2階に上がってきた。横のテーブルで宿題をはじめる。わたしはインタビューの文字起こしに励む。
最初は、静かだった。しばらく時間が経って、「え〜、わかんない〜」と彼が問題とにらめっこしながら、大きな独り言を発する。かわいい。しかしわたしが答えを教えるのでは宿題の意味がない。
「教科書の後ろの"さくいん"見てごらん〜。キーワード載ってない?」
「うーん。うーん。あ、あったー!」
「だいたい後ろに、"さくいん"があるから、探し方覚えようね」
わたしは理性の塊だったのか。
そのあとも、わたしがインタビュー音源を聴いているイヤホンを耳から外すタイミングで彼が言う。
「日本の都道府県の数〜? 48こ?」
「どうだろうね〜、教科書見てみて(かわいい)」
都道府県の数を間違えてかわいがられるなんて、嫌だよなあ。ごめんよ、わたしってば。考えるのはもうしょうがないけど、でも絶対にかわいいなんて言わない。態度にも出さない。
「1都1道2府43県って書いてある」
「ぜんぶ足したらいくつ?」
「えーっと。あ、48じゃなくて47こだった! 惜しい」
「そっかあ、惜しかったねえ(かわいい)」
おい、わたし。かわいいとか絶対言うんじゃあないぞ。
なんとか今日は、その自分への脅しを守ることができました。
そして、家にあった本から、兄妹に2冊の本を貸した。楽しんでもらえたらいいなあ。
貸した本を手にとって、お兄ちゃんが「おれ、小説って読んだことない」と言う。ええええ、なんだって! 本をいくつかプレゼントするか。
そして仕事が終わるころ、近づいてきたお兄ちゃんに「くりちゃんは、なにやってるの?」と聞かれて、PCで運営に携わっている『Hasami Life』を見せた。
「このサイトで、焼きものをつくってる人たちを取材して記事を書いてるんだよ」
「すごいね」
「焼きものつくってるところ、見たことある?」
「遠足で資料館に行ったことしかない」
「見てみたい?」
「うん」
「じゃあ、今度一緒に見に行こうよ。わたしが連れてってあげる」
「行きたい! いつ? いつ行く?」
「お父さんに相談してみよっか」
かわいいとか絶対言わないけど。でも、大人として君たちに渡せるものはぜんぶ差し出したいな。受け取ってくれても、そうじゃなくても自由だから。
さいごまで読んでくださり、ありがとうございます! サポートしてくださったら、おいしいものを食べたり、すてきな道具をお迎えしたりして、それについてnoteを書いたりするかもしれません。