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朝鮮学校のいまと子どもの権利の報道をめぐって、堀の見解

本日、「堀潤モーニングFLAG」朝鮮学校報道を問う有志の会、早尾貴紀さん、(東京経済大学教員)、山本かほりさん(愛知県立大学教員)、板垣竜太(同志社大学教員)さんが、番組内容に関しての公開質問状をSNSで発信されていました。内容を拝見したところ、私が語った内容が一言も引用されず、誤った内容になっておりましたので、訂正させていただき、併せて私の見解を述べたいと思います。

公開質問状の中で、このような一文がありました。

結局、番組の中で堀氏はコメンテーターらの発言に異論を挟むことなく同コーナーを終了(中略)放送内で堀潤氏はこのコメントに対し一切の訂正や批判を加えておらず、コメンテーターらの発言を容認してしまったことも問題であった

「TOKYO MXへの公開質問状」より

SNSで拡散された番組の切り抜き動画や、番組をご覧になった方がコメンテーターの皆さんのコメント部分を抜粋したメモや記事などが拡散されておりましたので、今、この時点でもそのように感じていらっしゃる方もいるであろうことは理解できます。

実は番組では、前半のコメンテーターの皆さんとのやりとりを受け、存続が危ぶまれている朝鮮学校への支援は本当に国や自治体が判断したように見直されるべきものなのか、それとも別の見方があるのか、コメンテーターや視聴者の皆さんと共にさらに考えるため、堀が訪問した墨田区にある東京朝鮮第五初中級学校の窮状と先生へのインタビューなどを放送しました。

続きがあるのです。

映像の中では、生徒たちが減少する中、先生たちが工夫をしながら朝鮮の母語国などの教育を続けていることや、そうした様子を地域の人たちにも知ってもらおうと学校公開での展示を行なっていること、さらに老朽化で壁や天井、階段の一部が破損し、厳しい財政状況の中、子どもたちに安心して学んでもらえるよう試行錯誤を重ねてきたこと、朝鮮学校の子どもも、日本の子どもも共に健やかにのびのびと学んでいけるような社会であって欲しいという先生の切実な想いなどを伝えました。

映像が終わった後にスタジオでは、父兄の方が教えて下さった「朝鮮学校があることの意義」を念頭に、朝鮮学校があることで在日コリアンの皆さんとの交流や相互理解の機会が得られ、異文化共生の方法を模索することができる、朝鮮学校の先生方も地域と共にそうした学校の在り方を模索しており、その姿勢に共感する、こうした取り組みこそ一人一人が大切にしていくべきではありませんか?と私の見解を投げかけました。

あらためて、放送の内容を書き起こしたのでここに共有いたします。

堀)
「今日ピックアップするニュースはこちらです。「朝鮮学校のいまと子どもの権利、と題しました。ちょうど先週土曜日ですね、学校公開というのが行われまして、墨田区にある朝鮮学校の皆さんが授業を公開して、そのあとに地域の皆さんを招いて色々ディスカッションしたり、お互いに思っていることを共有する時間がありました。一方、朝鮮学校各地域の学校、厳しい状況です。
国や行政の対応そのものが拉致問題以降は厳しい対応になっています。
見ていきましょう、こちら。2010年、高校無償化の対象からは除外しました、国です。
一方東京都、私立の外国人学校を対象とした補助金「都民の理解が得られない」と文言をつけて、都内の朝鮮学校10校には支給しないということを決定しています。
一方、今年2月には朝鮮学校の支援団体の皆さん、もちろん日本人も含まれている団体です。
東京都こども基本条例に反するのではと等しくこども達は同じように教育を受けられる権利がありますよね、ということから都に対して補助金の支給を求める動きもありました。
基本的にはなかなか厳しい経営状況の中、制度として、こども達が国家間の対立、政治的な課題に果たして巻き込んでいいのかどうか、ひとつの論だと思うんですよね。まずこの点についてお伺いしたいなと思います。Aさんはどんなことを感じますか?」

