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国立ハンセン病資料館

今日、初めて国立ハンセン病資料館を訪れた。故郷の岡山には、療養所の長島愛生園がある。行ったことはないが、高校の授業でハンセン病をテーマにした映画「あん」を観ることもあり、少しは知っているつもりだった。しかし、過信にすぎなかった。

はじめは、国にこんな暗い歴史があったのかと興味深く展示を読んだ。しかし、資料館の奥へ歩みを進めるほど、同じ人間がこんなことを考え、実行できるのかと衝撃だった。共感性の強い私は、途中で気分が悪くなってしまった。ずっと訪れてみたいアウシュビッツ収容所なんて、きっと足を踏み入れるだけで精一杯だろう。

ハンセン病は中世からあり、隔離が始まったのは明治以降という歴史の長さや、療養所の劣悪な環境を学んだ。監禁室があったことに驚愕した。理不尽極まりない。劣悪な環境下の療養所を変えるために運動を起こしただけで、犯罪と見なされ、罰として監禁されるのだ。また、患者が逃亡しないように、また患者ではない、外で暮らす者の視界に入らないように、レンガや植物を使って、隠していたらしい。人権どころか、この世に存在することすら許されなかったのだ。

展示を見て、新型コロナウイルスが流行したばかりのときを思い出した。いつの時代も、未知の病気に対する恐怖は変わらない。人間は弱い生き物だから、恐怖を攻撃に変えてしまう。対面していないSNSで過激になるのだ。見た目が変化するハンセン病は、もっとひどかっただろうと容易に想像できた。しかも、信じがたいことに国が強制隔離政策を行っていた。国が絶対に正しいとは限らない。

岡山出身でなかったら、国立ハンセン病資料館を訪ねなかっただろう。しかし、多くの人に行ってほしい。伝え続けなければならない歴史だ。今だからこそ、自分達の国を客観的に見つめたい。


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