リフレってもともと現金課税だから効くって話じゃなかった?

私がリフレーションと言われる政策に興味を持ったのはもう10年くらい前になるでしょうか。その当時にリフレまとめサイトというものがあり印象深かったのは「ヴェルグルの奇跡」というエピソードです。

ざっくりそれを説明しますと現金課税です。一定の割合で現金の価値を割り引いていくと現金を他のものに変えようとして景気が良くなったという話です。

リフレ、インフレ政策というものもインフレを起こす意思を中銀が持つというアナウンスメントとそれの裏付けとなるベースマネー積み増し政策で起こるインフレ予想に応じて現預金の価値が目減りし、実質金利が下がるというのが当初の目論見だったと思います。現金保有の機会費用が上がれば預金にするしかないですから、銀行も預金金利を引き下げたところで取付に怯える必要もなくなり、市場も現預金を他のものに変える動きを加速すると銀行貸出も増える。政府にも名目での取引額が増加すると歳入が増えるいうメリットがあり、財政再建しやすくなるという期待もありました。このような手法で税収を増やすことことをインフレ税と言います。現預金保有者から政府に購買力が移転するから、事実上それは税金だということです。

つまるところインフレ政策とは当初より「インフレ税」によって景気を上向かせるという徴税政策だったわけです。しかしどれだけベースマネーを積み増してもお金への徴税機能が無いから実体経済に何も起こりませんでした。

複数のエントリで繰り返しまていますが、緊縮財政や積極財政という言葉にはあまり意味がありません。何をしたところで政府の歳入、歳出は資源配分の変更をお起こしますから、誰かにとっての負担増が誰かにとっての負担減になるということです、その過程で全体的な幸福度が上向いたり、経済成長して一人あたりの実質的な豊かさが増えるなどのことが起こります。

同じ「徴税」でも流動性への課税と流動性の低いものへの課税は全く逆の効果を起こします。

私はマイナス金利政策を実施するべきだと考えています。マイナス金利とは実質金利を引き下げることですが、これは事実上預金課税です。マイナス金利政策とは広い意味での預金課税政策だと私は考えています。

現在中銀によって行われているマイナス金利の深堀りがうまく行かないのは現金の金利をゼロ以下にできないからです。現金の発行と使用を政府主導で停止するなり現金を時間の経過に応じて割り引いていかないとマイナス金利を深堀りすることは不可能です。

金融機関の保有する日銀当座預金をマイナス金利にしても一般の預金者は現金に転換したり他行に預け変えるという逃げ道があるために銀行が預金者の金利をマイナスにすることができないし、それが織り込まれているために預金者も預金を使って何か買い物をしようという動きを起こすことも無かったわけです。仮に現金そのものにマイナス金利が摘要されれば現金を保有するメリットは無いですから預金にせざるを得ません。

ただしマイナス金利政策だけでは現預金をそれらに近い性質のものに転換して価値を保全するだけに終わるでしょうから、多くの人が景気の良さを感じるというところまでは行かないでしょう。肝要なことは流動性の高いものに広範囲に課税をするということです。

この政策が経済を上向かせ、結果的に財政再建も達成することになるでしょう。財政再建はあくまで結果であって目標ではありません。流動性に課税するということは事実上法人や個人の富裕層の保有資産に偏って徴税することになりますから、政治的に困難です。富裕層とは流動性の高いものをたくさん持っているからこそ富裕層足りえます。

富裕層課税が出来ないからこそ膨らみ続ける債務残高、成長しない経済、広がるワーキングプア問題が並行して社会に横たわっています。直間比率の是正、老後の安心を掛け声に財政再建、財政維持を目標として流動性の低いものに課税しても無駄どころか有害です。課税対象にしている実物(≒流動性の低いもの)への支出を萎縮させますから、財政再建はかえって困難になります。


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