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オープンソースと義侠心とアニミズムについて/大塚

先日の2/20(火)に参加したオンラインイベントの感想を書きました。
AIとオープンソースの未来について、海外の若手起業家が登壇するイベントです。

今をときめくAI企業はなぜオープンソースにこだわるのか?激化するAI開発の⽣存戦略やビジョンを根掘り葉掘りお聞きします!

オープンソース(OSS)とは、無償で⼀般公開されたソフトウェアのことです。 誰でもそのソフトウェアの利⽤や改良が可能です。 近年、AI企業を含めたソフトウェア業界では商⽤OSSを⽤いてビジネス展開する企業が増えており、近い将来にはOSSがソフトウェア業界の新たなスタンダードになると予想されています。今回はOSS業界の中でも新進気鋭の世界的スタートアップが虎ノ⾨ヒルズに集結し、OSSとAIの可能性について存分に語り明かします。これからのビジネスを考えるすべての⼈にとって必⾒の内容です!この機会をお⾒逃しなく。

【イベント開催概要】
開催日:2024年2月20日(火)17:00 - 18:30(16:30受付開始、18:00受付終了)
開催場所:CIC Tokyo(東京都港区虎ノ門 1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階)& オンライン
主催・共催: 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、CIC Tokyo

【タイムテーブル】
17:00 - 17:05オープニング
田中 匡憲 氏 / Itochu Techno-Solutions America, Inc. President & CEO
[司会] 溝手 翠 氏 / CIC Institute Project Manager
17:05 - 17:20スタートアップからのインプットセッション
ラミン ハサニ ⽒ / Liquid AI 共同創設者&CEO
ジェリー チー ⽒ / Stability AI Japan 代表
リオン ジョーンズ 氏 / Sakana AI, Co-founder
17:20 - 17:25AI×OSSの市場動向について
ジョセフ ジャックス ⽒ / OSS Capital 創設者
17:25 - 18:20パネルディスカッション:
パネルディスカッションで取り扱ってほしいテーマ募集中!申込フォームに記載ください! (例:OpenAIどう思う?)ジョセフ ジャックス ⽒ / OSS Capital 創設者
ラミン ハサニ ⽒ / Liquid AI 共同創設者&CEO
ジェリー チー ⽒ / Stability AI Japan 代表
リオン ジョーンズ 氏 / Sakana AI, Co-founders
[モデレーター] 田中 久智 氏 / 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 先端技術開発部 部長

大変興味深い内容だったので、以下自分の感想も入れながら内容をお伝えします。


オープンなLLM開発

2017年6月に大規模言語モデル(Transformer)がオープンソースで発表されたこと、それはほとんどハッカーのようなアマチュアリズム精神を持ったプログラマーたちを狂喜乱舞させた。そう、彼らは夜を徹してコードを書き、そして世界に新しい知識の泉を提供したのだ。まるで未知なる宇宙を開拓する冒険家のように。

登壇者の一人で、OSS Capitalの創業者であるジョセフ・ジャックス⽒の言葉が心に残った。つまり、著作権を保護しようとするコピーライトは保守的な考えだとすると、コピーレフトはそれに反発する進歩的なアンチテーゼであり、まさにライト(右)に対するレフト(左)の運動だというのだ。例えばコピーライトが私有地であれば、コピーレフトは誰でも利用できる公園のようなもの。そこで子供たちが自由に遊ぶように、知識も自由に広がり、育つ。

大規模言語モデルはオープンソースの精神を体現しており、そしてそれは自由な学びと協力を基盤にプログラマーの寄与によって発展している。一人ひとりが小さな光を灯すことで、それが集まって大きな灯台が完成する。それこそがオープンソースコミュニティの力だ。

自然模倣のAI

私たちの周りには、緻密な計算を積み重ねて高みを目指す巨人たちがいる。すなわちOpenAIのような大手企業は、今も圧倒的な資本力によって計算量の規模を拡大し続けている。しかしその陰で、今回登壇した若手のAI起業家たちは、もっと思慮深い取り組みによって彼らと競合する必要があると考えている。何もかも力任せに解決しようとするんじゃなくて、賢く、そして繊細に問題を見つめ直す姿勢を大切にしている。

考えてみれば、自然界は機械を用いた計算量などとは無縁で、シンプルながらも効率的なシステムがあふれている。アリが自分たちの体を使って橋を作るように、私たちもまた、サイバネティックな動きに注目し、学び取るべきかもしれない。日本でsakana.aiを共同で立ち上げた創業者の一人リオン・ジョーンズ氏も、このような自然がもたらす知恵からヒントを得て、AIの発展に向けた研究を進めている。

また同時に登壇したLiquid AIのラミン・ハサニ⽒は、小さな線虫をモデルにした新たなAIニューラルネットワーク「リキッド・ニューラル・ネットワーク(LNN)」の商用化を目指す。

これら若手AI起業家たちは、自然界のシンプルなシステムから学び、計算コストをかけずに性能を向上させようとしているのだ。彼らは、独自の思慮深いアプローチで大手と競合する新たな道を切り開いている。確かに、大企業と同じ土俵で戦おうとするのではなく、自分たちの武器を磨き、新しい戦略を繰り出すことで、私たちの未来はもっと豊かになるだろう。

