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盛欲1

 「今年の夏は絶対彼女作るぞ!」
と夏休み前の小学生のようにテンション高く言った。家の中で言った。良かった、家に誰も居なくて。僕は彼女が欲しい。彼女と毎日イチャイチャしていたいし、やらしい事とかも沢山したい。だが高校3年生の夏に初めての彼女と別れてから現在に至るまでできていない。最近、彼女を作る事が歳を取るにつれてハードルが高くなっていってどんどん遠のいていく気がする。だが彼女ができたとしても失う怖さを覚えてしまう。何より付き合いたての頃の初心は時が経つにつれ忘れるものだから浮気などをして他の女と一線を越えることもあるだろう。浮気して彼女にバレた時の罪悪感など負の感情に押し潰され、生きた心地がしない人生なんで御免だ。

 もうすぐで夏休みに入ろうとしたいた。今日も僕と友達の正人と快晴と3人で学食を食べている。これはこれでまた楽しいからいいのだが、同性では心の奥にある寂しさを埋めることはできない。人肌恋しい時に性欲が高まるのは僕だけだろうか、そんな事を考えていると正人が唐突に言ってきた。
「なぁ、エッチって好きな人同士でやるから最高なんだぜ〜」と。味噌かつ定食を食べている時にそんな話をぶっ込んでくる友達は最高で最低だと味噌汁をすすりながら思った。少し間を空けて快晴もカレーを口に頬張り終えたスプーンを皿に置いて、「それな!知らない女とはお断りだわ!まぁそんなことする奴はいないと思うけどねー?なー渡〜」と僕に目線を合わせて嫌味を含んで言ってきた。僕は快晴が嫌味や皮肉を言う時に必ず語尾を伸ばす癖があるのを見抜いていた。まるで僕に浮気をするなよと間接的に警告をしているのか、それとも浮気をしたことがあると疑っているような口振りだった。人生で1回も浮気した事がないというのに。そこには皮肉とジョークが混じっていてどうしても僕だけは笑えなかった。一応苦笑いをしている振りでもしといた。それが精一杯だった。もちろん、快晴もそこまで悪気はないし、ジョークも含んでいると分かっているからそこまで落ち込む事ではなかった。しかし、この言葉が僕の耳に残って暫く考え込んだ。まるで、喉に魚の骨がつっかえて取れない時のもどかしさのようだった。最後まで残していた1個の味噌かつが冷めてしまいそうだった。正人が味噌かつを箸で横取りしようとしてきた。すかさず僕も対抗して素早く味噌かつを箸で掴んだ。そしてご飯と共に口一杯に入れた。正人の少し悲しそうな顔を見ながら食べる味噌とんかつは特別だった。

 そして大学も夏休みに入った。あらら、僕にはまだ彼女ができていない。とんでもなく焦り始めた。僕は最近性欲が爆発しそうなくらいやばい。大学でも講義前の休憩時間友達とエッチな話題で盛り上がったりした。それは良いとして春学期はオナニーをしすぎたと思う。講義が早く終わり家に帰宅する。ここまでは良い。だが、親が仕事で一日中家に居ない時は絶対一回はオナニーしていた。これは男ならではだが、抜いた後にくる賢者タイムほど厄介なものなんてない。あの数分の時は「なんで今日シコったんだろう、、」と罪悪感に押し潰される。地獄のような時間だ。性欲は止まらないものなのだ。本能を剥き出し、欲に忠実な男は獣かそれ以下の存在だ。

 しばらくネット広告をぼーっと見ていると「貴方の好みの女性がいる!」や「高確率で可愛い子とヤレる!」など今流行りのマッチングアプリのキャッチフレーズが並んでいた。僕は迷わず押した。広告からサイトに移動した。僕は性欲に負けたのだ。さらにアプリをダウンロードしてとあったのでアップルストアに移動し、アプリをダウンロードした。面倒くさい初期設定を適当に済ませ、早速女の子を見てみた。五人に一人は大人の動画に出演しているような可愛い女性がいた。なんなら可愛い女性したほぼ居ないに等しかった。だが、僕はいちいちチャットでやり取りするのが面倒臭いなと感じてしまい、結局アプリを消した。時間の無駄だった。

 そういえば、僕は大人の動画はマッサージものが好きだった。それならエッチな事をしてくれるマッサージ店を探せば良いんだと閃いた。早速ネットで調べた。そう簡単に出てこないなと半信半疑でスマホをスクロールしていた瞬間、十件くらい出てきた。僕の目に止まったのは豊田市のマッサージ店だった。なぜそこが気になったのかは分からない。野生の勘のような物か、不可抗力のようなものだろう。早速そこに電話してみた。何事も行動から始まりそこから準備していけば良いと思う。大多数の人は準備から入るが、それでは何も成せない、始まらない。

 電話に出たのは少ししゃがれた声をした女性だった。片言な日本語から察するに日本人ではないのは明らかだった。おそらく中国か台湾人人の女性だろう。第一声は僕から始まった。
「もしもし、そちらの〜〜マッサージ店は予約した方がいいですか?」と聞いた。女性からの返答は「イイえ〜〜予約しなくテモ大丈夫デース」と答えた。間を空けず、「なら来週の土曜日の〜午後くらいにそちらのお店に行きますね〜」と言った。「ハイ〜お待ちしてマス〜」と言って、
「そゆことで失礼します〜」と言った。女性も「ハイ〜失礼シマ〜す〜」と言い電話を切った。外国人はノリがいいという僕の偏見があるからか、陽気な人だなと思った。

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