コメンテーターA)
「そもそも朝鮮学校に対しての補助金がなくなることが、子ども基本条例に反するのか、という考え方があると思う。というのはこれはあくまで、朝鮮学校に対する補助金なわけですよ。子どもたちに直接補助ではないわけですよね。しかも基本的には公立の小学校・中学校がありますよ、在日朝鮮の人はみんな朝鮮学校に通わせてるわけじゃない、そういう公立学校に通わせてる人たちもたくさんいるわけですよね。だからやっぱり朝鮮学校の経営が下手くそすぎるのが問題だと思うわけですよ。第九初級学校のHPに載ってるんですよね、入学金が0円、無料ですよ、授業料が月額1万4千円なんですよ。いわゆる私立の学校なわけですよね、値がめちゃくちゃ安いわけですよ。経営が厳しいのであれば、授業料あげるとか、何らかの付加価値をつけて他のインターナショナルスクールと同様高い教育の質を担保する、それができないんだったら公立の学校に入ってもらう、他のとこが当たり前にやってることをやるっていうことも必要なんじゃないかなって、子どもたちを盾にするっていうことが一番卑怯だという気がします。」

堀)
「なるほど。Bさんどうですか?」

コメンテーターBさん)
「今のお話聞いて、なるほどなって思ったんですけれども、私からすると例えば私立外国人学校を対象とした補助金の中でも、都内の朝鮮学校に対してのみ政治的な理由を盾にして支給していないというところで、そもそもその学校に行く子どもたちが所属する時点で自分が政治的な論争の対象であるっていうのを意識しながら学校に通うのって、どんな気持ちなのかなって思ったりはする。それを強く感じざるを得ないような環境で、学校もそれを子供に刻みつけるような状況で民族意識を教えながら、育つっていうのが、過剰な環境ではあるのかなって感じました。」

堀)
「Cさんどう思いますか」

コメンテーターCさん)
「僕は基本的に教育支援というのは子供とか家庭に直接やるべきだと思っている。というのは学校に行かない子もいるし、学校単位で支給とかそういうものをやるって結局、既得権益につながっちゃうんで、例えば一人一人のご家庭とか生徒の判断をどれくらい信頼するかってことだと思うんですね。
だから僕は例えばホームスクーリングで家で勉強してる子だっているわけだし、そもそも学校単位でこういうことをやっていくこと自体が建付けがまずいんじゃないかって。この例で言うと、朝鮮学校には支給しないんだけど、そこに通ってらっしゃるお子さんのある年齢層の方には、いろいろ世帯収入とか直接支援するっていうアプローチにしたらいいんじゃないですか?」

堀)
「皆さんから色々議論が出ましたけれども、私は実際にその学校公開に行って、先生方や父兄の皆さんといろんなお話をしてきました。東京朝鮮第5初中級学校の学校公開の様子、そして現状ですね、ぜひ知って頂きたいです、映像をご覧ください。」

~VTR~

(校舎の中、廊下を歩きながら展示物や集合写真を見て回る)
金先生)
歴代の卒業生たちで、だんだん卒業生の数が少なくなっているのが顕著に表れています。
堀)
何人ぐらいですか?1学年、毎回?
先生)
聞いたら泣きます、3人です。
父兄)
昔はもっといたじゃん。
堀)
3人ですか。
先生)
今、小学3年生が3人です。

