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食いしん坊たちのわくわく待ち——シュトレンとそのレシピ #エッセイ #レシピ

「欧米のクリスマスと日本のお正月は似ている」とよく言われます。

一年で一番大きな祭りであること、家族・親族と集まって過ごす日であること、宗教的な行為を伴う(ミサに行ったり、神社に行ったりする)行事であること、長い休暇があること、その時用の特別なご馳走があることなどなど。確かに似ています。

しかし、思うに、この二つは準備期間において、大きな違いがある
日本でお正月を迎える準備として、まず思い浮かぶのは大掃除。ほかには、お節づくりや買い出し、飾りつけ、年賀状書きなど。年の瀬にあわただしく、新年をすがすがしく楽しく迎えるための準備をします。準備で楽しいことと言えば、「も~い~くつ寝ると~お正月~」などと歌うことと、準備とはそれほど関係ないけれど、あらゆる場で行われる忘年会くらいでしょうか。

ところがドスコイ、欧米の、というか、今回の主役はシュトレンなので、ドイツの場合、この「クリスマスへの準備」に「食べながら待つ」ことが入るのです。なんてこった。
もちろん、飾りつけや買い出し、カード書きやプレゼントのための時間など、本格的に準備すると、とても忙しいとは聞くのですが、それでも、何だか「食べることで準備する」という発想は、すごく根本から違う気がします。

日本でもだいぶ定着したシュトレン、またはシュトーレン(高地ドイツ語のシュトーレンという発音が日本で定着したそうです)は、ドライフルーツと砂糖、バターたっぷりの、日持ちする甘いパンです。(ケーキではない!)
クリスマスを迎えるための心の準備期間(=アドヴェント期間)である、クリスマスの4週間前から少しずつ食べるパンで、薄くスライスして食べながら、クリスマスの到来を待ちます。

今でこそ、物質的に豊かではありますが、バターや砂糖、ドライフルーツなんてものはもともと高価(&高カロリー・・・)で、特別な食材。それだけの食材を使うに値する、大切な期間がこのアドヴェント期間であるのでしょう。けれども、わたしは思ってしまう。クリスマスにご馳走が待っているのに、準備の間もおいしく食べるなんて、なんて食いしん坊なんだろう!うらやましい!と。

前置きが長くなりましたが、シュトレンを作ってみました。
ホームベーカリー使って、ほどよく簡単に、でもほどよく本格的に作れます。お菓子やパンづくりに慣れている方なら、わりと簡単かと。
もともと家庭料理というか、家庭の味があるような食べ物なので、スパイスやドライフルーツなんかは、あまり気張らず、手に入りやすい材料でどうぞ。

ベースは、「お料理ダイスキ!ニューヨークおうちごはん」さんのレシピです。材料をちょっとシンプルにして、ほぼ半量にしただけ。

この方、ニューヨーク在住、ドイツ系の旦那さんがいる日本の方で、サイトでは「カロリーは美味しさ!うまいもんは高カロリーに決まってんだろ!」といわんばかりに、本場ばりのカロリーオン・レシピを紹介してくれています。でも、いわゆる「超・本場」レシピより甘さも油分も控えめで、日本人の口に合います。美味しいですよ。

<材料:小型シュトレン2本分> 
●≪生地≫
薄力粉 110g
強力粉 110g
アーモンドプードル 30g
ドライイースト 6g
バター 100g
卵黄 1個
砂糖 35g
はちみつ おおさじ1/2
牛乳 90cc
シナモン、オールスパイス、ナツメグ、カルダモン、クローブ 各こさじ1/4くらい
●≪ドライフルーツ≫ ※
サルタナレーズン 100g
オレンジピール 15g
ドライアップル 15g
ウイスキー 50㏄ ※
●≪仕上げ用≫
バター 50g 
ウイスキー 50㏄(好みで増減してください)
粉砂糖 約70g

※ドライフルーツ、お酒が染みるもので、生地に混ぜやすい大きさにしてあれば、なんでもいいと思います。レモンピールや、クランベリーなど。今回は、大量にあったドライアップルを入れています。

※ここではウイスキーを使いましたが、お好みの洋酒でどうぞ。ラム酒、ブランデー、オレンジリキュールなど。

<簡単な作り方説明>
1.(前日)ドライフルーツを酒に漬ける。
2.生地をホームベーカリーでこねる
3.生地を一次発酵させる。2倍くらいに膨らめばOK。
4.生地にフルーツを混ぜ込み、成形。二次発酵させ、1.5倍くらいに膨らめばOK。
5.170度に温めたオーブンで40-50分ほど焼く。
6.熱いうちにラム酒→溶かしバターをしみこませ、半量の粉砂糖をふりかける。
7.翌日以降に、残りの粉砂糖を振りかける。最低でも2日程度寝かせたらできあがり。

