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Sophie の『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』を聴いてみた編

こんばんは、内山結愛です。

hyperpopシリーズ!

今回は Sophie の『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』を聴いてみた編をお届けします。

立体的で躍動感のあるカラフルなサウンド、巧みに操る凶暴なビート、性や多様性をテーマにした歌詞。

自分らしさを全開にした、破壊的でポップな一枚。

ぜひ、読んでみて聴いてみてください!

1.It's Okay to Cry

一音目から吸い込まれる。シンセの音が神秘的で少し悲しげ。Sophieの温かで寄り添うような吐息混じりの歌声。ピアノの音も沁みる。0:50〜サビに入る時の音の重み好き。1:50〜かなり遠くの方で破壊的な音が鳴っている。2:30〜「There’s a world inside you〜」からの歌詞が本当に素敵。自分の本当の気持ち、パーソナルで大切なことを伝える人へ勇気や愛をくれるような歌詞。3:34〜これまでは優しくそっと「泣いても大丈夫」と何度も繰り返し伝えてくれていたけど、今度は力強くエネルギーを大放出しながら伝えてくれる。調べたら、歌詞とMVはSophie自身がトランスジェンダーだと公にカミングアウトしたものだそう。

↓ Sophie…美しい…泣

2.Ponyboy

「Ponyboy」って言った後からバッキバキボコボコのビート、電子音で殴られ続ける。「Ponyboy」としかほぼ言ってないけどこんなにも格好良い。声のエフェクトも3種類くらい使い分けている。攻撃力高い。1:33〜好きな展開。ひたすら危険そうな電子音とセクシーな歌声がPonyboyしている。暴力的だけどポップ。

↓アクロバティックでキュートなMV

3.Faceshopping

次の曲からの繋ぎが気持ち良すぎる。インダストリアル…!?金属をバキバキに砕いて、砕いたかと思えば肉感的な躍動感を持たせて自由自在に操っている。なんだか「この世界は全てSophie様のものです。」と言いたくなるくらいの支配力。ずっとヒヤヒヤする。身の危険を感じるような音の凶暴具合。この凶暴な音はサンプリングとかではなく、Sophieが手動で作っていると知ってたまげた。2:20〜唐突にドラマチックで煌びやかな世界に移ったから違う曲になったかと思った。3:10〜凶暴性を増して帰ってくる。この曲もジェンダーや美、身体をテーマにしている。

↓凄く「顔」なMV、良い。

4.Is It Cold in the Water?

トンネルの中に入ったみたいな薄暗いシンセサウンド。だんだんと広がりを感じてくる。人が信仰したくなるような音を作る天才。キリキリするようなシンセの音。歌声が神々しい。裏声が色気のある天使。3:12〜無重力。混沌としていて眩しい。

5.Infatuation

ずっと!繋ぎが!気持ち良い!歌声をオートチューンとかを使って変えているような、奇妙なエフェクトの使い手。1:51〜時空の歪み。音の波に巻き込まれて、吸い込まれて、全てが一つになってしまうような感覚。音、どの曲もめちゃくちゃ立体的で迫力がある。不協和音的な怖い音が鳴っているのに、煌びやかで美しくて、逞しくて、ピンク色。不穏な終わり方。

6.Not Okay

いつの間にかこの曲に繋がっている。「渋谷の109のギャル服売り場とかで流れていてもおかしくないな」とか思っていたらそんな考えをぶちのめされる0:25〜のブリブリ音。ブリブリ音とイケイケギャルサウンドが交互に来る構成、脳がバグる。1:39〜「ブプギィイイ」みたいな強烈なブリブリ音で突然終わっていく。

7.Pretending

ドローン…?突然灰色のもやに包まれたような感じ。本当に音の鮮明度、解像度、リアル(?)。4Dみたい。匂いしてきそうだし、触れられそう。1:25〜意識飛びそうになってくる。人の声にも聞こえてくる。2:35〜このもやを抜けそう…!ノイジーな天国が広がっていく。光に包まれて失明しそう。目を閉じて聞くと本当に危ない。この音楽、本当触れる。4:14〜ヤバそうな赤子の泣き声みたいな声が突如聞こえてくる。もう天国ではない。不安定な空をスカイダイビングしているみたい。5:00〜死を感じる。5:35〜空の上にバイク。ブッ壊れたバイクのエンジン音みたい。

8.Immaterial

「私は私が望む何にだってなれる」と声高らかに宣言しているのが格好良い。応援歌。この曲に色んな人が救われているだろうな。0:30〜めちゃくちゃ好き。ビートを操る神ことSophie。ビビットピンクが似合う曲。どの曲もいつだって音の彩度が高くてカラフルで楽しい。

