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贈与ー無限遠に拡散するのではない仕方で

2022年グッドデザイン賞大賞となった「まほうの駄菓子屋チロル堂」。昼は駄菓子屋、夜は居酒屋になるんだけど、大人が支払うお金が寄附され、結果子供がカレーを100円で食べることができたりと、支援が必要な子達にアプローチされる。素敵かつクレバーな仕組みで共感しきり。

この仕組みの肝は、寄附範囲の設定にあると言えそう。対象が遠すぎると、手段が貨幣などにならざるを得ず、贈与の実感も薄くなる。反対に近すぎると手段が具体的になりがちで、親密な関係以外への憐みも生まれづらい。地域の子ども達ならばと支援する大人は多いと思うし、多極的な展開がありえそう。

貨幣は便利な道具(自明)で、どこにでも届き、流体のように(ある程度)何にでもなりうるからこそ、贈与においては最も採用される手段となる。しかしながら、その贈与、あるいは寄附の対象は、グローバルの現在においては遠すぎる、というのが実感だと思う。自分の貨幣が無限遠に拡散し、漂流しているようなイメージ。チロル堂は貨幣が無限遠に拡散していく手前で、漂う貨幣たちにアンカーをつけ、係留した秀逸な仕組みだと思う。

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