金曜日の幻
ここ最近しばらく何も書くことができず、気がつけば今年2月でnoteを始めて2年目になっており、そこから更に呆然と日々を過ごしていたらあっという間に桜の季節になっていた。
春はなんとなく悲しい気持ちになる日が多い。
母が突然倒れたのも春だったし、父がいなくなったのも春だった。
卒業式では名前を間違えられたし、思いの外短い前髪に仕上がってしまったあの日も春だった。
私は、春が嫌いかもしれない。
だって、このまま書き進めていると春に対する文句しか出てきそうにない。
◆
今朝は全く起き上がることができなかった。
夢と現実を行ったり来たり、めまぐるしく行き来する意識の中で、なぜか私は1匹の黒い子犬を目の前にしてただ呆然と立ち尽くしていたのだった。
その子犬は時間が経つにしたがって少しずつ衰弱していき、私が『そこ』へ行った時には今にも消えてしまいそうな姿で横たわっていた。
そして、じっと私を見つめてくるのだ。
悲しそうな目で、心配しているような様子で、じっと私をみつめてくるのだ。
私はその視線に少し怖くなりながら、大丈夫だよと声をかけ、頭をなでて、慌てて動物病院へと電話をかけた
と、思った。
むくり、と身体を起こすとそこは私の布団で
右手にはスマホを持っていて
テレビからは午後のワイドショーが流れていて
黒い子犬なんてここにはいなくて
今日は3月26日で
私が見たものは全て、金曜日の幻だった。
◆
すがすがしさなんて欠片も無い、ずっしりと広がる不安から始まった金曜日の午後。
「私は、春が嫌いかもしれない。」
おもわず吐き出しかけた春に対する文句と、永遠に広がってしまいそうな不安を全部遠くへ押し込めて。
私は久しぶりにnoteを1ページ、人差し指でそっとめくったのだった。
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