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Sufjan Stevens の『Illinoise』を聴いてみた編

こんばんは、内山結愛です。

Pitchforkの年間一位を取ったアルバム縛り編!

今回は Sufjan Stevens の『Illinoise』(←2005年一位)を聴いてみた編をお届けします。

様々な楽器を取り入れ、そのほぼ全てを自分で演奏し作り上げる繊細で緻密なサウンド、甘く温かな歌声。

イリノイ州をテーマに、歴史や文化、好奇心を絡ませて、まとめあげた一枚。

ぜひ、読んでみて聴いてみてください!

1.Concerning the Ufo Sighting Near Highland, Illinois

流麗なピアノで始まる。フルートの音も涼しげ。0:35〜歌声が素晴らしい。こんな良い声でイリノイ州ハイランド近郊でのUFO目撃事件について歌っているのジワジワ来る。ささやかな華やかさがあるコーラス、絶妙な存在感。イリノイについての社会見学(?)が始まる…!

2.The Black Hawk War, or, How to Demolish An Entire Civilization and Still Feel Good About Yourself in the Morning, or, We Apologize for the Inconvenience But You're Gonna Have to Leave Now, or, 'I Have Fought the Big Knives and Will Continue to Fight

繋がって始まった。タイトルだけで200文字近くある曲、今まであったかな。0:30〜神々しい重厚なコーラスに聞いたことない楽器の音が混ざり合っていく。鳴っている楽器のほとんどをSufjan Stevens自身が演奏してるの、化け物すぎる。お上品なマーチング。

3.Come on! Feel the Illinoise!: Part I: The World's Columbian Exposition/Part II: Carl Sandburg Visits Me in a Dream

次の曲への繋がり方がとても自然で毎回気持ちが良い。「リトル・マーメイド」(複雑リズムver.)なイントロ。5拍子らしい。それにしても美声。とても瑞々しい。水分量が多い声。めっちゃ好きだ…!2:30〜展開にメリハリがあって楽しい。3:00〜ドラムとピアノがとても生き生きしている。4:00〜優雅で陽気。ストリングスが美しい。素晴らしい歌声のお陰で歌詞がスッと耳に入ってくるのに、歌詞を理解するのは難しい。

4.John Wayne Gacy, JR

突然憂いに包まれる。憂鬱な空気感。タイトルになっているのはシリアルキラーなんだ。まさかと思って調べたらイリノイ州出身だった。それはそうか…。コンセプトが徹底されている。ギターのアルペジオと、ピアノの悲しげな旋律によって甘い歌声がより沁みる。悲しげなコーラスも相まって、グッとしんみりする。歌詞も暗く、怖く、重たい。

5.Jacksonville

クラシックコンサートの音合わせみたいなイントロ。ギターのアルペジオのメロディがミステリアスな感じで好き。祝福ムードと不穏さが入り混じっていて、不思議なテンション。ジャクソンビルのことを調べたら良い感じのビルが沢山建っている綺麗な都市が出てきた。まんまとイリノイ州のことに詳しくなってしまう。

6.A Short Reprise for Mary Todd, Who Went Insane, But for Very Good Reasons

繋がって始まったと思ったら1分も無いインスト。時空が引き伸ばされているようなストリングスの音。

7.Decatur, or, Round of Applause for Your Stepmother!

カントリーな雰囲気。ロバとか、カウボーイが見える。牧歌的。歌声が優しくて、心地よい甘さで、ずっとメロメロ。冒頭の「1、2、3、4」というカウントすら素晴らしかった。心当たり無いのに懐かしい。

8.One Last 'Whoo-Hoo!' for the Pullman

めっちゃ拍手される。…拍手だけの曲…!?!たしかに「Whoo-Hoo!」と叫んでいる人は居る。面白い…

9.Chicago

ストリングスから始まって、ドラムが入って軽快に進んでいくところ、幕開け感があって爽快。前に前に進んでいる感覚がある。ワイワイ軽快なパートと甘い歌声を静かめに聞かせるパートとの切り替えが好き。3:47〜歌っている人数がいつの間にかめっちゃ増えてた。華やか。5:13〜終盤、天国。天界の音楽になる。音に後光が差している。

