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誰かをあたためる人間でありたい。

最寄りの方南町駅は、東京メトロの丸ノ内線の支線だ。地下鉄のため、電車の音が聞こえないし踏切の音もしないので、町の表層が穏やかなのが気に入っている。暑さと寒さもホームにいるとあまり感じないで済むのもいい。

方南町駅の改札口を上がると、なんの変哲も無い商店街や街道に出る。駅ビルなどはなく、さびれてはいないけれど、人があふれすぎてもいない。新宿に出やすく、ちょうどいい落ち着きのある町だ。ここに住みはじめて二年ちょっと、わたしはこの町をじわじわとすきになっている。

昨夜の19:30ごろ、駅の出口で、友だちと待ち合わせをしていた。宮平安春。沖縄出身の役者で、行動力がずば抜けた彼とは、『企画メシ』という講座で知り合った。そして帰り道に同じ駅に住んでいることが発覚して、たまにサイゼリヤで会って作戦会議をするようにもなった。

肌寒い秋の夜に、サンダルを履いてチャリで颯爽と現れた宮平くんは、笑顔でわたしに荷物を渡してくれた。この日は、『企画メシ』のTシャツを受け取るために待ち合わせをしていて、駅前で会って少し話をして、そのまま別れた。

話したことは、なんてことはない、宮平くんの近況と、無職なわたしの近況のことだ。笑いながら「今度ちょっと相談に乗ってよ」とお願いしたりもした。けど、軽い話だった。5分くらい話して、笑顔で手を振って別れた。

家に帰って、すぐに宮平くんからLINEが来ていた。34行にもわたる、励ましのメッセージだった。すごい熱量。おざなりなものじゃない、気持ちのこもった34行。

短い会話でわたしの不安や焦りをすくい取って、仲間として励ましてくれた。わたしを『企画メシ』を通して知ってくれている彼からの「自信持って!」に泣いた。胸がぐわんと熱で掴まれる。

どーんと背中を押して、笑ってくれるひとがいることのしあわせ。
彼がこの街に住んでてくれて、よかったな。

この町は、丸ノ内線の支線の終点だ。終点というのは、支線であったとしても、変わったひとやおもしろいひとが流れ着くのだとわたしに話してくれたひとがいた。根拠があるような無いような話だ。でも、そうかもしれないし、そうだったらいいなと思うじぶんがいる。

わたしも、誰かをあたためる人間でありたい。彼と同じようにはできないけど、わたしなりのやりかた、温度、言葉で。

方南町という町に住む縁で、わたしにできることが増えたらいいな。

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