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【勝手にオマージュ企画】読むな!【2000字のホラー&2000字のほら】


こちらの作品の製作コンセプトに感銘を受けましてリスペクト、勝手にオマージュ作品を製作してしまいました。この作品はぜひ読んで頂き私の作品は絶対に読まないでください!

読むな!(ショート&ショート)

「やあ、久しぶり!」
「ほんとに!何も変わってないな!」

「そういえば確かミス・ユニバースで美人率が世界一のコスタリカ代表なのになぜか日本国籍の奥さんはどうしてるの?元気にしてる?」
「ありがとう。元気だよ!3ヶ月前から参加費1億5千万の豪華客船でいく世界一周の旅に参加して家にはいないんだ。なんでもイベント担当みたいだけど」
「えっスタッフなの?」
「そうみたい。何でも世界中から30万45人の応募があった中から選ばれた20人の一人だと言っていた。そうだ。君のところの奥さんも元気かな?確か158cmで日本人女性の平均身長なのにパリコレのスーパーモデルということで話題になったとか。おまけにファッション誌ヴォーグの表誌を飾ったとか飾んないとかの噂を聞いたよ」
「ああ、あれはヴォーグの姉妹誌のサイボーグの表紙なんだ。ワイフの能面の小面のような表情がサイバーっぽいってことで採用されたらしい。実際の表紙の写真は本当に小面をつけさせられていたよ」
「えっそうなの。たいしたもんだよ、君の奥さん。確かにお面あってもなくても充分編集者の要望に応えられるよね、ところで立ち話も何なので店に入らないか?」

二人は縄のれんの焼き鳥屋に入った。
「たまには、こういった庶民が入り浸る飲み屋というのもいいもんだな」
「そうだね。でも初めてで勝手が分からないや。ここにはバトラーやギャルソンみたいなサーバントはいないのかな?」
「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいます」
「あっ来た来た。ああ、こういった店ははじめてなんだ。とりあえずビールかな。ハーフ&ハーフで」
「かしこまりました。ビールの焼酎割2つですね。お料理は?」
「この店で一番高い物ってなに?」
「世界一美味しいと言われるブレス鶏の、焼き鳥盛り合わせですね。一皿2万円ほどいただいてますが」
「ほう!じゃあ、これとこれ」「わかりました。奴と枝豆ですね。他には」
「また声かけるね。そうそうこの店はユーロは使えるのかな。僕はドイツから戻ったばかりなんだ」
「あいにく日本円だけなんですが」
「そ、じゃ、カードで支払うね。ありがとう」

「ホントに久しぶり。まずは乾杯!」
「うーん、ボォノ。失礼!イタリア経由で帰ってきたもので」
「まあいいさ。出世したんだってね」
「うん。ドイツ銀行のドレスデン地区のエリアマネージャーに抜擢されて、イニシアティブディスポジッションを与えられてヘッジファンドの運用まかされていたんだけど、アプレイザルのエスティメイトでちょっとミスっちゃってね。オフテイカーやらオリジネーターからちょっとクレームがはいっちゃったんだ。でねキャッシュ・ディフェンシー・サポートを依頼したんだがキュアピリオドにないということで協力できないということだったんだ。早急にクレジットエンハンスメントの措置が必要だったんだが、すぐにゴーイングコンサーンヴァリューが出なくてね、結局解雇さ」
「それは大変だったね。大丈夫なのか。経済的にって意味のことなんだが」
「うん。年収2億ぐらいで運用も上手くいっていて全然問題ないんだけどほら全部ユーロだし、タックスヘイブンのパナマ諸島の銀行に預けているからなかなか引き出すのが手間なんだ。良かったら当座の生活費を貸してくれないか?」
「お安い御用だよ。今日は持ち合わせがなくて2万でいいかな?」
「ありがとう。君のほうは順調かな」