10.Casimir Pulaski Day

歌声が素敵すぎて…もうどうしたら良いんだ。ギターと歌声だけの贅沢な時間。この曲も牧歌的。軽快なメロディ。歌詞、ロマンチック…なのか?事細かに、日記のように、起こった出来事が歌われている。空気量の多さも大変素晴らしい歌声。どんどん好きになっていく。緩やかに、弱火から中火くらいな感じで盛り上がっていくアウトロ、心地良い。

11.To the Workers of the Rock River Valley Region, I Have An Idea Concerning Your Predicament

メロディアス。タイトルはどういうことなの。全曲長い。四つ以上は楽器の音が聞こえている気がするけど、全部自分で演奏してるんだもんな…多才!

12.The Man of Metropolis Steals Our Hearts

ギターがめっちゃノイジー!格好良い!こんな曲も演奏できるんだ…!と思った次の瞬間にいつものようなアコースティックな雰囲気へ。サビ?はポップで明るい。2:00〜ギターノイジーパート、活力がみなぎってくる。甘い歌声とノイジーギターの組み合わせがやっぱり好き。わりとお利口さんだったギターが終盤一瞬暴れかけるのが素敵。最後の最後は多分妖精たちが歌ってる。

13.Prairie Fire That Wanders About

哀愁ミステリアス…だったのに、めちゃくちゃ怪しげな民族チックな世界観に。凄くいろんな楽器が使われている。タイトルの直訳が「彷徨う大草原の火」だけど、まさに…そんな感じ。

14.A Conjunction of Drones Simulating the Way in Which Sufjan Stevens Has An Existential Crisis in the Great Godfrey Maze

またまた長いタイトル。タイトルに答え全部書いちゃいがち。言いたいこと、伝えたいことが沢山あるんだろうな。シンバル、ハイハットのシャーーーーーーーって音。20秒くらいで終わってしまう。

15.The Predatory Wasp of the Palisades Is Out to Get Us!

清らかな湧水が出ていそうだし、蝶も飛んでいそう。呼吸がしやすそうな澄んだ空気が音に詰まっている。歌声も優しい。好き。1:30〜急にフィナーレ来そうになって焦った。展開における力加減が読めなくて面白い。2:37〜またフィナーレ的なパートが来た。壮大でダイナミックで生命力が溢れている。全楽器が生き物として輝いている。4:40〜歌声が楽器としても機能している領域に入っていた。最後の重低音気になる。

16.They Are Night Zombies!! They Are Neighbors!! They Have Come Back from the Dead!! Ahhhh!

急に悲しみのドン底な空気感が漂っている。「奴らはナイトゾンビだ!!彼らは隣人です!! 彼らは死から蘇ってきた!」ってタイトルがもう凄い。確かにマズイ事態が起こっているけどAhhhh!がツボすぎる。2:00〜悲しげな、切なげなメロディを歌う声、一番クるものがある。2:30〜迫り来るコーラスに焦る。I-L-L-I-N-O-I-S…?と思ったらイリノイだった。どこまでもコンセプトに忠実。

17.Let's Hear That String Part Again, Because I Don't Think They Heard It All the Way Out in Bushnell

いつの間にか悲しげなストリングスゾーンに切り替わっていた。切ない。ゾンビはどうなったのだろう…

18.In This Temple As in the Hearts of Man for Whom He Saved the Earth

お化けが出てきそうな靄のかかったような、そんなサウンドゾーンへ。幻想的。

19.The Seer's Tower

暗く、重たいピアノの音に繋がって始まった。ピアノの音が思い詰めている。歌声の甘さが際立つ。1:11〜狼が悲しく吠えているようなコーラス。ダークサイドに堕ちた甘い歌声、ヤバい。とても良い。ピアノの音が鬱々としているけど、とても美しい。3:02〜ここの歌のメロディ好き。終盤の、誰もが寝静まった夜みたいな雰囲気、とても綺麗。