9.Whole New World/Pretend World

繋ぎが…もう…。思う存分音で殴ってくださいと懇願してしまう。強烈なテクノサウンド。ビリッビリで電圧高い。何の音なのかもはやわからない。狂気じみてる展開に笑ってしまう。ブリブリ音の加工前の音を知りたい。1:57〜近未来のチアガール。一緒に「Whole New World」って言いたい。ひたすらたくましい。爆音で聴けば聴くほど高まって大変なことになる。3:26〜危険を知らせるサイレンが鳴り響いて、凶暴なインダストリアルチックな音がサイレンをもブッ潰す。「ブッ潰す」とか「ブッ壊す」とか、動詞に「ブッ」を付けないと言い表せない音が鳴り続いている。5:24〜セクシーな拷問が始まっている気がする。この曲10分近くある…!6:00〜風というか巨大な空気が通り抜けたり、停滞したりしながらノイジーにその場に渦巻いている感じ(聞いたことない音すぎて立ち尽くしそうなのを必死で堪えて言語化している)。7:26〜人間界で起こって良い音じゃない。神の領域。神の所業。

中身もゴージャスで美…!!!!
レコード自体も真っ赤で可愛かった…


Sophie(1986年9月17日-2021年1月30日)は、スコットランド出身のアーティスト。2010年代のhyperpopやBubblegum Bassの第一人者としてその地位を確立したと言われている。本作は2018年にリリースされた唯一のアルバム。

●Bubblegum Bass :カラフルなふうせんガムのようなダンスミュージックのこと。キャッチーなメロディやピッチアップされたボーカル、 近未来的なシンセサイザー、 跳ね感のあるビート、 アートワークがグリッチーであることなどが特徴。 いわゆるインターネットミュージックの要素をポップに取り入れて誕生したジャンル。

●hyperpop:Spotifyが2019年に公開した公式プレイリストの名称から広く知られることになった音楽ムーブメント。 このジャンルに括られる音楽は、エレクトロニックやHIPHOP、ダンスミュージックなどのサウンドで、ポップでありながら前衛的な要素を持っていることが多い。このムーブメントはLGBTQ+と関わりがある。


hyperpopは好きだけど全く深く知らない音楽ジャンルだったので、今回をきっかけに、ユリイカのhyperpop特集を読んで勉強しました!

hyperpopという括りはLGBTQ+とも深い関わりがあるし、アーティストの側が自分の音楽を「hyperpop」と呼ばれたくないと思っていることもあったりして、繊細に扱いたい音楽だと思っていたのですが、本作は純粋に気持ち良くて格好良くて、カラフルで凶暴なサウンドに打ちのめされたな…

ユリイカのhyperpopについて語り合っているインタビュー内で、「今までのインターネットミュージックの積み重ねを再編集して提示しなおした音楽だと思う」、「音楽のルーツ自体はバラバラにあって、このブームはむしろファンによる受容環境が整ったから起きたんじゃないか」、「いろんな要素が詰まったおもちゃ箱のような状態になっていて、だから明確にこれがルーツだと挙げにくいんじゃないか」という旨を話していて、こういう面がhyperpopに括ることの難しさ、hyperpopの面白さだと思いました。

hyperpopの大きな源流の一つだという「PC Music」というレーベルも掘ってみたい!

PC Musicに所属するアーティストの多くがLGBTQ+だったり、これまで共感できるコミュニティを見つけづらかった若者たちにとって、hyperpopがコミュニティの結びつきという面でも重要な機能を担っているそうです。

そして、Sophie…!
2021 年に亡くなってしまったなんて、ビックリです。

その時期くらいにたまたま一日一アルバムで取り上げていました。何も知らずに聴いてた…泣


アートワークや歌詞もとても好き!

これまでは匿名的で記号的なイメージを保ってきたというSophieが、本作で自身のパーソナルな部分を解放するに至った経緯が気になります。

無機質なはずなのに強烈に寄り添う音楽だったな…もっとこの先もSophieの生み出す音楽を聴いてみたかった…!

あと!!レコードでhyperpopなサウンド聴くの新鮮、初体験すぎて、めちゃくちゃテンション上がりました。

凶暴なビートをリビングに響かせてやりました…

ジャケットも好きなので部屋にデカデカと飾ろうと思います。

なんか凄い語りすぎてしまったけど、耳がとにかく気持ち良かったです!!!!

次回もhyperpopシリーズ!

次回は A. G. Cook の『Apple』を聴いてみた編をお届けする予定です。お楽しみに!

最後まで読んでくださり、有難うございました。


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