「おかげさまで。僕も金融業界から脚を洗って今は情報商材で稼いでるんだ」
「金融工学や金融の知識やいまや暗号資産の情報か。儲かるだろう?」
「いや、それが金融情報じゃないんだ。『情報商材をいかにして売るか!という』情報商材なんだ」
「面白そうだな。聞かせてくれ」
「情報商材って、購入するときは情報が一方通行だろ。購入前は『誰でも出来ます!』『こんな私が月収7桁!』『いま申し込みが殺到してサーバーパンク中!』とか煽っていざ購入して蓋をあけてみないと内容が分からないときてるんだ。そうして開けてみたらこの購入してもらった情報商材の売り方の情報というわけさ。購入実績はあなた。あなたはなぜこの商材を購入したのか?それが最大の情報なんだ」
「ふーん。詐欺じゃないのか?」
「全然。クーリングオフはちゃんと設定してあるし。意外と購入者は真面目に取り組んでいるぜ」
「いくら稼いだ?」
「そうだな、宇宙に行って帰ってこれるぐらいかな。NASAをラウンジがわりに利用できるんだ。もちろん利用するのもドリンクサービスも無料さ。フライトまでゆとりのひとときをお過ごしくださいって案内にあった」
「すごいじゃないか。僕のほうは資産運用が上手くいってね、そうだな、リアルモノポリーとかリアル人生ゲームができるぐらいかな。こども銀行のお金に換算して10兆はくだらないと思うよ」
「ふーん、良くわからないんだけど凄いというのだけは伝わってきたよ。お互い成功していてなによりだね」

「すいません。隣のテーブルから失礼します。隣だとお二人の会話が嫌でも耳に入ってきてしまいまして。お二人ともすごいですね、どんなご縁なんですか。差し支えなけれはお聞かせ頂ければありがたいのですが」
「なに、イギリスの王室も通い、歴代首相を19人も輩出した寄宿舎でお馴染みのイギリスでは超名門のイートン校の姉妹校で一緒だったんですよ。『隠遁高校』っていうんですけどね。語感が似ているってだけで姉妹校の提携を結んだみたいで。そこの寄宿舎じゃなくって寮のルームメイトだったんですよ。なつかしいなあ」
「なつかしいね。校歌覚えてる?」
「もちろん。ちょっとここで披露してみようか。せーの、」
「・・・・」
「やっぱり忘れちゃったね」
「忘れちゃったよ。もう30年も前だからなあ」
「お二人のお仕事はなんとなく分かったのですがご趣味の方は?」
「僕は鉄道模型かな。最近は趣味が高じて、敷地内で実際の車両を動かして楽しんでるよ。もちろん台風の時は運休だけど」
「僕はゴルフかなあ。自分用に専用のゴルフ場があるんだ。今度マスターズの大会で使いたいってオファーが来てるんだけどOKしようか迷ってるところ」
「やはりお二人とも趣味もスケールが違いますね。ところで隠遁高校って東京ですよね。お二人とも東京のご出身ですか?」
「いや、二人ともいわば地方の名家だよ。僕は東北で、こっちは九州かな」
「へえ」
「僕のところの故郷は凄いよ。暖房が効かないぐらい冬は寒いんだ。みんな冷蔵庫の電源を切って食べ物なんか部屋の中に置いといても全然傷まないんだ。たまに白クマやペンギンを見かけることもあるよ」

「ほう。それはすごいね。僕とこの田舎なんかいまだに江戸時代の生活をしている集落があるんだ。日本のアーミッシュって言われているよ。そこになぜか不思議なんだけどコンビニがあってそこではなんと『寛永通宝』がつかえるんだ」

「ほう。このキャッシュレスの時代に凄いですな。隣から失礼しますけど私のふるさとの川なんか透明度日本一なんですよ。もう水があるんだかないんだか分からないぐらいでこの川から流れ込むダム湖なんてそれはそれはきれいで、水が見えないもんだから飛びおり自殺のつもりで飛びおりても水があって助かってしまう人が後をたたないんですよ。表彰されたぐらいです」

「へえ。おつまみお持ちしました。わたしの出身は結構山の中なんですけど、最寄りのスーパーではなんでもメガ売りが目玉なんです。今日はちょっっとすき焼きの気分かなと思って探してみるとなんと牛が売ってるんですよ。牛以外にも豚とか鶏とかたまに見かけます。みんな生きているんでちょっとコツが要りますが持ち帰る時は2トントラック貸し出して貰えます」

「ほお。あまり油売らないでくれよな。あまり知られてないが私の田舎の吊り橋もすごいぞ!朝渡りはじめて渡りきるとお昼になってるからな。往復すると夕方になってしまうんだ。そんな吊り橋だから当然行方不明者も多いんだ。ほんとうは渡りきったのか引き返したのか良く分からないんだが、どうも渡り始めの人数と、渡りきった人数が合わないらしい。ちょっとしたミステリーなんだ。だから渡る方も一大決心さ。まず遺書を書かないと渡れないんだ」

「やっぱり店長のネタもすごいですね!お客さんほっといていいんですか?」

どうでもいいが、変なお国自慢が始まってしまっていた。収拾が付かない。空気がおかしい。誰かこの流れをとめてくれ。空気を読むな!頼むから空気を読むな!誰かの介入を求む!

「あなた達、おかしい!」

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