和歌山県東牟婁郡太地町(ひがしむろぐんたいじちょう)にて捕鯨について考える(2021/6/13)

太地町のくじら博物館へ

奈良県吉野郡に滞在した後は熊野を通り、和歌山へ。

太地町は本州のほぼ南端に位置する小さな半島の町で、江戸時代初期から始まる日本の捕鯨文化の発祥地と言われています。

大学の時に授業で観た捕鯨反対運動をする欧米人が撮影した映画「ザ・コーブ」にて舞台となっていた太地町であったため、そこに行けるのはひそやかな楽しみでした。

痛烈な批判と共に描かれる「ザ・コーブ」は、太地に来た欧米の活動家が、地元の人々のでイルカ等を入り江に追い込み捕らえる映像や、捉えた時に海が血で赤く染まるような描写があります。それを撮ろうと活動家達は立ち入り禁止区域に密かに入り、撮影をし、「日本政府は捕鯨の真実を隠している」と訴えるのです。


話を戻し、太地町の東側には「くじら博物館」という博物館があり、くじらと共に歩んできた太地町の歴史やクジラ目(イルカやシャチも含まれる)の生態が収められています。

併設されている水族館では外の海を区切った入江で小さいクジラとイルカがいて、ショーも開催しています。

私がついたのは既に16:30頃であったため、ショーは終わってしまっていましたが、太地町がどのように捕鯨と結びつき、文化を育んできたか。またできれば世界の捕鯨反対論者からの意見に対してどのように受け止めているのかを知れたらいいと思い、入館しました。

博物館には捕鯨文化の歩み、18世紀後半から19世紀にかけてアメリカやノルウェーにならい捕鯨手段を近代化させてきた歩みなどが記されていました。

しかし、私の求めていたここ20年間くらいにあったような捕鯨反対運動に対する見解などは見られませんでした。

しかし、太地の人として、あえてここで語る必要がないというのも理解できた。なぜなら捕鯨は、ただただ、生きるために必死でくじらを捕らえ、生活してきた文化であり、批判を受けようがそんなことよりもっと根深い誇るべき文化であるのですから。

そして近年の反対運動に対する感情は太地の人々の中でも、きっと人それぞれあるだろうと思うのでそこに対する言及は避けているという理由もあるのかなと思いました。

多様性の矛盾とマイノリティの尊重

漁師の人にインタビューでもしてみたかったのですが、その時間はなかったので、

代わりに和歌山県知事の言葉を参照してみました。
和歌山県ホームページ Wakayama Prefecture Web Site

「ザ・コーブ」を大学の時に観た時に感じた、
「くじらやイルカの食文化は否定し、自国で膨大に消費されている牛や豚の食肉に対しては同じように批判していないならそれは矛盾だ」という感情を起点に色々思考しました。

例えば話はそれますが、国際連合を中心に形成されてきた世界のルールの多くは、西洋諸国をはじめとする大国が形作ってきたものであります。それらは人類が築き上げた財産ともいえ、SDGsをはじめとして現代の国際社会を急速に影響力をもち始めた多くの価値観は、時代において「正義」とする考え方、それらの価値観に社会を合わせていく事は恐らく間違ってはいないかもしれない。

例えば以下のようなものが持続可能性において重要な価値観、もしくは、広まりつつある価値観
・多様性の尊重
・人権の尊重
・ジェンダー平等
・脱炭素
・再生エネルギー
・肉食からの脱却

しかし、ここで存在するのが「多様性の矛盾」です。
「多様性の尊重」を訴えるのであれば、価値観の多様性を尊重しなければいけない。
「多様性を尊重する」のであれば、「ジェンダー平等を支持しない」という価値観も尊重しなければならない。「多様性を尊重しない」という価値観も尊重しなければならない。

確かに「ザ・コーブ」に出てくる欧米の活動家の「知性的な生物を食べない」という価値観は良い価値観で、いわゆる国際社会が「目指すべき世界」の価値観かもしれない。

一方で
・それだからと言って、「知能が高いから」という理由で、太地の人々が重ねてきた文化を否定し、攻撃する権利が彼らにあるのか。
・また、そのような視点で生命を眺めていいのか。どんな動物も植物も生物であるし、「知能が高いから」というような論理に固執しているのは、まさに「知能が高い」人間を頂点としている価値観の証拠ではないのか。それは人間の傲りであり、「生物を守る」ための行動をしている本人が最も生物を差別している。

と思いました。

環境テロリストのやり事や考え方は結局、武装テロ組織のそれとなんら変わりない。
自分の正義を振りかざし、自己に孕む矛盾に気づいてか気づいてなしにかに関わらず、見つめようとせず、
自分の中にある怒りや憎しみといったマイナスの感情を他者に投げつけているだけであると感じます。

こういった矛盾は誰にでもあって、
私は仕事でサステナビリティやSDGsに関わる者として、マイノリティや立場の違うの価値観を知らなければいけないし、常に受け入れられるように柔軟でいなければいけないと思っています。

ただ、そこまでちゃんとした人間じゃないので、「矛盾もあっていいいんじゃん?」くらいに思ってたりもします。

自分のマイナス面や矛盾を見つめて直そうとすること。

同時に他人の価値観も受け入れること。

攻撃せずに、優しい感じで。

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