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ミールスについて少しまじめに考える3-3

前回の投稿の続きです。私がインド現地で学んだミールスの食べ方を文献から考えていきます。

『Indian Food: A Historical Companion. 』Achaya, K T. 1994. Indian Food: A Historical Companion. Oxford University press.

この本は、インドの歴史家であるK T. Achayaがまとめたインド料理の概説書です。10章の「regional cuisines」は、地域料理に関する章で地域や民族のさまざまな料理が紹介されています。その中のカルナータカ料理の項目では、「order of meal(食事の順番)」と称して食作法が取り上げられています。聞きなれない料理の名前がでてきて読みにくいですが、長めに引用します。

食事の順番

インドのほとんどの地域では、ヴェーダで定められた6つの味覚が、現在でも多少なりとも食事中に守られているが、実際に提供されるあるいは食べる順番は地域によって異なる。大まかに言えば、アーンドラ・プラデシュ州、カルナータカ州、タミル・ナードゥ州、ケーララ州では、(・・・)バナナの葉の上に食べ物を並べる順番は共通している。
カルナータカ州では、ライスが出された後、口に入れた少々のライスを、kosam-ri[1]、野菜(palya、火を入れ調理したもの)と一緒に味わう。
次にtovve(ほとんど味付けされていない黄色いdhal)と(ライスを?訳者加筆)混ぜて味わう。
そして、ギーが注がれたライスを、huli(タミル・ナードゥではsambhar、アンドラ・プラデーシュではpappu pulusu)、その他の野菜料理(gojju,kootu,morkozhambu,kura)と一緒に食べる。
次はライスにspicy thin dhal extract(saaru, rasam, chaaru, pulusu)をかけて食べるのが一般的である。
カルナータカ州のchitran na(lime rice)やタミルのbisibele-huli-anna(bisibele-huli-anna、タミルでsambhar-sadham)などは、あらかじめスパイスを加えたライスの料理である。ライスとこれらhuliが代わることもある。
次にpayasam、kesaribath(小麦や米に味をつけた甘いもの)、Mysore-pak やjilebiといった固形のお菓子が登場する。他方で塩味のスナックのvada、bonda、idliなどもつまみ食いされる。
最後におなかを癒すために、ライスとカードまたはbuttermilk 、あるいは事前に混ぜたpreparanon(mosaru-anni, thayir-sadham)が提供されることもある(Achaya1994:122;Achaya2009:158)。


前回の本では、チェンナイの純菜食料理大衆食堂のミールスの食べ方を紹介しましたが、今回の本ではカルーナタカ料理を中心にしながらも、南インド5州の食事が共通性のあるものとしてとりあげられています。

不明な点もありますが、整理すると食事の順序は以下のようになります。
1ライスと野菜料理
2ライスとダル
3ギーをかけたライスとサンバルなど
4ライスとラッサム
5甘い料理
6カードライス類
・ライス料理(ライムライスなど)は5の前、塩味のスナックは6の前でしょうか。

食べ方をみると、数回にわたってライスと料理を食べ合わせる点は前回の本と共通しています。一方で、この食事がミールスとは断言されていない点は注意が必要と思いますが、ダル、サンバル、ラッサムなどの料理があることから今までみてきたミールスに近い食事といえるのではないでしょうか。

次回は、インドの食事作法に関する記述をとりあげていきます。
読んでいただきありがとうございました。

脚注

[1」]kosamrisとは、チャナやムングを塩水に浸し柔らかくふくらんだものを塩、マスタードシード、コリアンダーで飾り付けた料理(Achaya2009:136)。現在のコサンバリか。

参考文献

Achaya, K T. 1994. Indian Food: A Historical Companion. Oxford University press.
Achaya, K T. 2009. The illustrated foods of India, A-Z. Oxford University press.

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