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結婚のかたち親子のかたち家族のかたち

昨日のNHKクローズアップ現代+「それでも子どもをもちたい広がるSNS精子提供」を視聴して思ったことなど。率直に。長々と。

番組では、精子提供を受け子育てをする女性の同性カップルや、彼女らのために精子を提供する男性。男性不信で結婚を諦めたけど家庭を持つという夢は捨てきれず「選択的シングルマザー」として生きる覚悟をする女性について紹介されていた。どの人からも、「子どもを持つこと」が大きな希望であり、救いだという切実な思いがひしひしと伝わってきた。自分の人生について考え抜き、向き合い尽くしてたどり着いた結論だからなのかな。


現在の制度では、病院で精子提供を受けることができるのは「配偶者に無精子症の診断がある既婚女性」に限定されるらしい。女性の同性カップルや選択的シングルマザーが精子提供を受けようとする場合、SNSで精子提供を行う男性と知り合う他に手段はないという。相手の男性に遺伝性の持病があったら?性病患者だったら?パッと思いつくだけでもリスクだらけの恐ろしい取り引きに思えたが、彼女らにとってはもう他に選択肢がないのだ。女性の「また諦めなきゃいけないんだと思った」という言葉から、これまでの人生で性的マイノリティ故に数多くのことを諦めてきたという背景がうかがえたし、世間に失望する気持ちが伝わってきた。

SNSで精子提供をする男性と知り合うといっても、信頼できる人に当たるまでは長い道のりだったという。具体的な精子の受け渡しは針のない注射器を介して行われるらしいが、性交渉を持ちかけられたり、「目の前で注入するところを見たい」とかいう気持ち悪い要求をしてくる人もいるらしい。

番組では、驚くことに、先に紹介した女性へ実際に精子提供をした男性も登場した。提供しっぱなしではなく、提供元としてまだ女性と繋がっている事実に勝手に安心した。その男性はゲイで、年齢を重ねるとともに自分が生きた証を残したいという気持ちが芽生え、精子提供という結論に至ったらしい。ゲイの男性の精子がレズビアンの女性へ受け渡されるのは性被害の心配もないし、win-winだし、子どもの成長を陰ながら見守る男性の姿があると思うと素敵な話にも思えた。少し歪かもしれないけど、2人の女性と子ども、少し離れたところに男性が1人、という家族の形を想像させた。もちろん信頼関係あってのことだと思うし、割り切りたい女性にとっては煩わしさしかないだろうけど、医療で精子提供を受けられない以上、まともな人と出会えたことが不幸中の幸いと思うしかないのかもしれない。

50人以上に精子提供を行う28歳の男性も顔出しで登場した。普通にモテそうなルックスだったけど、仕事で色々とあって家庭を持つことに対して諦めムードになり始めたらしい。彼は精子提供について学び、性病等の検査を行ったうえで、交通費等の実費のみで精子提供を行っているというから驚きだ。番組では、ホテルの一室で行われる実際のやりとりも放送されたが、割と衝撃というか、生々しかった。ホテルで待ち合わせること自体、特に性的マイノリティの方にとっては相当な信頼関係がないと難しいことだと思う。事前にオンラインでの面談を重ね、信頼関係を構築する手間を考えると男性にとってのメリットは何だろうと不思議に思う。「トイレお借りします」といって20分、容器が入った紙袋と共に出てくる男性、それを受け取り「これは私たちの希望です」と話す女性、全てが私の日常からかけ離れすぎていた。目の前で採取するのは、正真正銘自分のもので、かつ新鮮であることの証明なんだろう。(想像だけど)簡単にはできないことだと思ったし、プロ意識を感じた。同時に、これで生命が誕生すると思うと、なんだか神の領域を見ているようだった。

この話で思い出した小説が、三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」。この小説にも子どもを望む女性の同性カップルが登場するが、彼女らの場合は、信頼できる身近な男性との偽装結婚→不妊治療のふりして体外受精で妊娠→離婚という方法をとっている。見ず知らずの第三者に頼むより、この小説のように知り合いに頼んだ方がリスクは少なくて済みそうな気がする。あくまでも医療での妊娠に拘らなければ偽装結婚する必要はないし。現実は小説のようにはいかないということなんだろう。ただ男性同士のカップルの場合はこの方法しかないように思える。

