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どうせ いつかは みんな逝くけど【short story】

「可愛いからウチに来なよ」

「本当に君が欲しいんだ」

「もう食べてしまいたいくらいだよ」

そんな事を、ある人もこの人も言い
私を抱いて時には顔をくっつけ合った。

初めこそ嬉しかった。
この人が本当に愛してくれるんじゃないかと
その抱きしめてくれる手に期待もしたけど
違った。
ただわたしの見た目だったり
自分の寂しさからだったり
本当の愛じゃない言葉や手はだんだん冷たくなっていく。
私が嘘を見抜くのは早かった。


時間はさらに残酷で、
私が若くないと定義付けられると
今までチヤホヤしていた連中は
私の事なんて見向きもしなくなった。


ツンとして、すらりと伸びた手足より
無知で誰にでもついて行く無知な子を
好んで抱いた。

えぇ、私だって無知で誰にでもシッポを振って
着いて行きましたよ。
そんな時もありました。

もう懐かしいくらい昔にね。 


本音を言えば
寂しいのは大嫌い。
私なんて見向きもせずに前を通り過ぎる人達に
幾多となくがっかりした事だろう。

出来る事ならもう一度
誰かの温かい手に抱かれたい。


昨日も今日もガラス越しに
ただ目の前にある世界を眺めていた私を
ある日その人は見つけてくれた。


周りがやめとけよと言うのに
私が良いんだと
私をガラス細工か何かの様に
その人の手はそっと扱った。

ただ可愛い可愛いと
雑に扱われた事しか無い私は
戸惑いながら
じっとその人の顔を見た。
陽に焼けて、大きな口と目で笑う人だった。

その人は私に名前をくれた。
チリチリと良い音色のする鈴の首輪もくれた。
茶色の私にターコイズブルーのそれはよく似合って素敵。


「おいで、スィーティ」
私を呼ぶ声と
その人の大きな手が私を包む。


これが永遠に続かない事は
私にだってわかる。
けれど、それでも良いの。


その人の腕に抱かれていると
この世の終わりにも
実は続きがある様にさえ思えるから。


どうせいつかはみんな逝く。
きっと猫の私が先。
それが良いの。
そうであって欲しいと願う。

だって私の方が寂しがり屋なんだもの。
最後までその人の笑った顔が見ていたい。それが私の我儘だって構わないの。


我儘なのは猫の特権なんですってね。
その人が教えてくれた。
我儘で良いんだよってね。
スィーティのままが良いんだよと抱きしめてくれる度に私は、こそばゆくて、ぶるっと震えてしまう。


だから神様お願い。


この時間が1秒でも長くあります様に。
この記憶が私の中にたくさん残ります様に。


それから神様、これが1番の願いなの。

その人の笑顔が、そのいつかまで
ずっとずっと続きますように。



私はチリチリと鈴を鳴らして外を見た。
ガラスに映る私は美しくそして確かに幸せだった。
小さな猫の願いがどうか届きます様に。
私は、星に祈る事が出来る自分が嬉しかった。


その人は私に名前をくれた。
ターコイズブルーの首輪もくれた。
それに祈る幸せと言うものもくれた。



どうせいつかはみんな逝くけど
その人に会えた私の世界は
短くても輝かしいものに違いない。
私は小さな猫だけど
その人を想う気持ちはこのガラス窓より大きくて
あの木より遥かに高い事を誓います。




懲りずにまた小説を書きました。
小説と言うのか
詩というのか…。

私をご存知の方は、
誰がモデルかわかっちゃうなと思いつつ…。

七夕の日に私の願い事として( ´ ▽ ` )✨
読んで頂き、ありがとうございます。



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