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vol.8 チャレンジこそが組織の力になる 【ヤマサ醤油】

経営者とブランディングデザイナー西澤明洋が対談し、ブランドの成長ストーリーを振り返りお届けするシリーズ「BRAND STORY」。


執筆・編集 加藤孝司
撮影 トヤマタクロウ

1645年、初代濱口儀兵衛が紀州から銚子にわたり創業した醤油などで知られる老舗「ヤマサ醤油」。海洋性の気候風土が、麹菌など微生物の力を借りて作る醤油醸造に適した銚子の地で、江戸時代から3世紀半以上にわたりものづくりをしている。

2009年に発売した「鮮度の一滴」では、それまでの醤油にはなかった「鮮度」という新しい価値観をもたらし、業界と食卓にイノベーションをおこした。
今回の対談では調味料メーカーとして既に知名度のあるヤマサ醤油がなぜブランディングだったのか?明るくてきれいな赤い色、芳ばしい香り、コクのある味が特長のヤマサの醤油はどのように食卓に届けられたのか?対談前編ではブランディングに取り組むきっかけとなった問題意識を中心に代表取締役社長の石橋直幸氏に話をうかがった。

そのものの良さをいかに伝えるか

ーーエイトブランディングデザイン西澤さんとの出会いはどのようなタイミングでしたか?

石橋:2009年になるのですが、私が参加している勉強会で、西澤さんがブランディングをされたコエドビールの朝霧さんのお話を伺う機会がありました。その時のお話がものすごく面白くて、それ以来西澤さんとお仕事ができないかなと思っていました。

西澤:それは嬉しいお話ですね。

石橋:いろいろうかがって西澤さんがお仕事を引き受ける際に大切にしているのは、その組織がもともともっている商品力だということがわかりました。ただ着飾るだけの仕事はしないというところに共感しました。

西澤:僕の本も読んでいただいたのですか?

石橋:はい。それが長いあいだ頭の中にあって、4〜5年経ったころでしょうか。「生のぽん酢」というコンセプトで新製品をつくるにあたり、真っ先に相談したいと思ったのが西澤さんでした。

西澤:そうでしたか。ありがとうございます。

石橋:それが現在「まる生ぽん酢」として販売させていただいている製品でした。相談した当時困っていたことは、味の評価は高いけれども、「生タイプのぽん酢です。」と商品性を伝えるだけでは、誰に聞いても「ふーん」という感じだったことです。
これはつねづね思っているのですが、ヒット商品はニッチさよりも、メインストリームにあるもので、だからこそ逆に「生のぽん酢」は普通すぎて響かなかったのかもしれませんね。
この商品に関しては伝える努力をしなければいけないということが問題意識としてありました。

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西澤:これまで新商品を開発する際にどのような流れを踏んできたのでしょうか? 僕らのような社外のデザイナーが商品開発の段階から参画した例はあったのですか?

石橋:いえ、初めてでした。これまではパッケージデザインの段階になって、デザイン会社さんに入っていただきデザインを考えてもらっていました。というのも中身の開発が大事で、プロダクトとしては中身以外の要素までこだわる余裕はなかったからです。

西澤:特に大きな会社の場合、商品サイクルがありますからね。通常はどこの会社も今お話をうかがった通りだと思うのですが、最初にお会いしたときに僕からお伝えさせていただいたのは、今回必要なのはブランディングデザインなので最初の企画から関わりたいとお話させていただきました。

石橋:そうでしたね。

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代表取締役社長 石橋直幸氏
1978年、東京都生まれ。2000年、慶應義塾大学法学部卒業後、さくら銀行(現三井住友銀行)に入社。2005年にヤマサ醤油に入社。2009年、取締役営業本部副本部長、2012年常務取締役醤油・食品事業統轄、2017年、代表取締役社長に就任。


ーー先ほど石橋社長より、この製品は伝えるところから考えたいというお話がありましたが、今回はいつもとは違うという思いをお持ちだったのですか?

石橋:はい。これまでのように数ヶ月単位で素早く開発する製品ではなく、エイトさんにはプロジェクトとして依頼するつもりでお願いした経緯がありました。
つまりこの商品はそれだけのことをしてもいい製品だという着想がありましたし、自分たちの商品開発のプロセスをブレークスル―するためにも、エイトさんに依頼するべきだと判断しました。
それとこれはその後に西澤さんにお願いした弊社の「鮮度生活」にもつながるのですが、新しいボトルをつくることも重要なミッションとしてありました。

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この続きは、エイトブランディングデザインWEBサイトで全文無料公開中。『ヤマサ醤油[ 前編 ]チャレンジこそが組織の力になる』へ


執筆・編集

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Photo:Takuroh Toyama

加藤孝司  Takashi Kato
デザインジャーナリスト/ フォトグラファー
1965年東京生まれ。デザイン、ライフスタイル、アートなどを横断的に探求、執筆。2005年よりはじめたweblog『FORM_story of design』では、デザイン、建築、映画や哲学など、独自の視点から幅広く論考。休日は愛猫ジャスパー(ブリティッシュショートヘアの男の子)とともにすごすことを楽しみにしている。http://form-design.jugem.jp


撮影

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トヤマタクロウ
1988年生まれ。写真集や個展での作品発表を中心に、クライアントワークにおいても幅広く活動。http://takurohtoyama.tumblr.com



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