(生徒が書いた絵)
堀)
こちらはなんて書いてあるのですか?
先生)
これは名前です。私の自己紹介。参観日に来る人に「私」を紹介する。これは運動会の様子です。
(手書きのイラストなどで覆った廊下の壁)
先生)
壁が(老朽化で)剥がれるんですよね。低学年の子達が学校に来た時に、壁が剥がれて不気味な壁 を見せるのがかわいそうだなと思って、みんなに、みんなが楽しくなるような壁を作ろうと行っ て(作った)
(階段)
ここも板が外れて直すことができない。何回も、何回も直してもう諦めた状態です。
(屋上でインタビュー)
堀)
今、一番どんなことを伝えたいですか?
先生)
やっぱり子供達が安全にのびのびと勉強できるような環境の中で思いっきり勉強して欲しいな、 遊んで欲しいなと思います。 朝鮮学校のことも知ってもらって、そこに通う子どもたちも、日本の子どもたちもみんな同じよ うに健やかに育っていくようなそういったものになって欲しいなと思っています。

~スタジオ~

堀)
「様々な歴史的な事象からこのように日本でこの70年近く暮らしてくるでいろんな思いを抱えながらこの地域で共生しようと、取り組んできました。
今回、学校公開という形で、私たちが思っていること、皆さんが知りたいこと、そういうことを共に共有する場所を作ろうという試みだったんですよね。学校公開の中ではこども達が作った美術の作品であったりとか、実際の授業の様子を見てもらった、地域からは思った以上に親御さんたち地域の方々も訪ねてきてくれて200人近くの方がいました。地域の区議会議員の方たちも来ました。今やっている国や行政のあり方以上に直にこども達とふれあってもらうことで、先ほどもあった、じゃあどういう共生のあり方があるのかなということを感じてもらおうという、そういう取り組みだったんですね。
朝鮮学校側も色々お話聞いてみると、私たちもいろんな説明をする機会を作っていきたいと思っているし、逆にいろんな異文化がある中でどういう共生の方法があるのか、ここで生み出していくことだってできますよね、地域に必要な学校の在り方をともに作っていきたいと思っているんですね。いろんな疑心暗鬼が渦巻いている今ですけども、こういうささやかな取り組みはね、本当に大切にしたいと思っています。Aさんどう思いますか?

Aさん)
「単純に朝鮮総連には1円もお金は入らないということは明確にして、当然その上でこども達にはなんの罪もないわけですからそういう感覚が広がって、こども達に責任をなすりつけるのはやめようってことだと思います」
堀)
「以上、New globalでした」

TOKYOMX「堀潤モーニングFLAG」より

今回の取材はさらにYouTubeで公開し、朝鮮学校が改修の為の寄付を募っていることや、卒業生がどのような想いなのかということを伝えています。

一方、この日の放送だけでは、決して十分ではないので、翌週、翌々週と「堀潤モーニングFLAG」では在日コリアンの皆さんに対する様々な課題を取り上げてきました。

翌6月29日に取り上げた「拉致問題」のニュースでは、早期解決に向けた対策を語る一方で、コメンテーターの方のこの発言を掘り下げました。

「忘れてはいけないのは日本の社会には北朝鮮(朝鮮半島)にルーツをお持ちの方もたくさん暮らしている。国と国との間での北朝鮮叩きのような姿勢を公の立場にある人たちが見せることというのは、私たちと一緒に暮らしている人の中にご自身の大切なルーツがそこにある方々が、結果として社会から排除されたり、差別を受けたり、誹謗中傷を受けたりということが起きているわけですから、そこにつながりかねないということも、政府関係者の方はじめ、公の立場にある方にはいつも考えてほしいです」


この発言を受け、堀からは

「『近くて遠い国』と言われる場所の国土が海で隔たり、物理的に難しいかもしれないけど、足元を見ると同じ時間、同じ土地、同じ様々な歴史を共有してきた在日のみんなのコミュニティーがあるわけですから積極的にそこでこそきちんと対話をしてお互いどう思ってるのか、何ができるのか、特にこの番組では朝鮮学校の問題を取り上げました。いろんな意見が出て心ない意見だと言って今苦しんでいる方もいます。傷ついたとおっしゃっていた方もいます。だからこそで交流を続けて、お互いにしっかりと共有できる歴史を持ってきた。「差別もしてきた、この国は」という言うことも含めて考えていきたいなと思います。番組では伝え続けようと思いますのでよろしくお願いします」