<ちょっと詳しい作り方説明>
1.前日に、≪ドライフルーツ≫の用意をします。フルーツの大きさをレーズン大に切り揃えたら、ボールに入れる。そこにお湯を注ぎ、1分ほど放置。
主にフルーツのオイルコーティングを取るためですが、汚れも取れるのでノンオイルのフルーツも同様にどうぞ。お湯から上げて水気を取ったら、ウイスキーをかけて浸しておきます。

2.≪生地≫の材料をすべてホームベーカリーに入れ、こねる。機械まかせなので、特にコツはないですが、強いて言えば、バターを程よい大きさに切ってから入れることと、卵黄と牛乳を混ぜ合わせてから投入することでしょうか。これを怠ると、生地がまざらなくなったり、卵だけが高温で固まってしまったりします(経験者は語る)。

この≪生地≫材料だけ見ていると、ブリオッシュの材料と似たようなものなんですよね。なので、ここまでであれば全く日持ちしないパンなんですが、これにドライフルーツを練り込み、バター&砂糖をかけることで日持ちするというのだから、料理って面白い。(あ、ドライイーストとスパイス一個撮り忘れてる。)

3.生地を一次発酵させる。引用元のレシピに詳しいですが、本場では、寒い玄関などの低温において生地を一晩かけて発酵させるものだそうです。高温で発酵させると、生地の味が出る前に、発酵がすすんじゃうんだとか。とりあえず生地が2倍くらいに膨らめばOK。私は15度くらいの部屋に3時間ほど放置していました。元のレシピよりドライイーストの量を少なくした分、余裕をもって膨らませたかったので、長めです。

4.≪ドライフルーツ≫を混ぜ込む。生地を2等分して打ち粉をした台の上で伸ばす。水気を切ったフルーツを端をあけた状態でまんべんなく散らす。

下の写真のように、4辺から折りたたみ、また伸ばす。これを4回程度繰り返すと、だいたい生地全体にドライフルーツが混ざる。

コッペパンのような形に成形し、包丁の背で真ん中に切れ目を入れる。
二次発酵させ、1.5倍くらいに膨らめばOK。わたしはオーブンの40度コースで、ラップをかけて40分くらい発酵させました。一緒に水を張ったコップを入れると生地の表面が乾燥しづらくなって良いです。

(一個がコッペパンじゃなくて、雪だるま形になっているな。)

5.170度に温めたオーブンで40-50分ほど焼く。

(2次発酵でのふくらみ&焼くことによるふくらみを経ると、これだけ大きく仕上がるのです。でも、思ったより横に膨らんで、ぽっちゃり体形に仕上がっちゃいました。何かを象徴しているように思えてならない。)

6.熱いうちに≪仕上げ用≫のラム酒→溶かしバターを、刷毛でたっぷり塗ってしみこませ、半量の粉砂糖をふりかける。

カロリー・オン!あぁ怖い。けれども、けちるとおいしくないし、日持ちさせるためにもだいじな工程です。
罪悪感が大きくなってきたら、「毎日ひときれずつ食べるんだ、だから一度にカロリー取るわけじゃないんだ」と自分に言い聞かせましょう。

7.翌日以降に、残りの粉砂糖を振りかけます。熱いうちにぜんぶかけると、砂糖がとけちゃうので、完全に冷めた翌日に行います。最低でも2日程度寝かせたらできあがり。寝かせることで味が変化していきます。おいしい~
保存はラップをしっかり巻きつけて、寒い部屋の室温で。日本の気候で4週間もたせるのは難しいと思うので、ほどよくお早めに。

ちなみに、切り方は、真ん中から半分に切って食べる量をスライスするのが正統派。2つのシュトレンの断面同士をくっつけて保存すると、断面が乾かず、長持ちさせられるそうです。でも、なんか、「食べた量をごまかせる」食べ方っていうあたりが、食いしん坊っぽいな!!

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「準備期間も楽しむ」っていう発想、いいなって思うんですよね。
「あとあと楽しむために、今を犠牲にする」っていうんじゃなくて、「今も楽しむし、本番も楽しむ」っていう発想。時間を大切に、豊かに使っている気がします。
思うに、noteとかを書いたりするのも、特別な「本番」は存在しないけれど、そういう発想に少し似ている。日々を大切に過ごせるように、小さなできごとを少しきちんとした記憶にとどめるために、書いていたりする。

もちろん、過ぎゆくときの、一分一秒を、懸命に何かに打ち込むことは大切。特に、年末って何かと忙しいですし。
ただ、そういう「打ち込み時間」から少し手が放せるタイミングになったら、シュトレン作って、食いしん坊たちに思いを馳せながら、わくわく時間を過ごしてみるのも、いいかなと思います。

ついでに、どうやったら大掃除をわくわく楽しみしながらできるんだろうか・・・「大掃除お菓子」とかあれば、世の中楽しくなる!かも?

*参考
注文菓子工房 エルフェンHP「粉雪まとうシュトレン(Stollen)の研究」
長野のドイツパン屋さんのHP。ネットでざっと調べた中で、一番詳しくシュトレンやアドヴェントについて紹介されています。

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