昨今話題のMMTとマクロ政策論争に関する雑感2

前回 https://note.mu/774774774/n/n72469c44bd2e

名目GDP、そして実質GDPがともに芳しい成長を見せない経済の停滞と、政府債務残高の上昇は見方を変えれば国民の政府債務を裏面にとった預金の増加とも言えます。はたしてこれは望ましいのでしょうか?GDP比での政府債務残高が小さかった昭和時代のほうが経済状態が健全であったことは統計的経験的事実として幅広く同意いただけると思います。復興需要の追い風はあったものの格差の拡大を伴わない経済成長、所得向上が日本を含めた所謂西側諸国で見られました。家計・法人・個人の借入バランスでは企業の借入が恒常的に旺盛で、個人は与えられた給料を預金として積み増す、政府は企業の借入とそれを元手にした設備投資、雇用が旺盛なことを受けて借入は少なくという健全な状況が実現しました。以下の内閣府のレポートに企業が貯蓄セクターに転じていく長期推移を示したグラフがあります。日本経済の本格的な失速と企業が貯蓄超過に転ずるタイミングが似ていることが見て取れます。


https://https://www5.cao.go.jp/keizai3/2017/0118nk/n17_3_1.html/keizai3/2017/0118nk/img/img/n17_3_1_4z.gif

GDP比政府債務残高の拡大無しでの経済の安定を支えていた大きな要因が二度の世界大戦期を通して実施された累進的な税制や国際資本移動規制等なのではないかと思われます。

お金が流れないような税制、つまり所得税、法人税を低めて消費税や社会保険料を多く取るような税制を構築している以上、企業には投資を拡大する動機は生まれません。雇用不安から先行きの見通しの悪い人が多く、企業が投資しても市場に旺盛な需要がなく回収が見込めないですし、そもそも好況不況に関わらず可能な限りお金を貯め込むほうが得をする制度になっているのですから。

現状を放置したまま政府支出を拡大したとしても経済の停滞を脱することは出来ないのではないか。流通速度を高めるような制度構築が重要なのであって、今の財政状況において財政拡大余地があるだとか無いだとかは主要な論点ではないと考えます。

もちろん現実的には個人の富裕層やグローバル大企業等のカネ余りセクターへの負担増の要請が事実上不可能だから、枝葉で小手先でどうするかということに論点が移行してしまうのですが、

「お金を使わず貯め込むこと=貨幣の流通速度を減じる行為へのペナルティの実現」ができない限り、少なくとも大勢の人たちが肯定評価するような望ましい形での経済の復活は難しいのではないでしょうか。それ以外は些末な問題だと感じます。

最後にまとめます。

国債残高対GDP比は下がったほうが良い(自然に下がるような状況こそ望ましい)

国債発行による預金の提供は民間経済を安定化させてはいるが、小康状態を脱するには至らない

経済を強く押し出すためにはお金やそれに近い株式や土地などに対する累進的な負担制度の構築により、実体のある生産設備や人員を買うことが合理的になる状態を喚起することが最も重要なのではないかと考えます

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