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ディグ・モードvol.102「リア(RIER)」

リア(RIER)は、2019年に南チロル出身のアンドレアス・ステイナー(Andreas Steiner)が設立したユニセックス ブランド。標高の高い南チロルで育ったことで、高品質で実用的な服に対する感受性が根付いたデザイナーは、機能性をエレガントな服に変え、地元の職人技に敬意を払いながら服作りをおこなっている。


南チロルの思い出に結びついたブランド

2023年春夏コレクション(Courtesy of RIER)

アンドレアスのデザイン アプローチは、オーストリアと国境を接する北イタリアの高山自治区、南チロルで育ったノスタルジックな子ども時代の記憶と結びついている。そこに電気は無かったが、ただ美しい環境があり、自然と深くつながっていた。夏にしばしば雪が降る気まぐれな高山気候に対抗するには、良い服を着て備えなければならなかったと彼は回想している。

「荒涼とした険しい山で育つと、コントラストに適応することをすぐに学びます。リアとは、都会でも田舎でも着やすいアイテムのことです」とデザイナーは『Highsnobiety』のインタビューで語っている。

2023年春夏コレクション(Courtesy of RIER)

高品質で実用的な衣服への感受性が根付いたアンドレアスは自身のレーベルを設立する前、テクニックに基づいたファッションデザインを学ぶため、ミラノに移り、プラダ、ミュウミュウ、ルイ・ヴィトンで働いた。プラダではクリエイティブな仕事を整理し、プロセス、細部へのこだわり、仕上げ、品質を理解する方法を学んだと彼は説明している。

その後、アンドレアスは休暇をとり、南チロルと再びつながりを持った。職人や家族経営の企業、生地に目を向けた彼は、そこの職人たちのサヴォアフェールと、エレガントでありながら機能的な美学という自身のビジョンを融合させるアイデアのもと、自身のレーベルを立ち上げた。

機能性をエレガントな服に変換

2023年春夏コレクション(Courtesy of RIER)

ブランドの核心は、機能性をエレガントな服に変換するデザイナーの能力にあり、彼は着用者と服が存在する環境の両方を考慮して服作りをおこなっている。たとえば、リアのウォーカー コートは、500年前の南チロルの伝統的な衣服にポケットのディテールを加えて、柔らかくモダンな仕立てに洗練させたものだ。

リアの特徴的なフリースは100%耐候性ウールを使用し、マイクロプラスチックを一切使用せず、安全なスイス製のジッパーで仕上げている。アンドレアスはデザインのあらゆる瞬間において、自然環境への影響を最小限に抑えながら、豊かな生活を通じて衣服の耐久性を保証する素材を使用している。

ブランドを設立したときのことについて、「最終製品と開発プロセスに対して、これまでとは少し違った、より個人的なアプローチを取り、特定のアイテムが現代的で文脈に関連するものになるように進化することについてもっと考えたいと思いました」とデザイナーは『The Fashiongraphy』のインタビューで語っている。

サヴォアフェールに敬意を払う

2023年春夏コレクション(Courtesy of RIER)

服作りにおいて、デザイナーはオーストリアとイタリアに拠点を置き、個人的に精査した家族経営の伝統的な企業ネットワークと協働している。そうすることで、彼は地元産業を支援するだけでなく、そのプロセスに携わる職人たちのサヴォアフェールに敬意を払っている。

「彼らが誰であるかを尊重しなければなりません。作っている人々を知れば、それが100年もの間そのように見えるのには理由があることがわかります」とアンドレアスは『AnOther Magazine』のインタビューで語っている。

デザイナーはコレクションで、イブニングウェアに挑戦する出発点として地元で作られた職人技の生地を使用している。贅沢なベルベット、フェルトウール、シルクモアレを、ハイスリットスカート、フロアレングスのイブニングコート、完璧に構築されたブラウスに仕立て上げた。

仕事相手や使用素材の選択がブランド構築の核

アンドレアス・スタイナー(Photography via The Fashiongraphy

彼はまた、ウィーンの靴職人ルートヴィッヒ・リーター(Ludwig Rieter)とのコラボレーションを続け、アーカイブブーツをエレガントに再解釈したり、伝統的な南チロルの革職人の専門知識を活用して、緻密に彫られたアクセサリーを作成したりしている。

デザイナーにとって、誰と仕事をするか、どの素材を使用するかを慎重に選択することが、自身の価値観を表現し、生涯を通じて誠実さを保つ成功したブランドを構築する倫理の核となっている。そして彼は廃棄物の問題が解決することを願っており、自然を破壊せずに自然とともに生きるバランスの取れた方法を見つけることを重んじている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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