20.The Tallest Man, the Broadest Shoulders: Part I: The Great Frontier/Part II: Come to Me Only with Playthings Now

朝が来た。全てがハッピーで良くなった。音という音たちが祝福している。1:16〜声…もう何、声が本当に良い。恋。跳ね感が愉快でウキウキしちゃう。3:33〜ナイスなドラム。5:04〜ストリングスが入ってきて、しっとり落ち着いた雰囲気になる。壮大。6:40〜繊細で神秘的なピアノの美しいメロディ。

21.Riffs and Variations on a Single Note for Jelly Roll, Earl Hines, Louis Armstrong, Baby Dodds, and the King of Swing, to Name a Few

ピアノから繋がって、悲しげなアルトサックス音。ずっと寂しげに、頼りなさげに鳴っている。鳴っているというか漏れちゃってる感じ。

22.Out of Egypt, Into the Great Laugh of Mankind, and I Shake the Dirt from My Sandals As I Run

一定のリズムで刻まれているピアノとストリングスの音が迫り来る。タイトル、何が起ころうとしているのか全く分からないけど面白い。混沌を極めるピアノの音。3:00〜音はずっと可愛らしいのに高まっていく緊張感。グロッケンの音で幕を閉じる。

アートワークはディヴィア・スリニヴァサン

Sufjan Stevens(1975年7月1日 - )は1999年から活動しているアメリカ出身のシンガーソングライター。アメリカ50州のそれぞれのためにアルバムを作るというプロジェクトを発表して話題になったが、本作はそのプロジェクトの2005年にリリースされた二作目。イリノイ州の歴史や文化、芸術、そして地理を探るようなコンセプトアルバムで、歴史資料を分析したのちに制作されたという。


アルバムごとで1つの州をテーマにするという「アメリカ50州プロジェクト」

「アメリカ50州」ってことは、アメリカにある50の州を題材にこの先50枚ものアルバムを作るということ…!?!?!

これ作る側にとっても生きる意味や生きる楽しみになるだろうし、その完成を待つファンの方も楽しいだろうな…

とても狂ったプロジェクトだとは思うけど!

今回のアルバムを聴くまで、「イリノイ」という州があることすら気にしたことがなかったけど、アルバムを聴き終わることには「イリノイ」についてちょっと詳しくなっちゃってるのが面白い。

歌詞もイリノイの歴史的・文化的事象(たまに妄想も)をなぞっていて楽しかった!

なんてったって、タイトルが長い!!!!あんな長いタイトル今までレビューしたことあったかな…?

あと、本当に歌声が好きでした。本当……好き…

↓そんなSufjan Stevens自身で演奏されたと思われる楽器一覧

アコースティックギター、エレキギター、バンジョー、フルート、アコーディオン、リコーダー、オーボエ、アルトサックス、ピアノ、オルガン、ウーリッツァーオルガン、ビブラフォン、グロッケンシュピール、ベース、ドラム、シェーカー、タンバリン、トライアングル、スレイベル

ドン引きレベルです。音楽の神に愛されている。

繊細に緻密に作り出されまポップなフォークサウンドがとても声に合っていて、聴き心地が本当に良かったな〜


さて、次回もPitchforkの年間一位を取ったアルバム縛り編!

HIPHOPに踏み込んで行くので、 「文化系のためのヒップホップ入門」という本を読み、 HIPHOPの基礎を勉強してから挑みます!本はとても読みやすく面白い!

次回は Kendrick Lamar の『To Pimp a Butterfly』を聴いてみた編をお届けする予定です。

最後まで読んでくださり、有難うございました。


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