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書き味なめらかペン

 日記帳のようなものを、ずっとつけずにきた。たしか20年くらい前は熱心に書いてためこんでいたんだけれど、ある日(私がいま死んだら、これは人に読まれるんだな)と考えた。そのときちょっと想像しただけでも、それはどうやっても耐えられないなとおもい、すぐに書くのをやめて日記帳はすべて処分した。

 そういうわけで、書かずに何年も過ごしていたけれど、手帳や日記みたいなきちんとしたものでなく、何かちょっとしたことを書くノートを欲しくなった。いくつか探して買ってみたのは1年半ほど前になる。ワークショップを受けるときや、チョコレートのテイスティングをするとき、あとはちょっとしたことを書き留めるのに使っている。

 選んだノートはZEQUENZジークエンス360°のL(A5)横罫と、RHODIA BUTIQUEロディアブティックのWEBNOTEBOOK横罫(A6)。

 筆記具というと私が好きなのはBICボールペン(Medium)。見た目と書き味と値段がいいし、持ったときの感じも好ましい。文房具といえばおかあちゃんが地域の文房具店(もうない)にずっと勤めていて、よく遊びに行っていた。そのときにPILOTの手軽な万年筆を見つけ、このくらいだったら気負わずに使えるというので2本購入し使っている。カクノ万年筆といって、1,000円くらいだった。2本というのはインクの色とペン先の細さを変えていて、よく使うのはM(中字)のブルーブラックのほう。

 そういう、あまり情緒のない私なんだけれど先日すてきな万年筆をいただいた。うれしいのと、ちゃんと手入れしながら丁寧に使えるだろうかというちょっとした不安がいり混じって胸が高まるこのペンを、ためしに紙の上で滑らせてみたらとてもなめらかで驚いた。インクは月夜という名の、藍鼠みたいなきれいな色がセットされている。ペン先はとても細い。

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 何しろ根っこからザッとしているから、BICボールペンやカクノ万年筆の中字なんていうのは粗が出なくていいのだった。このたびいただいたペンは、私には繊細過ぎるようでなんだかかしこまって手がふるえてしまう。こういうのをさりげなく使える人に憧れつつ、少しずつ慣れていこうとおもっている。

 タイトルの"書き味なめらかペン"というのは、アメリカのドラマ『ギルモア・ガールズ』の中で編集長のドイルがお気に入りの”書き味なめらかペン”を誰かに盗まれたと騒いでいたときのせりふ。このすてきな万年筆で線をひいたとき、この言葉が浮かんだのだった。

 ちゃんとしたチョコレートのテイスティング用ノートをつくろうかな。

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ガラスの瓶って好きだ(真ん中がインク瓶です)



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