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ディグ・モードvol.101「ルネサンス ルネサンス(RENAISSANCE RENAISSANCE)」

ルネサンス ルネサンス(RENAISSANCE RENAISSANCE)は、2016年にレバノン出身デザイナーのシンシア・マーヘッジ(Cynthia Merhej)が設立したファッション ブランド。かつて幻滅したことのあるファッションをロンドンで再発見した彼女は、母親の働く姿を見て学んだサステナビリティを活かしながら、ベイルートに開設したアトリエで作品を生み出している。


一度幻滅したファッションをロンドンで再発見

2023年スプリング コレクション(Courtesy of RENAISSANCE RENAISSANCE)

内戦末期のレバノンでクチュリエ一家のもとに生まれ育ったシンシアは、母親のローラ(Laura)と叔母が共同経営していたアトリエで青春時代を過ごした。いつもアトリエから追い出され、何も直接教えてもらうことはできなかったが、自己形成期にその環境にいたことで多くのことを学んだとシンシアは振り返っている。 

13歳くらいのとき、彼女のなかに主流のファッションに対する幻滅感が芽生えた。当時は非常に特殊な体型や女性のタイプしか存在せず、彼女にとってそれは均質的に感じられた。その時点まで母の跡を継ごうと考えていたため途方に暮れたが、写真と絵に興味を持っていたことから、彼女はロンドンのセントラル セント マーチンズとロイヤル カレッジ オブ アートに進学した。

2022年フォール コレクション(Courtesy of RENAISSANCE RENAISSANCE)

どちらの学校もファッション デザインで有名だが、シンシアはイラストレーションを学んだ。物語やキャラクターを通して世界を見ていると説明する彼女は、ロンドンで過ごしたことで再びファッションに興味を持つようになった。一度ファッションから距離を置き、自分なりの方法でそれを再発見する機会を得たのだ。

ロイヤル カレッジ オブ アートを卒業後、シンシアはベイルートに戻り、数年間かけて貯金して、自身のビジネスを運営するために必要なスキルを学んだ。そして2016年、ルネサンス ルネサンスは誕生した。

母の働く姿を見て学んだサステナビリティを実践

2023年フォール コレクション(Courtesy of RENAISSANCE RENAISSANCE)

シンシアにとって美しい服をデザインすることはもちろん大切だが、それは既にファッション業界で飽和状態で、彼女はそこに人間性の欠如を感じている。そこで、より良くするために何をしているか自問し、その暗い業界に光をもたらす方法を模索し続けている。

デザイナーの手法のひとつは、90年代に母親の働く姿を見て学んだサステナビリティだ。シンシアは母の仕事について、いつも機知に富むというテーマがあり、布切れを決して無駄にしなかったと説明する。ルネサンス ルネサンスの2023年秋コレクションは毛皮数枚を除いて、主に彼女の母が所有していた古い布地から作られた。

創造性を絶やさないために、ベイルートにアトリエを開設

シンシア・マーヘッジと母親のローラ(Courtesy of Merhej)

デザイナーにとって家とのつながりを維持することも必要だ。シンシアは2020年にパリに移住し、もう母国には住んでいないが、制作の一部がレバノンに残ることが重要だった。2022年、デザイナーは母親が率いるルネサンス ルネサンスのアトリエ部門をベイルートにオープンした。

2020年の核爆発で 200人以上が死亡、7,000人が重傷を負い、30万人がホームレスになった後、デザイナーは街の活気を保つためにアトリエの場所をベイルートに決めた。「ベイルートでこの創造性の感覚を失わないことが重要です」と彼女は『W Magazine』のインタビューで語っている。

彼女の2023年春コレクションには、そのアトリエで作られた一点ものの作品が初めて登場し、それ以来需要が高まっている。デザイナーは核爆発やパンデミックなどの困難にもかかわらず、ブランドがまだ存在しているだけでなく、繁栄していることに喜びを感じている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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