自然は最高の師匠になり得る。その巧妙な仕組みから、私たちがどれほど多くを学べるか、それを忘れてはいけない。

オープンソースの未来

力を頼りにするのではなく、自然界の賢さから学んでAIを進化させようとする若手起業家たち。自分たちの独自性を生かし、新しいアプローチで大企業に挑む。それって、自分の強みを知って、それを武器にして戦うっていうことだ。まるで森で生きる動物たちが、それぞれの環境に適応して生存戦略を練るように。

sakana.aiのリオン氏はベンチャーキャピタルからの多額の投資を受けて大規模言語モデルをより拡大させるのではなく、長期的な視点で人工知能の基礎的な研究をしたいと考えている。つまり、お金をバンバン投じて結果を急ぐんじゃなくて、じっくりと土台からAIの世界を育て上げたいのだ。まるで庭に植えた苗が、ゆっくりとでもしっかりと大木になるのを見守るように。

オープンソースの歴史を省みると、Red Hat Linuxという会社が、元々オープンソースだったLinuxを利用して、独占的にマネタイズしたことへの批判があった。オープンソースの果樹園から、みんなで自由に果実を摘むはずが、一角を囲い込んで商売にする。それはちょっとコミュニティの理念とは違うかもしれない。

しかし、ハッカーたちの情熱のみに支えられたオープンソースコミュニティというのは、基礎研究の長期的取り組みにつながりにくいのは確かだ。ハッカー精神というものは、プログラムを書いたら即それを動かして試行錯誤しながら考える構成主義的アプローチであり、普遍性を求める基礎研究の還元主義的とは相性が悪い。つまり、長い目で見た基礎研究にはお金が必要なのだ。そしてRed Hatの事例を考えると、その出資元となるのは、私企業の資本的野心から基本的に自由であるべきだ。すなわち、世界をより良くする、というコスモポリタンな義侠心に突き動かされたマネーというものが必要になってくるだろう。

安全性と技術革新

オープンソースとは切っても切れないのが、セキュリティやプライバシーなどの安全性の問題だ。しかしその安全性を担保しようとすると、それは世の中のテクノロジーを完璧に支配下に置くことと同意だと言える。それは星の数ほどある技術の海に一人で立ち向かうようなもので、現代人にとってはほぼ不可能の業。スマホにPCに、身近にある電子機器についても何がどうなってるのかさっぱりだ。アプリ一つとっても、裏でどんなデータが飛び交ってるかなんて、ユーザーには見えない世界。だからといって、真のセキュリティやプライバシーを諦めてはいけないが、それを確保することの難しさは、現代人にとって大きな障壁である。安全性はある程度犠牲になっても仕方がないといった割り切りが必要なのかもしれない。

現在、人工知能の発展に伴って、その安全性が世界中で議論されている。その中でも、今のところ日本やイスラエルのような規制の緩い環境が、AI開発の楽園として存在している。規制がゆるゆるならば、思いのままに技術を伸ばし、AIが花開く土壌があるってわけ。
さらに人工知能の開発は、将来的に仮想通貨技術がOpenAIやGoogleの独占市場を変革するかもしれない、とOSS Capitalのジョセフ氏は語っていた。現在の仮想通貨は、信頼に足る本物から、怪しげな詐欺のようなものまで、玉石混交の状態だが、未来の可能性を秘めているという。

何が言いたいのかというと、私たちはテクノロジーの真の意味を理解し、セキュリティとプライバシーを守りつつ、規制に縛られない革新の場を慎重に模索していく必要がある。だって、テクノロジーってのは結局のところ、私たち人間の手で作り出されたもの。それをどう扱うかは、私たちの意志次第だ。

まとめ

オープンソースの大規模言語モデルが示す自由な学びと協力の精神は、私たちが知識を自由に広げる新たな時代の到来を感じさせる。まるで、力に頼るのではなく、自然界の賢さを借りてAIを進化させる若手起業家たちの姿勢が、私の心に響くようだ。彼らは、自分たちの独自性を大切にしながらも、新しいアプローチで大企業に挑戦する勇気を持っている。力を求めるのではなく、自然から学びを得てAIを進化させる彼らの姿勢は、まさに私たちが目指すべき価値観を示している。確かに、テクノロジーを完全に支配することはできないかもしれないが、セキュリティやプライバシーの保護は欠かせない要素だ。そして、規制の少ない国では、そのような自由が技術革新を促進するかもしれないと感じている。

AI開発の規制が緩やかな国として挙げられる日本は、アニミズムの精神を有しているとはよく言われる。また、独自の発展を遂げた漫画、アニメカルチャーも世界中にフォロワーを持つ一大コンテンツである。そうした土壌を鑑みると、「自然にインスパイアされた知能」というこれからの人工知能研究のメインストリームになる考えは、まさに日本にピッタリなのではないかと思わせる。

私大塚が研究している「KJ法」の真髄について、発案者の川喜田二郎は次のような言葉で表す。

「渾沌をして語らしめる」

これはつまり、人間をとりまく自然環境や情報について、そのあるがままの姿を活かして、そのあり様を自ら人々に語ってもらう、ということである。こうした「ものが語る」という風な、西洋から見ると意味不明な考え方が、今後の人工知能にとって要となるのではないか。そのような妄想が頭の中に膨らむ。


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