「選択的シングルマザー」については割と身近にも感じた。中学の同級生にも結婚はしたくないけど子育てはしたいという友達はいたし、自分の人生を考えても、例えば夫が亡くなったとして、子どもがいれば「家庭」は残るからいいなとは思う。最近は子育てをしない夫婦も珍しくなく、私もかなりの慎重派。このままでは急激に少子高齢化が進んでしまうので、子育てをしたい人にはどんどん子育てをしてほしいと思う。(個人的に人口が減少するのは賛成なんだけども)ただその一方、ひとりで妊娠して子育てすることの苦労や、生まれた子どもの人生を思うと、何も言えなくなる。

「選択的子無し」は本人の勝手だと思うけど、生まれてくる子どもは親を選ぶことができない。大人たちの間で「自分らしい生き方」を選ぶ自由が広がる影で、生まれた環境に苦労する子どもは増えているような気がする。これは世間に「平凡な家庭」という概念があり続ける以上は消えない問題だと思う。


この番組は夫と見ていたんだけど、お互いの反応が違い過ぎて興味深かった。私たち夫婦は同じ自治体で行政の仕事はしているけれど、私は理系出身でSDGsを含む政策に関わった期間が長いのに対し、夫は法学部出身で戸籍業務の担当が長い。そういった背景からか、夫は何かとつけて「現在の法律」に照らして問題点を指摘する。例えば、50人に精子提供をした彼のことを夫は「認知しているなら、相続の時に大変な思いをする」とか「認知していないとしたら、彼の子ども同士が結婚して子どもを産む可能性が残る」とかまずそういう心配をする。精子提供についての法整備が間に合っていないことがそもそもの問題なのに、議論のスタート地点にも立てていないというか、ちょっとお役所っぽくて嫌だなと思った。私だったら、まず異母兄弟が結婚して子どもを産むリスクはどれくらいなんだろうとか、同じ男性から何人くらい兄弟を誕生させていいものなんだろうと考えるけどな。実際夫はLGBTQのQの存在を昨日初めて知ったくらいの温度感。トランスジェンダーの方が氏名を変更し、性別を変更する手続きを実際に担当したこともあるし、私なんかよりもずっと、目の前で当事者に関わってきたのに。それを戸籍に記載するという仕事をしていたからこそ、彼の中ではあくまでも「例外」という認識になってしまったのかな。など悲しい気持ちになった。


今の法律上、同性は結婚できない。夫婦別姓は認められない。事実婚を選ぶ人もいる。結婚した男女にしか精子提供はできないし、特別養子縁組の審査も厳しく簡単には里親にはなれない。結婚しても子どもを産まない夫婦も多い。遺伝子的な両親と育ての親は必ずしも同じである必要はないし、育ての親が男女ふたりである必要もない。みんなで子育てしてもいいし、ひとりで子育てしてもいい。親と子だけが家族じゃない。様々な家族の姿が世間で認められ始めた今、これからの法律が認める家族のかたちってどんなだろう。これからも注目していきたい。






それでも子どもをもちたい広がるSNS精子提供
「#精子提供します」。いまSNS上に、精子を無償で提供するというアカウントがあふれている。提供者や依頼者を取材すると、「子どもをもちたい」と願いながらも、現在の制度では病院で精子提供を受けられない、同性カップルや選択的シングルマザーなど、多様化する家族の実態が浮き彫りになってきた。一方で、医学的なリスクや、提供で生まれた子どもの権利をどう守るのかという課題も。精子提供を受ける女性の葛藤を描いた「夏物語」で家族の在り方を問う、芥川賞作家の川上未映子さんとともに考える。




こちらの記事を読むと問題の複雑さがよくわかる。。。むー。。。


※勉強不足故に間違った解釈をしていたり、不快な思いをさせてしまう部分があるかもしれません。番組を視聴した感想を素直に綴ったものですので、どうかお許しください。

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