茄子から、お金は生えません。

群馬弁で「返す」を「なす」という。
恐らく「無く」。ナッシング。
「有る」ものが「無くなる」。「有」に対しの「無」からだ。
「形あるものは壊れる(なくなる)」
ソクラテス(だったっけ)の心境である。
関連した面白話がある。たまたま電車で聞いた。

某人が、友人から借金を申し込まれた。渋っていると、仕切りに連呼。
「なすからかねかせ、なすからかね、なすからかね……」
(返すから、お金貸して)
当然の意味であるけれど、某人は頭の中でこう変換。
「茄子から金、茄子から金、茄子から金、茄子から、茄子から……」
(茄子から金?)
(欲する余りに、おかしくなったか)(哀れよのぅ)
(気の毒に)
半ば本気で思ったそうである。
一般に、要求を強める時、群馬県人は、口調が強まる。
「なすからかねかせ、なすからかね、なすからかね……」

メチャクチャな早口に、一層、思いを強くしたそうだ。

「言葉を正しく使いましょう」
「キチンとした日本語を」
言われちゃいるけど、基本的なものはどうしようもない。
「言葉」より「方言を正しく理解しましょう、使いましょう」
にした方が、いい。
茄子から、お金は生えません。
                            <了>

#創作大賞2023

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