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統計学の良い資料

神戸大学大学院経営学研究科の分寺杏介氏による、統計学関連の講義資料です。 今まで、いくつも統計学関連のテキストや講義資料を見てきましたが、豊富な図解と丁寧な説明を駆使してこれほど明瞭に仕上げているものは、ほとんど見た事が無いです。良い資料群だと思いますので、ここで紹介しておきます。

    • 誤解されるEBM

      オカーシャによる科学哲学の本を読んで気になった所。因果推論について解説している部分です(強調は引用者による)。 EBMをよく勉強した人が見れば、そんなわけあるかと感ぜられる文でありましょう。この文は、EBMの支持者であってもそういう人がいる、のような表現ではありません。それが代表的あるいは多数の意見である、と読めるものです。一部が唱えているだけであれば、敢えて運動の支持者などと強調する必要は無いからです。 EBM方面において、臨床的証拠の確実さや推奨の程度について評価する

      • 標的集団パラメータと帰無仮説と帰無分布

        統計的推測でとてもややこしい所、それは、帰無仮説は標的集団パラメータについての設定であるのに対し、帰無分布は標本分布を指す、という事です。 まず、着目する大元の集団、つまり標的集団から要素を無作為に得られると考えると、その要素は特定の確率分布に従っている、つまり確率変数であるとみなせます。これが大前提です。 次に、帰無仮説とは、着目する標的集団パラメータがパラメータ空間に属する特定の値である、というような仮説です。パラメータ空間とは、パラメータが取り得る値の集合です。

        • ドメイン知識に基づいた評価の必要

          この種のニュースに対する反応として見られるのは、 そのようなミスは起こるべきで無かった。医師の責任は重い ミス自体は起こり得る事だ。医師は反省して、再び医療の現場で命を救って欲しい こういう意見ですね。しかるに、これらいずれの意見を言うにも慎重になるべきです。必要なのは、 当該専門分野において当該事例がどのくらいの蓋然性で起こり得るものだったか という情報です。 あるミスについて、それが起こるか起こらないかのみで話をするのが適切で無いのは解ると思います。絶対にミス

        統計学の良い資料

          XLOOKUPとINDEXMATCHと構造化参照

          前提上記2つの記事を踏まえた内容です。 INDEXMATCHとXLOOKUPオプションの材料 前の記事では、INDEX関数とMATCH関数を組み合わせた検索抽出方法を紹介しました。そこでは、INDEX関数の材料が、 データを取り出す範囲 範囲での縦番号 範囲での横番号 であるのを利用して、2番目と3番目の材料にMATCH関数を入れる事で柔軟な検索と抽出が可能であるのを示したのでした。 ここで改めて、INDEX関数の材料を見てみましょう。 列番号とは、横番号を

          XLOOKUPとINDEXMATCHと構造化参照

          FILTER関数とスピルの仕組み

          よくすすめられる関数Excelの最近の関数で、便利なものやおすすめのものはあるか、という話で、FILTER関数が紹介される事があります。今回は、その関数について説明します。 注意事項FILTER関数ならびに、一緒に説明するスピル機能は、2020年頃に追加されたものですので、使用バージョンに注意ください。 シートのフィルター機能説明に使うのは、回転寿司を食べた記録です。 この種の表で、表を絞り込みたい場合があります。たとえば、一皿150円の寿司を食べた記録を絞り込んで表

          FILTER関数とスピルの仕組み

          現象の枝

          大谷選手まわりの話。 報道等で色々の情報が発信され、受け手が様々に解釈してまたそれが広く発信されます。 いままでに報道された情報で、おそらくこれは確実であろうとみなされるものがいくつかありますね。水原氏が違法賭博に手を染めたとか、それに使われた金が大谷選手の口座から送金されたとか。 しかし、それ以外については、あまりはっきりしていません。そして、そのはっきりしない要因が何であるかによって枝分かれし、社会的な取り扱いが異なってきます。つまり、考えられる枝分かれの内で実際どの

          現象の枝

          “ニセ科学、法的に取り締まろうぜ” なる意見について

          ニセ科学とは、 科学のようで科学で無い 言説を指します。意味内容の検討に深く広い議論がありますがひとまず措いて、その概念そのものには、人を騙すとか、社会的経済的健康的害をもたらす、などの要件は入っていません。したがって、その概念を援用して ニセ科学を法的に取り締まろう と取れるような一般的表現をおこなうのは適切ではありません。 分野を問わず色々の実害を及ぼす言説を流布する事に法的な観点からのペナルティを課すのは検討されて良いし、詐欺その他の行為に対して既に実装されてい

