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凄まじい筋トレが出来るバイト②役に立った古武術介護講習 #仕事の思い出

昔、新宿の住友三角ビルの朝日カルチャーセンターで開催された『古武術介護』のワークショップを受けに行った。
(別の日にも、講習を受けた気がするが記録がないし、記憶も曖昧)

講座では、古武術の身体の操作方法を、実践を交えて学んだ。

あれから今日まで、古武術の身体操作法を使い続けている。使えば使うほど慣れて、無理な身体の動かし方をしなくなる。

特に『呼吸の仕方』は要であった。
身体の動きに合わせて吸う・吐くを使い分ける。

鬼滅の刃でも『⚪︎⚪︎の呼吸!』とかいうけれど、日常生活でも、呼吸の仕方に気をつけるだけで、疲労の軽減や怪我の予防に役立つ。

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[2009年に書いた日記から、そのまま転記]

『身体革命 - 武術からの気づき』
講師:甲野 善紀(コウノ ヨシノリ)氏

古武術研究家として有名な先生。

あらゆる武術を研究している人で、トップアスリートや、日本代表の柔道選手にも指導をしている人だ。テレビにも何度も出ているので、見たこと人も多いはず。

噂のとおり、2本歯の高下駄を履いて、竹刀3本持って現れた。服装は、剣道の胴着だ。


最初の話は、剣道の剣の持ち方。

実は、剣道の剣の持ち方は侍の刀の持ち方とは違うんだそうだ。

剣道の持ち方は、右手、左手を離して持つ。左手は剣の下のほうにくる。

そうではなく、両の手を近づけて持つと、まるで剣さばきが変わってくる。その実演をしてくれた。

生徒で、武術の経験のある、ゴッツイ男の人が相手をした。

先生が「この位置で、撥ねてください」と指示を出す。

男性は最初は、剣道の構えをした先生の剣さばきを撥ね飛ばす。

パーン、パーン・・・・。すべて上手に撥ね返すことができている。

が、先生が古来の刀の持ち方をして、剣を振り上げたところ、あまりに速すぎて、一つも撥ね返すことができない!さらに、撥ね返せない瞬間に次の動作に移り、見事、相手の面をとることができる体勢に瞬時にいきついた。

あらゆる剣道の道場で、師範をうならせてきた一流の剣さばき。

うわ~、想像以上に凄い!


その次は、剣を置いて、体の使い方についての解説が始まった。

今日の講座の生徒は、3分の1は格闘家、武術家。

あとはスポーツ選手、介護関係の人、多種多様な一般人だった。

見るからにレスラーという体格の男性が、顔を真っ赤にして、血管浮き立たせて、全力で先生の手を固定する。

しかし、先生はお話しながら、背中をすぅーと落としていって、 自然にするりと、体を脱出させてしまう。何度やっても、その通り。

次に立ち姿勢で腕を固定される。が、これまた鰻のようにスルリと抜けてしまう。

先生曰く
「一人でいばってリーダーシップとる人にはついていきたくないってのは、体も一緒。 手を挙げる動作も全身からの同意を得てやるようにする。 すると上手いこといく」

全身から同意を得て、それでもって行動する。

そんな感じで動くと、まるで動きが変わってくるのだそうだ。



次は、『古武術介護』

寝たきりの人を起こす方法を2種類と、寝返りさせる方法を実技で見せてもらった。

おお、あれが”秘儀 キツネこんこんの手!”かあ。

詳しくは本を参照のこと。私も持っている。タイトルは、「古武術で毎日がラクラク!」

その後、ワークショップ参加者と実技演習をした。


最後は、また武術の話に戻って日本代表の柔道選手と対戦したときのお話を聞いた。

あまりにあっけなく選手が倒れてしまったので、先生はビックリしたそうだ。

柔道関係者はみんな、古武術の体さばきを見て仰天だったそうだ。

「まったく次元の違う武術で、こんなのを見たのも知ったのも初めてだ!」と言われたとのこと。

何度か組み手が行われた。先生は余裕で全ての攻撃をかわす。

相手と対戦するときは相手を意識せず 自分本位な行動に出ることが コツだそうだ。

相手を相手と思うから、力んでしまう。相手を認めず、自分のやりたい動作をする。

するとうまくいく。

相手と対戦中に、相手にお構いなしに、「俺はそっちに歩いて行きたいんだ」 みたいな姿勢で対峙すると、相手はなぜか手も足もでない。

相手と対峙するなら、 相手の肩のほうなど(狙い目)を見るのと同時に、自分の右後方、左後方を 意識して注意を分散する。それでいて動くと相手に動作を読まれることなく、相手の予期しない攻撃をすることができるそうだ。

タイマンは、『主構造(自分の意思、相手にも伝わりやすい傾向)』対『主構造』の戦い。古武術は『従構造(ジェスチャーのようなわかりずらいけど、相手にとらえられる 信号となる傾向性)をも捨てた』戦いだという。

後者のほうは予想がつけられず、技術的にも相当高度だ。

練り上げられた身体感覚がなくてはできない。

先生の姿勢はまさしく、100年前の日本人の姿勢と同じなのだろう。背は張っていなくて、首はちょっと前かがみだった。


最後に、”現代と昔の日本人との決定的な違い”についての話を聞いた。

現代の日本人に欠けているものは生身の体験である。

生身の体験がないと、人は自分の限界がわからない。もちろん、相手の限界も わからない。


とにかく、2時間たっぷり、おそらく日本で、この人しかできないであろう 素晴らしい技を見せてもらった!

甲野先生は武術研究家だが、ユーモアたっぷりで、面白い先生だった。



ちなみに『古武術介護』を先に提唱したのは、岡田氏なんだそうだ。


何はともあれ、この時に教えてもらった古武術介護の身体操作法のおかげで、500社で働いても、腰が一度もやられなかったのである。


人生を通して、役に立ったスキルだった。



お勧めの書籍: 武術と心に関する面白い本


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