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「あなた方にしあわせがありますように」

 五島列島といっても色々で、列島というくらいだからけっこう大きい。行政区域は4つに分かれているし、その島ごとの印象はずいぶんと違う。今日は上五島のことを書く。

 石造りが珍しい頭ヶ島(かしらがしま)教会は上五島の白浜地区というところにあって、その重厚な外観と、それとは対照的なかわいらしい堂内の様子が人気を集めている。『花の御堂』と呼ばれていこの教会の設計は鉄川與助氏で、天井部分はリヴ・ヴォールトではなくハンマー・ビームで折り上げてあり、空間にゆとりを感じられる演出がなされている。

 おととしの9月に、訪問を計画していて(仕事です)、ふと母のことがよぎった。五島に渡ったことはないはずだ。
 船賃を出すけど行く? と声をかけてみたら、まあ行ってもいいよという返事だったので一緒に行くことにした。母のテンションはいつもこんな感じで、行きたいんだかそうでないんだか、人に合わせるのがくせになっているところがある。

 私も上五島は初めてだった。有川行の高速船は、下五島行きのジェットフォイルよりも小さい。私は船酔いをしないタチで、母も大丈夫だと高をくくってていたところ、この小さい高速船はぴょんぴょん跳ねるところが多く、ちょっと酔ってしまったようだった。しまった、気遣いが足りなかったとおもった。
 朝いちばんの便だったので、母は朝食がわりのパンを持参していた。下船して、手配していたレンタカーに乗ってパンを食べたら治ったそうだ。単純で良かった。

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写真を撮る私を待っている母

 まずは目的地である頭ヶ島教会に向かう。この時はパーク&ライドの取り組みがおこなわれており、シャトルバスの発着所である空港に車を停め、そこから乗り合わせのバスで教会に向かう。
 すごく天気のいい日で、日ざしが強い。バスを降りたら案内役の方にご挨拶をする。この日の当番は、TKさんの同級生の方というので、楽しみにしていたのだった。
 声をかけ、いつもTKさんにお世話になっていることを告げたら、とても喜んでくれた。UNさんという、やさしげな方だった。

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 他の来訪者の方々と一緒に敷地内や堂内を案内してもらい、写真を撮るなどする(内部は撮影禁止)。UNさんは外海の様子やTKさんのことなどを話すと嬉しそうにしていた。そして、私が母を連れて来ていたことを喜んでくれ、別れ際ににこにことして言ったのだ。

——あなた方にしあわせがありますように。

 なんだかこみ上げてくるものがあった。
 カトリックって、子どもの頃から教育がされていて、特にこの年代の人たちからは特有の品格をいつも感じる。教会学校と言って放課後に教理を教わったり、日曜日に教会に通ったり、奉仕活動をしたり、家庭でも私たちとは違う教育がある彼らの生活はどんなだろう。情報として知ることはできても、実感として知ることができないその生活を、いつも想像してばかりいる。カトリックに入信するということはないとおもうけれど、この人たちが生きてきた背景にある何かしらにはときどき心を揺さぶられることがある。

 UNさん、お元気かなあ。現在はここは観光客の受け入れを停止しています。島での感染拡大は大変なことであるし、島民を守るための当然の対応だろう。

 よくご挨拶して、ここをあとにする。
 またバスで空港へ戻り、車に乗って他の教会などをまわる。お腹が空いて、気になっていたところでランチをとった。おいしかった。船酔いなんてとっくに忘れて母もよく食べた。

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レストラン 空と海の十字路/しらすのピッツァ

 母はどう思ったかわからないけれど、一緒に来られてよかったとおもっている。兄んチのちびたちも連れてきたいのだけど、なかなか果たせないでいる。これより前に母とちび2人を連れて天草に行ったことがあるので、それはまた改めて書きたい。

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