          “ニセ科学、法的に取り締まろうぜ” なる意見について

          構造化参照による、リスト入力規則の動的変更

          ※初学者向きではありません Excelでテーブル化をおこなうと、テーブル領域はデータベース的構造となり、自動的に各部分が名前付き範囲として定義されます。 各表をテーブル化して、 tabeta_table neta_table という名前をつけました。いま、tabeta_tableのネタ列について、入力規則を使ってリスト入力する事を考えます。 基本的なやりかたは、リボンのデータからデータの入力規則を選んで、リストで各項目をカンマ区切りで設定するものです。 上の図が

          構造化参照による、リスト入力規則の動的変更

          スピルスピルと言うけれど

          確かに便利です。けれども。 バージョンにより対応していない テーブル内で使えない この2つの理由により、積極的に使用する事が憚られます。前者はしばらく経てば問題にならなくなります。しかるに後者については、スピルの利便性とテーブルの合理性とを天秤にかける訳ですが、圧倒的にテーブルの合理性でしょう。構造化参照はそれほど重要であると、私は思います。 大袈裟で無く、Excelで表を作成する場合は、よほどの例外的な時で無ければ、テーブル化(ListObjectオブジェクト化)す

          スピルスピルと言うけれど

          XLOOKUP関数のしくみ

          これまでの話データを見つけ出す2つの方法 前回と前々回では、ある範囲から見つけたいデータを探し出す2通りの方法を紹介しました。 この2つのやりかたの概要は次の通りです。※寿司の価格、ここではサーモン皿について調べたいとします VLOOKUP関数 ネタの集まりとそれに対応する価格を含んだ範囲について 左端の縦並びからサーモンを探し 見つかったら、その真横にある何番目かのものを取り出す INDEX関数とMATCHの組み合わせ ネタの集まりとそれに対応する価格を含

          XLOOKUP関数のしくみ

          INDEX関数とMATCH関数の組み合わせによるデータ取得のしくみ

          はじめに前回の記事では、データを縦に探して行って、見つかったら真横にあるデータを返すVLOOKUP関数のしくみを説明しました。 そこで説明したように、VLOOKUP関数には、探す範囲の縦並びが左端に無ければならない、などの弱点があります。そういう事情から、VLOOKUP関数を説明する流れで、もっと便利なやりかたとして、 INDEX関数 MATCH関数 この関数を組み合わせたものに言及される場合があります。本記事では、そのしくみについて説明をおこないます。 注意事項今

          INDEX関数とMATCH関数の組み合わせによるデータ取得のしくみ

          リスクの認識と行動

          他のものにもリスクがあるではないか、と単純に考える話ではありません。問題は、 それを摂るのと摂らないのとでどのくらいリスクが変わるか そのリスクを認識しているか これです。他のものにも病気を発生させるリスク(確率)があるのはその通りですが、いま考えている物、ここでは酒を、それを摂らない(曝露しない)場合と摂る(曝露される)場合とでどのくらいの大きさで変化するか、を検討して、他の物と比較する必要があります。そして、それを把握した上で、そのくらいのリスク上昇なら受け入れる/

          リスクの認識と行動

          VLOOKUP関数のしくみ

          はじめに VLOOKUP関数の習得は、Excelの習熟をはかる一つの目安として語られる事があるように思いますが、それはおそらく、そのしくみがそこそこ複雑なのと、実務で多用される可能性があるから、なのでしょう。 何番煎じか判りませんが、この記事では、VLOOKUP関数のしくみについて解説します。単に関数の構造を見るだけで無く、そもそもどういう事をしようとしているか、から説明しますので、ちょっと長たらしいですが、ご了承ください。 注意事項 この記事では、Google Sh

          VLOOKUP関数のしくみ

          ListObjectオブジェクトの罠

          何だと思いますか? それは……。 DataBodyRangeをDeleteしたら、DataBodyRangeがNothingになる ここです。これをよく解っていないと、テーブルのデータをクリアしたり、クリアされた所に新しくデータを入れる、というシナリオの時に引っかかりますね。消したものはもう消せないし、無い所に入れ込む事も出来ませんからね

          ListObjectオブジェクトの罠

          LOOKUPとINDEXMATCHと

          先日にちょっと話題になっていたトピック。 このアカウントの素性や、情弱なんて言葉を使って煽っているのは措いといて。 実際、VLOOKUP関数を使うか、XLOOKUP関数を使うか、あるいはINDEX関数とMATCH関数を併せて使うかは、要件によるとしか言いようがありません。 改めて説明するまでも無く、VLOOKUPとXLOOKUPとでは、圧倒的に後者が便利です。VLOOKUPだと融通が効かない部分がXLOOKUPで解消されていて、より簡潔に書けるので、使えれば使ったほうが良

          LOOKUPとINDEXMATCHと