と伝え、今月3日の放送では、移民問題を取り上げる中で、在日コリアンの皆さんへの差別解消への課題として、日本国が国際条約の「人種差別撤廃条約」を批准していながら、人種差別禁止の国内法の整備を行なっていないのは問題だという指摘を番組として発信しました。こうした発信はこの番組でも従前より続けてきたものです。

わたし自身、両国の学生同士が相互交流を続け、疑心暗鬼を解いて次代を探る「学生交流」の取材で、首都平壌を2018年、2019年に訪問し、その模様をドキュメンタリー映画として公開、両国の関係改善を訴えてきた1人です。

初日のコメンテーターの皆さんの発言の趣旨は、国や自治体が朝鮮学校を補助の対象から外すという判断を続ける中、すぐにできる対処として、子どもたちや世帯への直接給付の選択はないのかという議論でした。民族教育を子どもたちが受けられる環境の大切さについては上記したように堀の方から取材映像などを通じて補完しました。

一方で、放送後、朝鮮学校の先生を通じて学校に通う児童・生徒たち、親御さんたち、様々な方々からの感想を教えてもらいました。また学校に来てくださいねという声、様々な意見に触れて苦しくなったという声、取り上げられて良かったという声、もっと知って欲しいという声、差別を感じ憤ったという声、交流の機会をさらに増やしたいという声、先生とのメッセージのやりとりの中から様々な声が寄せられました。

そうした中、朝鮮学校出身で共に平壌を訪ね、今は大学院で学ぶ学生が連絡をくれ「ぜひコメンテーターの方とも交流をしたい!絶対いい関係を築きますよ!紹介してください!」と申し出てくれました。コメンテーターに伝えると「僕にできることがあればなんでもします!」とすぐに返信がありました。新たな交流が生まれる予感に、感謝しかありません。

実は、この文章を書いている時にも朝鮮学校の先生から連絡をいただきました。「もちろん言いたいこともあります、でも応援もしています、その後も伝え続けてくれていることが嬉しかったです。これからも発信を続けてください」と、懐の深い言葉をかけていただきました。本当に感謝しています。

こういう皆さんだからこそ、多くの方々に紹介したいのです。

通常、テレビ番組で、こうして現場の皆さんとの交流をベースに毎週のように朝鮮学校や在日コリアンの皆さんの現状を共に伝えられる機会はあまり多くありません。私の番組では、これからもまだまだ多くの日本人が知らない、当事者の皆さんの声を伝え、相互理解につながる発信を共に行なっていきます。

最後に。

東京朝鮮第5初中級学校では、老朽化した校舎の改修のために必要な資金の寄付を懸命に集めています。この文章を書きながら、先生と電話で話している中でも「そういえば、そもそも学校訪問を番組でも伝えようと思ったきっかけは少しでも寄付が集まるといいですね、という話でしたよね!吹き飛んじゃってます!」と大きな声で確認し合いました。

その一助になればとも思い、急ぎ、こちらの文書を公開いたします。

以上が、質問状で「差別を扇動している」とご指摘を受けた「堀潤モーニングFLAG」のこのまる2週間の報道内容です。

写真は、堀が2019年に平壌で撮影。日本の市民グループと朝鮮学校の先生方が尽力し、日本、韓国、朝鮮の3カ国の小学生たちが絵画を送りあって交流する取り組みの現場。訪問したルンラ小学校の校庭で手を取り合う日本の大学生と平壌の小学生たちです。

こうした風景はとても平和でした。

分断された地域の子どもたちが互いに手と手を取り合い笑い合える未来のために各現場の大人たち同士が知恵を出し合う社会の実現を願って、取材を続けます。

堀 潤

学生交流の模様はこちらのYouTubeで。




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